都市適応する外来種!?オーストラリアの都市において外来カエルの形態が急速に変化!~都市化と外来種のまだ見ぬ関係~

都市適応する外来種!?
オーストラリアの都市において外来カエルの形態が急速に変化!
~都市化と外来種のまだ見ぬ関係~

ポイント

  • 都市の外来カエルは、耳腺(毒を分泌する器官)が小さく、脚の長さが雌雄で変化していた。
  • 都市化により、わずか数十年の間に外来カエルの形態が急速に変化し、その変化は雌雄で異なる。
  • 都市環境に侵略的外来種が急速に適応している可能性。

本研究成果は、イギリスの伝統ある学術誌Biological Journal of the Linnean Society誌(9月2日付)に掲載されました。
URL:https://academic.oup.com/biolinnean/advance-article-abstract/doi/10.1093/biolinnean/blac100/6686551
掲載誌:Biological Journal of the Linnean Society
論文名:The country toad and the city toad: comparing morphology of invasive cane toads (Rhinella marina) from rural and urban environments(郊外のカエルと都市のカエル:外来オオヒキガエルの形態比較)
著者名:Hirotaka Komine, Kiyomi Yasumiba, Lin Schwarzkopf(小峰浩隆、休場聖美、シュワルツコフ リン)

概要
 東京農工大学の小峰浩隆特任助教(研究当時。現在:山形大学学術研究院(農学担当)助教)らは、オーストラリアの都市において、侵略的外来種オオヒキガエル (以下外来カエル)の耳腺が小さくなっている事、脚の長さがオスでは長く、メスでは短くなっている事を明らかにしました。これは、都市化により、外来カエルの形態がわずか数十年の間に急速に変化した事、その変化がオスとメスで異なる事を示しています。侵略的外来種が都市環境に急速に適応している可能性が示されました。

研究背景
 急速な都市化は、生物多様性喪失の主要因として世界中で問題となっています。都市環境は自然環境とは異なる様々な特徴を持っていますが、これまではそれらの特徴が、野生生物の個体数や分布といった生態学的な側面に、どのように影響するのかという点に注目されてきました。しかし近年の研究により、都市環境は野生生物に進化的圧力として働く事が示されつつあります。一方で、都市環境は多くの外来種が侵入、定着している事が知られています。都市に外来種が多い理由として、競争相手や天敵が少ない事、侵入の機会が多い事等が指摘されてきました。さらに、都市のような攪乱された環境での生存、繁殖に適した性質を元々持っている事(前適応)も主な要因として指摘されてきました。しかし外来種は、都市環境に前適応しているだけではなく、今まさに適応しつつあるかもしれません。実際、外来種は導入先の環境に対して急速に進化的応答を示した例が知られています。しかしこれまでは、都市という新たな環境に対して、外来種がどのように応答しているのか、その詳細はほとんど知られていませんでした。

研究成果
 本研究グループは世界各地で侵略的外来種となっているオオヒキガエル(図1)に着目しました。この種は中南米原産の大型のヒキガエルで、農業害虫の駆除のためにハワイやフィリピン、石垣島など世界各地に導入されました。オーストラリアには1935年に導入され、都市と森林の双方の環境に侵入、定着しました。この外来カエルは天敵に食べられないように、頭部に耳腺と呼ばれる強力な毒を分泌する器官を持っています(図1)。この毒は捕食者から身を守るために有効ではあるものの、その生成にはコストがかかります。また、一般的に都市環境は森林環境と比べて捕食者が少ないとされています。そこで本研究グループは、都市環境では外来カエルの耳腺が小型化している可能性があると考えました。さらに、都市は道路や建物といった構造物があり、食べ物の構成も特徴的です。そのため、都市に生息する外来カエルは移動のために重要な脚の長さや、太り具合にも変化が見られるかもしれません。外来種の性質が都市環境においてどのように変化しているかを調べる事で、都市環境に対する外来種の応答を明らかにする事が出来ると考えられます。

 そこで本研究グループは、2017年12月-2018年4月、2019年12月-2020年3月にオーストラリアのTownsville (タウンズビル)、Cairns (ケアンズ)、Mackay (マッカイ)という3つの都市及び、それらの周辺に広がる森林において(図2)、外来カエルを捕獲し、その体長、耳腺のサイズ、脚の長さ、体重を計測しました(図3)。

 成体419個体を捕獲し、形態計測を行った後、その計測値を解析しました。その結果、都市環境の外来カエルは、森林環境と比べて、相対的な耳腺のサイズが小さい事が明らかになりました(図4)。また、脚の長さがオスでは長くメスでは短い事(雌雄差の拡大)、体重には違いがない事が明らかになりました(図4)。これは、都市という新たな環境に応答し、外来カエルの形態がわずか数十年の間に急速に変化した事、その変化の仕方はオスとメスで異なる事を示しています(図5)。今回の結果は、外来カエルが都市環境に適した性質を元々持っているだけではなく、今まさに適応しつつある可能性を示すものです。都市化と外来種の関係の一端が明らかになりました。

今後の展開
 都市開発による野生生物への影響については、個体数や分布の変化といった生態学的な側面が多く報告されてきました。しかし、性質変化等の進化的な側面についての研究は始まったばかりです。また、都市には外来種が多く生息していますが、都市化と外来種の性質との関係については、これまでほとんど分かっていませんでした。外来種の性質変化は、その侵略性にも関わる可能性があります。そのため、都市という新たな環境に対して外来種がどのように応答しているのかというテーマは、進化生態学的に興味深いだけではなく、生態系の保全といった面からも今後重要になってくると考えられます。都市化及び外来種問題は、双方共に人間活動に起因する世界的な環境問題です。そのため、これらの関係性を明らかにしていく事が、人と野生生物との関わりを理解するための一助になる事が期待されます。

図1 オオヒキガエル(撮影:小峰浩隆):中南米原産。農業害虫の駆除のために世界各地に導入された。しかし、期待された効果はなく、捕食や毒によって在来生態系に深刻な影響を及ぼし、世界的な問題となっている。世界及び日本の侵略的外来生物ワースト100に指定。
図2 調査地
図3 計測項目
図4 都市及び森林の外来オオヒキガエルの形態比較の結果。都市の外来カエルは毒を分泌する耳腺が小さく、オスの脚長が長く、メスの脚長が短くなっている事が明らかになりました。体重に違いはありませんでした。
図5 研究概要

研究体制
 本研究は、国立大学法人東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院の小峰浩隆特任助教(研究当時。現在:国立大学法人山形大学学術研究院(農学担当) 助教)、東京農工大学の休場聖美研究員(当時。現在:公益財団法人日本自然保護協会)、James Cook University のLin Schwarzkopf教授らの研究グループによって行われました。本研究は東京農工大学先端産学連携研究推進センター(URAC)の「学長裁量経費による博士課程(後期)学生の海外派遣」及び「学長裁量経費による教員の海外派遣」の助成を受けたものです。

◆研究に関する問い合わせ◆
(筆頭著者の現所属)
国立大学法人 山形大学学術研究院(農学担当)
助教 小峰浩隆
TEL:0235-28-2876
E-mail:komitorihiro(ここに@を入れてください)gmail.com

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