2022年度 飛躍する農工大~本学の機能強化を推進する取組~

獣医療の国内最大級・世界的な拠点を目指して ―小金井動物救急医療センターの新設―

 多様化・高度化する獣医療に対応するべく、小金井キャンパス(工学部)の既存施設を改修して、本学2つ目の動物医療センターとなる「小金井動物救急医療センター」を新設します(令和4(2022)年秋頃開院予定)。
 小金井動物救急医療センターでは「総合診療」「土日祝日・夜間の診療」「放射線治療(令和5(2023)年夏頃開設予定※2)」をそれぞれ実施し、既存の動物医療センターは、これまでどおり「専門診療」を実施(令和4(2022)年秋頃から午後診療を開始予定※3)します。
 両センターがそれぞれ役割を担い、相互・連携を行うことで、これまで以上に高度な獣医療が提供可能となります。
 獣医療の国内最大級・世界的な拠点を目指して、地域の獣医療の更なるバックアップや人材育成、獣医工連携を含む農工融合をベースとした産学連携活動等に取り組んでいきます。

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グローバルイノベーション研究院

中期計画(1)(2)(9)(18)

 「世界と競える先端研究力の強化」に向けた取組の柱として、平成28(2016)年4 月にグローバルイノベーション研究院(GIR)を設置しました。
 GIR は、先端研究の推進及び人事制度改革の推進を目的とした研究特区です。“世界が直面する食料・エネルギーの課題の解決”をテーマとして掲げ、「食料」「エネルギー」「ライフサイエンス」の3 つの研究重点分野に戦略的研究チームを設置しています。また、国際共同研究拠点Global Research Hub(GRH)として、戦略的研究チームを発展させた研究ユニットを配置して、海外外部資金獲得、国際的な人的交流の発展、より質の高い研究成果の発信等といったミッションを達成すべく活動しています。
 戦略的研究チーム及びGRHでは、海外大学の世界第一線で活躍する著名な外国人教授と本学研究者が連携して社会的要請の高い先進的な研究を推進し、世界的にインパクトの高い研究成果を持続的に創出できるよう、学内の既存組織の垣
根を超えたオープンで競争的な研究環境を実現、国内外の先端研究機関との連携を強化しています。
 さらに、クロスアポイントメント、プレテニュアトラック、テニュアトラック、キャリアチャレンジ制度等をはじめとする柔軟な人事制度の導入や若手研究者海外派遣制度の実施など、若手研究者が先端研究にチャレンジし、活躍できる機会を積極的に創出し、優秀な研究者をサポートする環境を整備しています。これらの取組により、世界と競える先進的な研究を推進し、新たな未来を切り拓くイノベーションの創出を目指します。

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西東京三大学共同サステイナビリティ国際社会実装研究センター

中期計画(2)(19)

 令和4(2022)年4月に、東京農工大学、電気通信大学及び東京外国語大学における共同専攻の教育実績を基盤として、西東京三大学共同サステイナビリティ国際社会実装研究センターを設置しました。三大学で構築した国際ネットワークを通じて、特にグローバルサウス(現代の資本主義のグローバル化により負の影響を受ける世界の場所や人々)を活動地域に、現地の大学・地域における最新の研究・社会実装ニーズの掘り起こし、研究活動とこれらの研究成果を活かした社会実装活動にまで三大学連携を拡大・充実させることを目的としています。
 東京外国語大学は、主に、多言語・多文化の共生を軸とした包摂社会実現への課題解決方法の探究とその効果的社会実装の研究を担当します。電気通信大学は、主に、技術的イノベーションの製品開発・産業応用からのアプローチを担当します。本学は、多様なステークホルダーとの協働による政策提言や情報発信を通じた持続可能性の概念の可視化と国際社会への普及を担当します。三大学が連携することにより、経済至上主義に基づくグローバル経済がもたらしている社会問題を解決するソリューションの開発と社会実装を実現します。
 キャンパスが近接する三大学が文理を越えてサステイナビリティ・多文化共生や社会実装といった重要課題を軸に連携を拡大・深化させていくことは、今後の我が国の大学における連携の在り方の一つのモデルを示すものです。国立大学によって持続的に「総合知」を生み出す本センターのインパクトは、ますます大きくなるものと見込まれています。

