平成27年度卒業式・学位記授与式

平成27年度卒業式・学位記授与式の告辞です。

平成28年3月25日

東京農工大学長 松永 是


本日、東京農工大学を卒業される皆さん、そして大学院課程を修了される皆さん、おめでとうございます。本学教職員を代表し、心よりお祝い申し上げます。本学で過ごした数年間、皆さんは楽しいことや辛いこと、実に様々な経験をされたと思います。そうした経験を通して逞しく成長した力強さが皆さんの晴れやかな表情の中に溢れており、我々教職員としても頼もしく嬉しく、そして報われたように感じています。また、今まで皆さんが学業に励んできた間、常に陰になり日向になり皆さんを支援してこられたご家族、ご友人その他関係者の方々にも深く敬意を表し、この晴れの日の喜びを共に分かち合いたいと思います。

本年は、学士号取得者が農学部299名、工学部609名、修士号取得者が工学府博士前期課程350名、工学府専門職学位課程37名、農学府修士課程186名、生物システム応用科学府博士前期課程58名、博士号取得者が工学府博士後期課程28名、生物システム応用科学府博士後期課程17名、連合農学研究科博士課程34名、論文博士4名、計1622名がこの学び舎から巣立っていくこととなりました。その進路は多種多様ですが、新しい世界に入っていくという点では皆同じです。そして新しい世界には予測不可能な、今まで経験したことがなかったような困難が数多くあることも確かです。もちろん皆さんはそれらを乗り切る意欲や力を十分に持っていると信じていますが、それでもやはり難しいときがあるでしょう。困難がまるで乗り越えられぬ大きく深い溝か永遠に続く巨大な壁のように感じられ、その先が何も見えず、人生が終わったようにすら思ってしまうかもしれません。そのようなときに思い出してほしいのが、ルネ・デカルトの『困難は分割せよ。』という言葉です。息詰まって固まってしまった思考を休め、視点を変えましょう。一旦立ち止まり、直面している問題をじっくり観察し、細分化して分析するのです。どんな大きな問題も、細かく切り分けて考えれば不具合を起こしている部分と支障のない部分とが必ずあります。そして一度に全部解決するのは無理でも、一つ一つの部分であれば案外簡単に突破できるところがあるはずです。まずはその部分を解決し、それからもう一度全体を見てみると、状況も変わって自分の次にすべき事や進む道が見えてきます。そしてその細分化と俯瞰とを繰り返していけば、溝は浅く、壁は低くなり、いつか越えられるようになるでしょう。もうお分かりですね?この手法は今までの数年間に学業・研究で行ってきたものと全く同じです。皆さんは今までの数年間でその訓練を行い、課題解決能力を養ってきたのです。

皆さんがすごしたこの東京農工大学は、創基以来140年を超える長い歴史と伝統を引き継ぎながら、世界と競える先端研究力の強化と高度なイノベーションリーダーの育成に力をいれ、進化し続けてきました。それを可能にしたのは、紛れもなくこの細分化と俯瞰を強く意識して柔軟かつ果敢に様々な事業に取り組んできたからにほかなりません。自然と調和し文化的・経済的・環境持続的に発展し続ける社会の実現という大きな共通の命題を常に掲げつつ、そのために重要となるグローバル化、ASEAN諸国との連携や、高度人材育成、若手研究者・女性研究者支援等にそれぞれ対応する新しいプログラムやコンソーシアムを立ち上げ、一つ一つを丁寧に推進して成功させることによって大きな命題に近づくよう常に挑戦を続けています。個人個人の教員がそれぞれの専門分野で日々精力的に研究活動をしていることももちろんですが、このような大学としての姿勢があるからこそ、本学は実は各界で期待され、高く評価されているのです。そしてこの大学で学んだ皆さんは、知識を育て技術や能力を磨いただけではなく、本学の精神も受け継いでくれていると思います。それは皆さんの将来の様々な局面できっと大いに役に立ち、どのような環境でもきっと存分に力を発揮し活躍できる力となるでしょう。また、皆さんは一人で奮闘するのではありません。本日ここにいる千六百二十二名の皆さんは、これからお互いの人生の良き仲間、共に困難に立ち向かうパートナーとなり、切磋琢磨するライバルとなる人たちです。この大学で培った関係を長く温め、大事にしていただきたいと思います。

次に皆さんにお会いする時には、さらに成長した頼もしい姿を見ることができると期待しています。そして本学も皆さんの母校として誇れる心強い基柱となるよう、またいつでも皆さんのお手伝いが最高の形で出来るよう、様々な挑戦的取り組みやグローバル・イノベーションを推進して、世界の役に立ち世界に認知される実力ある大学づくりに一層の努力をしてまいります。これからも同窓会活動やそれぞれの仕事を通して互いの交流が有意義に深まることを願い、そして最後にもう一度皆さんの今後のご健闘・ご活躍を心よりお祈りし、告辞とさせていただきます。

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