食事性肥満から肝炎発症に関わる制御因子の同定―中鎖脂肪酸油による予防・GPR84標的NASH治療薬の可能性―

食事性肥満から肝炎発症に関わる制御因子の同定
―中鎖脂肪酸油による予防・GPR84標的NASH治療薬の可能性―

概要
 京都大学大学院生命科学研究科 木村郁夫教授(東京農工大学大学院農学研究院 特任教授)、大植隆司 同助教、野仲葉月 東京農工大学大学院農学府大学院生(研究当時)、西田朱里 京都大学大学院薬学研究科大学院生らの研究グループは、過食・高脂肪食摂取により誘導される脂肪毒性から、生体内でその時、産生される中鎖脂肪酸とGPR84受容体が肝機能保護に働くことをマウス実験によって明らかにしました。肥満などの代謝性疾患から脂肪肝を生じる割合は非常に高く、一部は肝炎(非アルコール性脂肪肝炎:NASH)を伴った結果、肝硬変・肝がんへ移行しますが、その正確な進展機序は不明なままで有効な治療法は確立されていません。GPR84は中鎖脂肪酸の受容体と考えられており、我々は2022年に経口摂取した中鎖脂肪酸油(MCTオイル:特にカプリン酸C10:0)が、GPR84を介した腸管ホルモン分泌により血糖上昇を抑制することを明らかにしましたが、GPR84の生体内における生理的意義は不明なままでした。本研究により、高脂肪食摂取から肝臓において高産生された中鎖脂肪酸がGPR84に作用することで、マクロファージの過剰な活性化を抑制し、脂肪肝から進展する肝臓の炎症とそれに伴う肝線維化を防ぐことを見出しました。さらに、NASHモデルマウスにカプリン酸(C10:0)MCTオイルを食事への補充、あるいはGPR84作動剤の投与の結果、NASHへの進展を著しく防ぐことができました。MCTオイルによる肥満・糖尿病とその関連疾患の予防、GPR84を標的とした、NASH治療薬の開発に向けて今後、本成果の応用が期待されます。本成果は、2022年12月8日に米国の国際学術誌「J C I Insight」にオンライン掲載されました。

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