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イノベーションパーク構想 ディープテック産業開発機構

中期計画(16)

 本学では、既存の研究センター群を融合・連結させた学長直轄のオープンイノベーション拠点「フロンティア研究環」及び大学発ベンチャー創出のパイロット事業「イノベーションガレージ」を融合して、新たに「ディープテック産業開発機構」(以下、機構)を新設しました。
 機構では、「科学技術・イノベーション基本計画」(令和3 年3 月26日閣議決定)が掲げる「価値共創型新産業創出の基盤となるイノベーション・エコシステム」の実現を目指します。
 具体的には、企業や公的研究機関との共創・連携によるオープンイノベーション拠点群の拡充、「組織」対「組織」の大型共同研究を中核とした産学連携促進、有望な起業家の発掘・育成によるスタートアップ創出、将来の市場を予測したバックキャスト型の事業計画策定・推進に取り組みます。
 そして、これらの取り組みの有機的な連携により、本学発シーズの社会実装や新産業創出をさらに加速させ、多様な組織が価値を共創する新たな産業基盤構築に向けて、大学の立場から貢献します。

共創の場 形成支援プログラム(COI-NEXT 共創分野(育成型))炭素循環型社会実現のためのバイオエコノミーイノベーション共創拠点

中期計画(1)(19)

 科学技術振興機構「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)共創分野・育成型」に、令和3(2021)年度、本学を代表機関として、参画機関(大学・企業等)と共同提案を行い、採択されました。
 人類は、生活に必要な食料・エネルギー・材料のほとんどを、植物が光合成によって固定化した炭素に依存しています。また、農業を発明することで狩猟社会から耕作社会への変革に成功、大量の食料を獲得することに成功しました。しかし、エネルギーや材料は、未だに過去の固定化された炭素(化石資源)に依存した狩猟型炭素社会であり、地球温暖化などの環境問題の原因となっています。エネルギー、材料も含めた炭素耕作による炭素循環型社会の実現を本拠点の目的としています。
 炭素耕作に基づく炭素循環型社会実現のためには、農業によるバイオマス生産、バイオマスのエネルギーや材料への効率的な変換技術、廃棄物の利用までを総合的に取り組んだバイオエコノミー研究開発が必要です。
 本拠点では、5つのターゲットを設定し、日本が得意とする稲、木材、海洋藻類を育て、水素や液体燃料、材料への効率的変換技術を開発、廃棄物を用いたバイオガスの生産やリンなどの回収を行うことで、バイオマスを完全に利用する技術を開発、自治体や企業との連携により、社会実装を実現します。

ターゲット
1. 持続可能なバイオマス耕作技術の確立
2. 炭素耕作による材料開発技術の確立
3. ゼロエミッションバイオマス燃料供給システムの確立
4. 持続可能な廃棄物フリーバイオエコノミーのためのリサイクル技術の確立
5. 炭素耕作を受容する社会の実現

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大学発新産業創出プログラム 大学・エコシステム推進型スタートアップ・エコシステム形成支援

中期計画(4)(5)

 科学技術振興機構「スタートアップ・エコシステム形成事業」の支援を受け、世界を変える大学発ベンチャーを育てる『Greater Tokyo Innovation Ecosystem(GTIE)』に、本学は共同機関として参画しています。GTIE は、東京都等が幹事自治体となり、東京大学・東京工業大学・早稲田大学を主幹機関、13 の共同機関、その他50を超える大学、自治体の協力による産学官のコミュニティ形成、活動拠点・場の共有、アントレプレナー人材育成のための教育基盤を有するプラットフォームです。GTIE は、本プラットフォーム上で、下記の4つの取組により国際競争力のあるスタートアップの創出や育成、Greater Tokyo の持続的な経済発展の実現、大学成果の社会実装の促進を令和7(2025)年度にかけて実施していきます。

① 起業活動支援プログラム運営
アカデミア起業育成のためのGAPファンドの運営、また独自のサーチファンドを運営し、V C 、民間企業等とのマッチングに加え創業チーム形成を支援します。

