新型コロナウイルス感染拡大に由来するとみられるプラスチックゴミをウミガメが摂食していることを確認しました

新型コロナウイルス感染拡大に由来するとみられるプラスチックゴミを
ウミガメが摂食していることを確認しました

 国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院物質環境科学部門の高田秀重教授、水川薫子助教、福岡拓也研究員の研究グループは、東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授、木下千尋特任研究員とともに、ウミガメが不織布マスクを摂食していることに加え、一般的に販売されている不織布マスクから環境ホルモンが検出されることを確認しました(図1)。ウミガメへの物理的・化学的影響が懸念されるとともに、新型コロナウイルス感染拡大に由来する個人用防護具における廃棄物管理の徹底が必要です。

本研究成果は、Marine Pollution Bulletin(2月8日付)に掲載されました。
論文タイトル:Covid-19-derived plastic debris contaminating marine ecosystem: Alert from a sea turtle
URL:https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0025326X22000716

現状
 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスクや手袋といった個人用防護具(PPE)の使用が世界的に急増しました。一方で、PPEの一部がポイ捨てなどの不適切な処理によって環境中へ排出・海洋へ流出するという問題が起こっています。ウミガメ類のプラスチック摂食は1970年代から確認されていましたが、コロナ禍で急増したPPEを摂食しているという報告はありませんでした。

研究体制
 本研究は東京農工大学と東京大学大気海洋研究所の共同研究として行われました。本研究はJSPS科研費21J01067「ウミガメ類でのプラスチックゴミや餌を介した有害汚染物質の生体内移行とその影響評価」の助成を受けたものです。

研究成果
 2021年8月、岩手県沿岸の定置網に混獲されたアオウミガメの排泄物からマスクが発見され(図2)、ポリマー分析によってポリプロピレン製の不織布マスクであることが確認されました。この地域では過去15年以上にわたってウミガメ類の生態調査が行われてきましたが、これまでにマスクが出てきた例はなく、今回が初めての確認でした。排泄物から発見されたということは、消化管内で物理的に詰まることなく出てきたことを示している一方で、プラスチックを飲み込んだことによる汚染物質への曝露という化学的な影響が懸念されました。そこで、市販されている5社のマスクについてプラスチック添加剤(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)の分析を行った結果、5社中4社のマスクから内分泌攪乱作用が指摘されるUV329を含む6種類の添加剤が検出され、特に1社ではUV329が848ng/gと比較的高濃度となっていました。今回ウミガメの排泄物から見つかったマスクに同様に添加剤が含まれていたかどうかはわかりませんが、海洋生物がマスクを誤飲することでプラスチックの添加剤にも曝露される可能性を示しています。

今後の展開
 今回の結果は、コロナ禍における人間の社会様式の変化が海洋生物にも影響を与え始めていることを示すものです。パンデミックの長期化に伴い、マスクを含むPPEの使用量が多い状態はしばらく続くとみられることから、PPEの廃棄物管理の徹底や安全な添加剤への変更といった対策が早急に必要です。

図1:グラフィカルアブストラクト。
図2:ウミガメが誤飲していたマスク。

◆研究に関する問い合わせ◆
 東京農工大学大学院農学研究院
 日本学術振興会特別研究員
  福岡 拓也(ふくおか たくや)
  TEL/FAX:042-367-5825
    E-mail:t.fukuoka2(ここに@を入れてください)gmail.com

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