ミツバチ悪玉腸内細菌の酵素は機能性オリゴ糖ケストースをほとんど分解できない~ケストースがミツバチの健康を維持増進するメカニズムの一端を解明~

ミツバチ悪玉腸内細菌の酵素は機能性オリゴ糖ケストースをほとんど分解できない
~ケストースがミツバチの健康を維持増進するメカニズムの一端を解明~

 国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院応用生命化学部門の殿塚隆史教授の研究チームは、物産フードサイエンス株式会社のチームとの共同研究により、ミツバチの悪玉腸内細菌として知られるFrischella perraraが生産するオリゴ糖分解酵素の構造と性質を解析し、このオリゴ糖分解酵素は機能性オリゴ糖として知られる1-ケストース(以下ケストース)をほとんど分解できないことを発見し、そのメカニズムを明らかにしました。花の乏しい時期にミツバチにケストースを与えると、ミツバチの健康を維持増進する効果があることが分かっていましたが、本研究結果によりケストースが悪玉腸内細菌のオリゴ糖分解酵素により分解されず、悪玉腸内細菌を増殖させないことがその要因であると示唆されました。

本研究成果は、2022年3月10日Applied Microbiology and Biotechnologyに掲載されました。
論文タイトル:Enzymatic and structural characterization of β-fructofuranosidase from the honeybee gut bacterium Frischella perrara
掲載URL:https://link.springer.com/article/10.1007/s00253-022-11863-9

  研究成果
 ケストースは機能性オリゴ糖として知られ、ヒトが摂取することにより腸内でのビフィズス菌の増殖を促し、整腸作用があることが知られています。このケストースは、ヒトのみならず、花の乏しい時期にミツバチに与えると、ミツバチの健康を維持増進する効果があることが分かっています。本研究では、ケストースがミツバチでの悪玉腸内細菌の増殖を抑えていると考え、代表的な悪玉腸内細菌として知られるFrischella perraraの生産するオリゴ糖分解酵素の、立体構造とその性質を解析しました。
 F. perraraのオリゴ糖分解酵素の立体構造は、おもしろいことにヒトの善玉腸内細菌であるビフィズス菌の一種Bifidobacterium longumのオリゴ糖分解酵素の立体構造と大変よく似ていることが分かりました。しかしながら、ビフィズス菌のオリゴ糖分解酵素はケストースを最もよく分解しますが、F. perraraのオリゴ糖分解酵素はケストース以外の糖と比較してケストースの分解活性は最も低いことが分かりました(図1)。さらに解析したところ、F. perraraのオリゴ糖分解酵素にはビフィズス菌酵素には見られない特徴的な構造があり、それが酵素の性質に重要なことを明らかにしました。
 ハチミツにはケストースが含まれており、また、F. perraraはミツバチの栄養状態が悪い時にミツバチ腸内で増殖することが報告されています。今回の研究のF. perraraのオリゴ糖分解酵素がケストースをほとんど分解できないという結果から、ミツバチ悪玉腸内細菌F. perraraはケストースでは増殖できず、ケストース以外の糖が腸内に増えたことをきっかけとして増殖するという可能性が示唆されました。

 

図1. 砂糖分解活性を100とした時のケストース分解活性の比較

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院農学研究院
応用生命化学部門 教授
殿塚 隆史(とのづか たかし)
TEL/FAX:042-367-5702
E-mail:tonozuka (ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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