② アントレプレナーシップ教育プログラム
世界で戦えるアカデミア起業家創出に向け、実践的な起業家教育を提供し、アントレプレナーシップ人材育成を促進します。

③ 起業環境の整備
研究者や学生への起業環境を整備します。

④ 拠点都市のエコシステムの形成・発展
様々なイベントを通じ起業のためのコミュニティを形成し、海外VCとの相互乗り入れ等ネットワークの強化を図ります。

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出所:GTIEホームページ(https://gtie.jp)より抜粋

株式会社ジャパンインベストメントアドバイザーとの共同研究 早生樹資源の有効活用による「カーボンニュートラル社会と林業再生」実現へ

中期計画(1)(16)

 本学は「カーボンニュートラル社会と林業再生」実現を目指し、株式会社ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)との共同研究を令和3(2021)年11月に開始しました。「カーボンニュートラル社会と林業再生を実現する」という大きな目標を掲げ、農学、工学、様々な専門分野を有した20 名を超える本学教員が参画し、ラボレベルの研究のみならず、本学が所有する8か所のフィールドの一つであるFM唐沢山(栃木県佐野市)の演習林を拠点とした実証研究にも取り組みます。
 戦後に拡大造林されたスギやヒノキ人工林の主伐期を迎えた近年、伐採後の再造林が社会的な課題となっています。我々は、輸入に頼らない国産木質バイオマス燃料生産を可能にする林業・林産業システムの構築を通じて、国産木質バイオマス・エネルギーの安定供給を実現できる「脱炭素社会に貢献する新しい林業」の有り様を確立することを目指します。本研究では極めて成長速度が速い樹木である早生樹を利用します。早生樹の利用は、①高い木材生産性、②下刈り等の省力化による森林管理負担の軽減、③超短伐期栽培によるバイオマス・エネルギーへの高度有効利用などの観点から大きな優位性があり、従来の林業・林産業サイクル期間(植林―伐採―植林の一連のサイクルに要する期間)の大幅な短縮およびその省力化が可能です。
 さらに本研究では、早生樹から得られる高付加価値の有用成分の高度利用についても技術開発を行い、エネルギー生産と高付加価値物質生産を両輪とした高い経済性を有する森林資源循環利用プロセスの構築も目指しています。

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卓越大学院プログラム

中期計画(4)(5)(6)

 本学の卓越大学院プログラムは、「新産業創出」と「ダイバーシティ」を特色とし、民間企業や海外研究教育機関等との協力のもと、農学と工学を協創させ「超スマート社会」を牽引する卓越した博士人材を養成しています。シームレスな農工融合と、グローバルスタンダードであるダイバーシティ環境を確保しながら、イノベーション創出を担う高度博士人材を5年一貫で養成する、平成 30(2018)年採択の文部科学省事業です。本プログラムにおける教育研究の3本柱は、①「農工協創による新産業創出」への挑戦、②ダイバーシティ理解に基づく研究力や事業展開力の強化、③俯瞰力、独創性、国際競争力と高度専門性の獲得です。学生は、農学と工学の全分野から本プログラムに参加でき、ICTと自動化による食料生産、エネルギー、ロボット、人工知能、新材料開発、自動運転とモビリティ、バイオテクノロジー、スマート農林業、畜産・獣医学、感染症対策、環境など多岐にわたる領域を相互に理解し、知見や技術の交流から研究力を磨き、新発想・新展開の実現を目指しています。そのために有効となる、海外研修や留学、社会調査、企業との合同プロジェクト、人間力の指標となるコンピテンシー評価、成長を可視化するポートフォリオシステム、修了後の出口支援などが提供されています。こうした人材育成は、10の国内連携企業・機関との強固なネットワークに加え、世界トップレベルの 8 つの海外研究教育機関との連携に支えられ、産官学一体で未来を見据えて実施されています。

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高度イノベーション人材育成

中期計画(3)(9)(17)

 「未来価値創造研究教育特区」(略名:FLOuRISH)は、本学大学院博士課程に在籍する学生を対象として、理系イノベーションリーダーの育成を支援することを目的に、必要な資金をフェローシップとして支給し、研究に専念できる環境を整えるとともに、選択自由な教育プログラム等を提供する二つの制度を実施しています。

