2014年9月25日 国際宇宙ステーション「きぼう」での高品質タンパク質結晶生成実験に参加

~宇宙環境を利用した革新的な糖尿病検査システムの開発を目指して~
国際宇宙ステーション「きぼう」での高品質タンパク質結晶生成実験に参加

地上で得られた 蛋白質の結晶
微小重力環境では地上より良質な結晶が得られることが期待されます。
(香川大学吉田裕美博士提供)

国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門の早出広司(そうでこうじ)教授と臨床検査機器・試薬メーカーのアークレイ株式会社(京都市)は、独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)が行う国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟※1の微小重力環境を利用したタンパク質の高品質結晶生成実験(以下、「JAXA PCG(Protein Crystal Growth)」)※2に参加します。本実験により、バイオセンシング技術※3の開発に必須となる産業用酵素としてのタンパク質の構造を解明し、糖尿病の診断・治療等に役立つ革新的な検査システムへの応用を目指します宇宙環境を利用した糖尿病検査システムの開発は世界ではじめての試みです

現状:国立大学法人東京農工大学大学院 工学研究院 生命機能科学部門早出広司教授とアークレイ株式会社の研究グループは、バイオセンシング技術の開発に必須となるタンパク質の応用研究を行ってきました。このたび研究グループで開発したタンパク質が、「JAXA PCG」第2期実験シリーズ第2回実験に搭載する産業用酵素タンパク質の一つとして選定されました。9月26日に打ち上げを予定しているソユーズ宇宙船に搭載されます。

研究体制:本研究は、東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門早出広司教授の研究グループ、本学客員准教授・国立大学法人香川大学医学部総合生命科学研究センター分子構造解析研究部門吉田裕美博士、アークレイ株式会社、ならびにJAXAによって行われ、これまでバイオセンシング技術の開発に必須となるタンパク質の高純度試料の調製方法の開発および同タンパク質の結晶化条件を検討してまいりました。

目指す研究成果:宇宙という微小重力環境下で生成した高品質のタンパク質結晶を用い、精密な構造解析を行うことでタンパク質の高度な特性の解明が期待されます。またその結果をバイオセンシング技術の開発に必須となるタンパク質の精密な構造の解明に役立てることができます。その成果に基づき糖尿病治療、患者さまのQOL向上や疾病予防に貢献する革新的な検査システムの開発を目指しています。

今後の展開
「JAXA PCG」第2 期実験シリーズ第2回実験への参加
打上日:2014 年9 月26 日(日本時間・現地時間)
打上射場:カザフスタン バイコヌール宇宙基地
帰還予定:2014 年11月10日
着陸地点:カザフスタン
帰還機:ソユーズ宇宙船

「きぼう」日本実験棟(JAXA/NASA提供)

(語句説明)
※1 「きぼう」日本実験棟
地上約400km上空に建設された、人類史上最大の宇宙施設である国際宇宙ステーション(ISS)にある日本初の有人実験施設。船内実験室と船外実験プラットフォームの2つの実験スペースからなり、微小重力環境や宇宙放射線などを利用した科学実験、宇宙空間を長期間利用する実験や天体観測・地球観測が行われています。

※2 JAXA PCG(Protein Crystal Growth)
「JAXA PCG」では、JAXA が保有する高品質タンパク質結晶生成技術を活用し、国際宇宙ステーション/「きぼう」日本実験棟においてタンパク質結晶生成実験を行っています。ターゲットとなるタンパク質の精密な立体構造データを取得し、それらを基にタンパク質の働きを理解することで、今後の医薬品、産業用酵素等の研究・開発の発展に寄与するものと期待されています。
宇宙ステーション・きぼう広報・情報センターのホームページ(別リンクで開きます

※3 バイオセンシング技術
生命現象における情報を抽出し、これを定量化するための計測技術の総称を指します。東京農工大学工学研究院生命機能科学部門(工学府生命工学専攻、工学部生命工学科)では、民間企業と共同でのバイオセンシング技術の研究開発を多数行っています。

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