急性期の脳梗塞治療に朗報 抗炎症血栓溶解剤TMS-007(JX10)の安全性と有効性を確認
急性期の脳梗塞治療に朗報
抗炎症血栓溶解剤TMS-007(JX10)の
安全性と有効性を確認
発表のポイント
- 脳梗塞を発症すると50%以上の患者に後遺症が残り、寝たきりや要介護の主要な原因となります。
- 治療法としては、詰まった血管を薬剤やカテーテルで通す「再開通療法」が有効ですが、発症後の時間制限が厳しく、現状では10-20%程度の患者しか受けられません。
- TMS-007(JX10)(注1)という薬剤を投与する治験を実施した結果、脳梗塞後12時間以内にJX10を投与することで、優れた安全性と有効性が確認されました。今後の脳梗塞治療に革新をもたらすことが期待されます。
概要
超高齢社会を迎えた現在、脳梗塞患者数は増加の一途をたどっています。近年、詰まった血管を薬剤やカテーテルで通す再開通療法が普及し、劇的な改善が得られる可能性がありますが、脳や脳血管は傷害を受けるまでの時間が短く、また傷害を受けている状態で再開通療法を行うと危険性が高まるため、現状では再開通療法が行えない患者が多数存在します。こうした背景から、脳梗塞発症から一定の時間が経過した後でも詰まった血管を安全に再開通できる薬剤が切望されていました。
東北大学大学院医工学研究科 新妻邦泰教授、同大学院医学系研究科 冨永悌二教授(東北大学総長)、株式会社ティムス 西村直子博士、ティムス取締役会長 兼 東京農工大学大学院農学研究院 蓮見惠司教授(現農学府特任教授)らの研究グループは、最終未発症確認時刻から12時間以内で、かつ再開通療法を受けられなかった脳梗塞患者90名を対象に、新たな治療薬であるTMS-007(JX10)を投与する臨床試験を、株式会社ティムスを治験依頼者として東北大学病院を含む全国41施設で実施しました。
その結果、主要評価項目である投与後24時間以内の症候性頭蓋内出血の発生率は、TMS-007(JX10)群とプラセボ(偽薬)群で有意差がなく、また、90日目のmodified Rankin Scale(注2) スコアはTMS-007(JX10)群で改善が見られたことから、TMS-007(JX10)の安全性と有効性が示されました。
本研究成果は、2024年11月7日付けで国際学術誌Strokeに掲載されました。
詳細は、以下をご参照ください。
関連リンク(別ウィンドウで開きます)
- 蓮見惠司教授が所属する 東京農工大学農学部