1. 未来価値創造研究教育特区型JIRITSU(自立)フェローシップ制度:自由な発想をもって主体的に研究課題等に取り組む期間を与え、必要な資金をフェローシップとして支給する制度。共同研究などの研究ミッションを明確にし、研究に邁進することが求められます。

2. FLOuRISH次世代研究者挑戦的研究プログラムフェローシップ制度:アントレプレナーシップによる俯瞰的視野との両輪により従来とは異なる新たな視点での尖端研究力を獲得し、社会貢献を実現する理系イノベーションリーダーを育成する制度。社会実装化などの各種教育プログラム受講が求められます。
注意: 一部教員負担金等もあるため、受入教員とよく相談しての応募が必要になります。
 教育プログラムとして、①イノベーションマインド醸成教育、②キャリア開発プログラム、③アントレプレナー実践教育を提供しています。
 さらに、学部学生・教職員を含む全学対象に、研究の社会実装化の奨励を目的としたアイデア・ビジネスコンテスト「アントレプレナーチャレンジ」を開催しており、優秀賞は仮説検証推進費用等が提供される他、共催・後援機関からも副賞が授与されます。

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2021年度アントレプレナーチャレンジ・ピッチコンテスト

ランキングでみる東京農工大学の実績[令和2(2020)事業年度]

順位 【民間企業との共同研究実施件数】
総数(件数)
【民間企業との共同研究実施件数】
教員一人当たりの件数
 【民間企業との共同研究費受入額】
総数(百万円)
 【民間企業との共同研究費受入額】
教員一人当たりの受入額
【特許権実施等件数】
教員一人当たりの件数
外部資金比率
1 東京大学 1,977 東京農工大学 東京大学 13,249 東京大学 東京大学 東京大学 25.3%
2 大阪大学 1,382 東京工業大学 大阪大学 9,014 大阪大学 東京工業大学 東京工業大学 24.7%
3 東北大学 1,306 東京大学 京都大学 5,935 東京工業大学 北海道大学 京都大学 22.7%
4 京都大学 1,300 大阪大学 東北大学 5,172 東京農工大学 大阪大学 大阪大学 20.8%
5 九州大学 716 東北大学 名古屋大学 3,984 京都大学 京都大学 東京農工大学 17.3%
6 東京工業大学 695 京都大学 東京工業大学 2,702 名古屋大学 名古屋大学 東北大学 16.8%
7 北海道大学 636 神戸大学 九州大学 2,119 東北大学 東京農工大学 北海道大学 12.3%
8 名古屋大学 619 金沢大学 北海道大学 2,005 九州大学 九州大学 九州大学 12.1%
9 神戸大学 586 九州大学 筑波大学 1,497 北海道大学 広島大学 神戸大学 9.9%
10 筑波大学 446 千葉大学 広島大学 1,277 神戸大学 金沢大学 筑波大学 9.2%
11 広島大学 444 北海道大学 神戸大学 1,245 筑波大学 千葉大学 広島大学 8.1%
12 千葉大学 362 名古屋大学 東京農工大学 729 広島大学 筑波大学 一橋大学 7.2%
13 東京農工大学 329 広島大学 千葉大学 713 金沢大学 東北大学 岡山大学 7%
14 岡山大学 316 筑波大学 金沢大学 611 千葉大学 神戸大学 金沢大学 6.6%
15 金沢大学 311 岡山大学 岡山大学 414 岡山大学 岡山大学 千葉大学 6.5%
16 一橋大学 10 一橋大学 一橋大学 36 一橋大学 一橋大学 名古屋大学(注)

※国立大学法人運営費交付金の重点支援(3)に属する16 大学を対象にランキング
出典: 文部科学省「令和2年度 大学等における産学連携等実施状況について」、文部科学省「国立大学法人等の令和2事業年度決算等について」、大学改革支援・学位授与機構「大学基本情報」をもとに作成

※外部資金比率とは、経常収益に対する共同研究、受託研究、寄附金などの外部から獲得した資金の比率 
(注)2020年4月の東海国立大学機構(名古屋大学・岐阜大学)発足に伴い、個別機関での外部資金比率の計上を行っていないため。

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