令和元年度 卒業・修了される皆さまへ

 本日、東京農工大学を卒業される皆さん、大学院の課程を修了される皆さん、誠におめでとうございます。本学教職員を代表し、心よりお祝いを申し上げます。

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている今日、卒業式・修了式を様々な角度から検討した結果、感染拡大防止を最優先して、中止することを決定いたしました。卒業・修了される皆さんはもとより、皆さんの卒業を共にお祝いしたいご父兄やご家族の皆さまは、この日を心待ちにされていたことと思います。私たちも全学を挙げて式を安全に行うための準備を進めてまいりましたが、国内外の想定外の感染拡大により、式を中止せざるを得なくなりました。人生の中の大きな区切りとなる卒業式・修了式を中止することは、皆さんに学位記を手渡し、お祝いの言葉をのべる準備をしていた私にとっても痛恨の極みです。私も30年にわたって本学で教育と研究に携わり、最後は学長として本学のために尽力してきましたが、今年の3月末日をもって皆さんと共に卒業します。式の中止は非常に心苦しいのですが、この日のことは深く心に残ることでしょう。
 式は中止となりましたが、卒業・修了され、一段上のステージに上がる皆さんにお祝いのメッセージを差し上げたいと思います。

 本年度は、学士の学位取得者が、農学部301名、工学部589名、修士の学位取得者が工学府博士前期課程344名、農学府修士課程182名、生物システム応用科学府博士前期課程53名、技術経営研究科33名、博士の学位取得者が工学府博士後期課程29名、生物システム応用科学府博士後期課程19名、連合農学研究科博士課程39名、合計1,589名が本学から学位を授与されます。学士、修士、あるいは博士の学位を取得した皆さんは、大きな達成感に包まれていることでしょう。学位を取得するために提出した論文を無事にまとめあげることができたのは、皆さんのたゆまない努力の賜物で、人生の大きな成果の一つとなるでしょう。しかし、学位論文をまとめ上げることができたのは決して皆さんの努力によるものだけではありません。指導教員、学科の先生方、研究室の先輩、同胞など、多くの方の支援や協力があったと思います。さらには、ご家族の理解と協力も大きかったでしょう。学位を取得するにあたり、皆さんを様々な形で支え続けて下さったご家族、友人、関係者の方々に心から感謝して下さい。我々教職員一同も、皆さんを祝福するとともに、皆さんの成長を支援して頂いた方々に心から謝意と敬意を表しつつ、卒業と言う大いなる喜びを分かち合いたいと思います。感謝する人がたくさんいると言うことは、多くの方々からいろいろな形の支援や影響を受けているということです。互いに影響を与えあえる仲間がいるということは本当に幸せなことです。時には心から応援してくれ、時には身勝手な考えを修正してくれたことでしょう。これからも皆さんと関係があった人々との交流を保ち、多くの人とのネットワークを維持し、社会に出てからもそのネットワークを強化して行ってください。

 4月から大学院に進学する人もいれば、社会に巣立つ人もいるでしょう。卒業、修了という一つの区切りをつけて、次のステップに上がる皆さんは、東京農工大学で学び、サークルなどで汗を流し、格段に成長したのではないでしょうか?特に大学院を修了する諸君は本学で実際に研究に携わり、座学だけでは味わうことのできない、実に様々な経験をしたことと思います。楽しいこともあったでしょう。友人と長時間語り合い、時には納得するまで意見をぶつけ合い、生きていることを実感したことでしょう。一方で、自ら努力して得た研究成果に対していろいろな角度から検討し、自分なりの考察を構築したり、成果を取り纏めて学会発表をしたり、専門誌に論文を投稿し、掲載されるなど、大きな目標に向かって努力し、達成してきたことでしょう。苦しいことも多かったと思います。どうしてうまく行かないんだろうと悩んだことも多々あったでしょう。しかし、やることがすべてうまくゆくことが一番幸せな人生でしょうか?皆さんはうまくゆくことだけを望んでいたのでは無いと思います。人間は失敗して、くじけて成長するものです。他人に迷惑をかけない失敗はどんどんしても良いでしょう。成功した先人たちが良く言う言葉に「成功するまで失敗し続けた」と言うものがあります。同じ失敗を繰り返さないように工夫して、挑戦して、それでも失敗する。こんなチャレンジングなことはありません。これから社会に出る皆さんも同じで、やること全てが上手く行くはずがありません。沢山の失敗があるでしょう。一度でも失敗したら立ち直れないような人は本学の卒業生にはいないでしょう。私はよく「ガラスのハート」という表現を使います。皆さんの心臓は一生の間20億回から30億回も拍動すると言われています。皆さんはフレキシブルで強靭な心臓を持っているのです。レジリエンスと言う言葉が多用されるようになってきましたが、心臓共々「しなやかに」社会を生きて下さい。さらに、成功するための方法論も良く考えて下さい。ルールを無視した勝手な考えはサイエンスではありません。もう一度研究倫理を思い出し、常にこの倫理に基づいて行動して下さい。学位を取得したと言うことは、専門知識だけを習得したのではありません。広い教養と高い倫理感も併せ持ち、人類の幸せのために、地球の平和的進歩のために努力することが、皆さんの使命です。

 さて、皆さんは卒業したら大学と縁が切れるわけではありません。大学とより強い絆を保ち、お互いを刺激しあえるような関係を築くことができれば最高だと思います。将来、皆さんがホームカミングデーや学園祭、あるいは同窓会などの機会に本学に戻って来た時には、ぜひ皆さんの進歩を私たちに聞かせてください。私たちも皆さんの母校として誇れる心のふるさととなれるよう、またいつでも皆さんを支援できるよう努力し続けます。すべての教職員が協力して、世界の役に立ち、世界に認知される実力ある大学を目指して失敗を恐れずに努力をしてまいります。
 本学を巣立つ皆さんが、世界に大きく羽ばたいて、充実した、刺激的な毎日を過ごすこと、また、皆さんと本学との交流が有意義に深まることを期待しております。令和最初の卒業式・修了式が中止になり、研究室単位での学位記授与になってしまったことは皆さんの記憶に長く残ることでしょう。学士、修士、博士の学位授与を祝し、皆さんの今後の活躍を心より祈り、告辞と致します。

写真右から、大野弘幸学長、梅田倫弘理事(教育担当)・副学長、荻原勲理事(学術・研究担当)・副学長 、岡山隆之理事(渉外担当)・副学長、堀川光久理事(総務・財務担当)・事務局長

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