CMOSイメージセンサを用いた可視光通信により512色エラーレス伝送の世界記録を達成

CMOSイメージセンサを用いた可視光通信により
512色エラーレス伝送の世界記録を達成

 国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院先端情報科学部門の中山悠准教授を中心とした研究グループは、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の支援により、カメラの撮像素子であるCMOSイメージセンサを受信機に用いる光カメラ通信(Optical Camera Communication;OCC)について、従来32色が最高だった変調多値数(用いる光色数)を512色へと増加させ、世界記録を達成しました。この成果により、今後、可視光通信によるサイネージ広告配信やドローン等の移動体制御、スマート農林水産業に向けた環境センシングなど適用領域の拡大が期待されます。

本研究成果は、米国カリフォルニア州サンディエゴにて開催されたOFC2023で2023年3月9日に発表されました。
論文名:First Demonstration of 512-Color Shift Keying Signal Demodulation Using Neural Equalization for Optical Camera Communication
URL:https://arxiv.org/abs/2301.01599

現状
 Optical Camera Communication(OCC)とは、送信機にLEDやディスプレイのような光源を、受信機にカメラを用いた可視光通信です。デジタルデータを3色LEDの色へと符号化・変調して光信号として送出し、カメラで撮影した動画像の中から光を抽出し、そのRGB値などから信号を復調・受信する仕組みです。使用する色数(変調多値数)を多くするほど高速な情報伝達が可能になる一方で、受信側での色の識別が困難になる、というトレードオフがあります。通常のカメラを受信機に使った場合、人間が見て綺麗な動画像にするための加工(画像処理)が行われるため、光色のズレが発生し、正確な色の認識が困難になるという課題がありました。

研究体制
 本研究は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社から貸与のセンサキットを使用して、東京農工大学で実施されました。また上記論文は、JSTさきがけJPMJPR2137および、JST START SBIRフェーズ1 JPMJST2260の支援を受け、大阪大学、東京理科大学と共同で執筆されました。

研究成果
 本研究チームは、CMOSイメージセンサのRAWデータを出力可能なカメラを用いて(図1)、取得したセンサデータをニューラルネットワークにより補正し、さらに誤り訂正符号を用いることで、512色での4mエラーレス伝送に成功しました。この結果により、実験的には32色による数十cm程度の伝送が最高だった従来の記録を大幅に更新し、世界記録を達成しました(図2)。

今後の展開
 本成果により、OCCのボトルネックだった通信速度の低さを大幅に向上させる可能性が拓けたと言えます。今後、サイネージからの発光に対してデジタルデータを重畳させた広告配信サービスや、ドローン等の移動体のカメラを用いたデバイス間通信などへの展開が見込まれます。また、非常に安価なLEDを送信機として用いる特長から、環境センシングへの活用によるスマート農業やカーボンクレジットの枠組みへの貢献が期待されます。

用語解説
注1)光カメラ通信(OCC)
送信機にLEDやディスプレイのような光源、受信機にカメラを用いた可視光通信。送信機として3色LEDを用い、データを光信号へと変調して送信するのが一般的な適用形態。
注2)CMOSイメージセンサ
フォトダイオードとアンプにより、電荷を電気信号に変換することで撮像する半導体素子。スマートフォンやデジタルカメラの撮像素子として広く利用されている。

図1:実験の様子
図2:本研究の位置付け

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学研究院
先端情報科学部門 准教授
 中山 悠(なかやま ゆう)
 TEL/FAX:042-388-7125
 E-mail:info(ここに@を入れてください)ynlb.org

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