ネコモルビリウイルスの感染が腎炎症状を引き起こす新たな証拠を発見!

ネコモルビリウイルスの感染が腎炎症状を引き起こす新たな証拠を発見! 

 国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院動物生命科学部門、獣医微生物学研究室の古谷哲也准教授は、これまで原因が明らかでなかった猫の慢性腎炎の原因として、ネコモルビリウイルスの感染が、関与するという新たな証拠を明らかにしました。この成果により、猫の健康上で大きな問題となっている腎臓病の予防、治療につながることが期待されます。

本研究成果は、Veterinary Microbiology(オンライン11月15日付)に掲載されました。
URL:https://doi.org/10.1016/j.vetmic.2018.11.005

現状 :猫は他の動物と比較して、慢性腎炎の発症率が高く、健康上の大きな問題となっていますが、その原因ははっきりと分かっていません。2012年に香港で発見されたネコモルビリウイルス(Feline  morbillivirus, FeMV)の初報告では、ウイルス感染と腎炎との関係が示唆され、猫の慢性腎炎の原因としての可能性より大きく注目されました。しかしその後、慢性疾患という、研究が困難な病気であるという理由もあり、このウイルスの病原性を明らかにする報告がありませんでした。もし、FeMVが猫の慢性腎炎に関与することが明らかになれば、FeMV感染予防のためのワクチンや、抗‐FeMV治療薬の開発によって、猫の慢性腎疾患の解決に大きな進歩を生み出す可能性があります。

研究体制 :本研究は、東京農工大学農学研究院動物生命科学部門の大学院生Kripitch Sutummapornさん、古谷哲也准教授、町田登教授、及び鈴木和彦准教授らと、国立感染症研究所獣医科学部の森川茂部長と朴ウンシル主任研究官らが共同で実施しました。また、本研究はJSPS科研費 JP15K07719の助成を受けたものです。

研究成果 :ネコ腎臓組織におけるFeMV感染と病理学的変化(病気時に起こる組織の損傷などの変化)との関連性を調べるため、猫の腎臓組織38検体を用い、免疫組織化学および免疫蛍光アッセイによるFeMVの検出を行いました。また、腎臓組織の各病理的変化をスコア化して、FeMVの局在との関係を分析したところ、FeMV局在組織において、組織損傷のスコアが統計学的に有意に高いことが見つかりました。FeMV感染が関係する病理学的変化には、間質細胞浸潤、糸球体硬化症、尿細管萎縮症および間質線維症など慢性腎疾患に関与するものが含まれていました。これらの結果は、これまでに明らかでなかった、FeMV感染の猫の腎臓における慢性腎疾患への関与を、世界で初めて統計的に明らかにしました。
 
今後の展開 :猫に腎炎が多発する理由については、長い間理由が分かっていませんでした。今回の研究により、ネコモルビリウイルスの感染が、猫の腎炎を引き起こす理由の1つであることが明らかになりました。この発見により、今後は、ネコモルビリウイルスのワクチンや、抗ネコモルビリウイルス薬剤開発により、猫の慢性腎炎を予防・治療できる可能性があります。また、やはり本研究室で行っているFeMV遺伝子や抗体の検査システムによる、FeMV感染様式や、伝播経路の解明によって、将来はFeMV感染の予防により、猫の慢性腎炎の解決に貢献できる可能性があります。

図1:FeMV抗原陽性(左)と陰性(右)の蛍光抗体法写真
図2:本研究の概要

詳しくは、以下をご参照ください。

 

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院農学研究院
動物生命科学部門 准教授
古谷 哲也 (ふるや てつや)
TEL/FAX:042-367-5255
E-mail:furuyat(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

関連リンク(別ウィンドウで開きます)

CONTACT