平成30年度東京農工大学入学式式辞

平成30年度東京農工大学入学式式辞です。

 

平成30年4月6日
東京農工大学長 大野 弘幸

 東京農工大学に入学された皆さん、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。また、本日の入学式に望む皆さんを今まで支えてこられたご家族はじめ、関係各位にも謹んでお慶びを申し上げます。

 平成30年度の新入生は、農学部が330名、工学部が619名で学部生合計949名です。本学の大学院は工学府、農学府、生物システム応用科学府及び連合農学研究科の4つから構成されており、生物システム応用科学府内に設置されている早稲田大学との連携による共同先進健康科学専攻もすべてあわせますと、博士前期課程・修士課程・専門職学位課程の新入生は635名、博士後期課程は109名となります。また、世界各地からの留学生は合わせて57名で、本年度すべての学部・大学院生を含めた全体の新入生の総計は1,693名です。
 さて、皆さんが入学した東京農工大学は創基以来140年を超える長い歴史を通して、産業の基幹である農学と工学の二分野に加え、その融合領域もふくめ、持続的に発展し続けることのできる社会の実現に向けて全力で取り組んでいます。東京農工大学に入学された学部一年生の皆さん。皆さんはまず、大学での教育は高等学校までの教育とは大きく異なることを認識してください。高等学校まではプログラムに沿って先生が教えてくれる基礎知識を吸収し理解するという教育が多かったと思います。基礎学ですから、問題に対する解は一つです。皆さんは、同じ答えを導くことが求められたことでしょう。しかし大学では、学生が自主的に考え、持てる知識をフルに活用して新たな知を生み出すという積極的で能動的な姿勢が求められます。皆さんが卒業後に進むことになる社会では、未知の事柄について、あるいは未経験のことについて問われることばかりです。パラメータも多いので、条件を満足するような解もたくさん出てくるでしょう。しかし皆さんはそれらの中から最適解を提案する必要があります。あるいは最適ではないものの、時間と共にパラメータが変われば適切な解となるものも、一定ではなくなるでしょう。もしかしたら、現状では解が無いかもしれません。いずれにせよ、解を出すと言うことは簡単なことではありません。こうした未知の領域で解を見出すのには何が必要でしょうか?単なる知識ならば今日のAIにはかないません。皆さんに必要なのは異なる情報を組み合わせる能力です。しかも、常識にとらわれない、革新的なアプローチが必要になるでしょう。そのためには、今から人とは違う答えや提案を導く訓練が必要です。
 たとえば、「二十年後の地球の食糧問題を解決するための方策を考えよ!」という問いに対する解はたくさんあります。食料生産を効率化させるだけでなく、人口増加を防ぐ、地底農場、宇宙工場、最近の映画のように、ヒトを小さくしてしまおうと言うのも非現実的ですが面白い提案です。このように未来は課題だらけです。従って、未知に挑戦するのだというみなさんの意欲が大切となります。大学は皆さんが成長するのを手助けします。成長する努力をするのはみなさん自身です。どうか自分の将来の夢を描き、その夢を現実のものとするために努力を惜しまず、勉学に励んで下さい。また、常に問題意識を持ち、それを解決する方法論を考えるようにして下さい。時には非常識な組み合わせも必要になるでしょう。知識を思い出すのではなく、考えることが大切です。そのためには一人で学ぶのではなく、大学に集い、皆で議論をし、様々な考え方を経験し、最適解を導き出す手法を身に着けることが必須です。大学での教育というのは皆さんが集まることに意味があります。これが通信教育との大きな違いです。どうか積極的に友人を作り、様々なことを議論し、お互いに成長して下さい。
 一方、この春に本学大学院へ入学されてきた皆さんは、この「常識にとらわれずに広く考える」という基本姿勢はしっかりと身についており、さらに自分を高めようとして、より専門的な研究生活に入ってきたことでしょう。しかし専門性を極めるのと同時に、幅広い常識、教養を身に着け、俯瞰的・大局的で多種多様な視点も持たなくてはなりません。 浅くても良いから幅広い知識と、誰よりも自分が一番良く知っているという深い専門知識の両方を持つことは国際社会で活躍するときに有用でしょう。ですから自身の専門分野の研究のみならず、他分野の知識や考え方、歴史的背景や社会的要素、国際情勢、あらゆることを積極的に学んで下さい。ただ知識を拡げるだけではなく、それぞれの事象に対し、「自分はこう考える」という意見を持って下さい。そのためにも是非、大学院在学中に海外で研究生活を経験して下さい。海外の大学院生たちはとても意欲的です。また、外から日本を見ると新しい発見があるはずです。繰り返しになりますが、単なる知識の集積を目指してはいけません。様々な事柄に対して皆さんはどう思うのか、どう考えるのかが重要です。先ほども述べましたが、知識量ではAIには勝てなくなってしまいました。ひとがひとである所以は知識をどう組み合わせて、解決策を見出すかということではないでしょうか。
 大学院では研究中心の生活になるでしょう。未知の領域の研究では、だれも答えを知りません。どう解決策を見出すのかというところが重要です。いろいろ考え、悩んで下さい。そしていろいろ試してください。その時には研究倫理を忘れずに、正しいサイエンスを進めて下さい。皆さんの前に幾度となく立ちはだかるであろう様々な壁に立ち向かい、正々堂々と乗り越えて下さい。皆さんはそのたびに成長するでしょう。どうか世界を平和に、人々を幸せにすることのできる人材になってください。我々教員も様々な分野で世界のトップを走り続け、全力で皆さんをサポートしていきます。
 そして最後に、大切なことを申し添えます。学術研究の道は、精神的にも身体的にも厳しいものです。失敗ばかりの生活を送ることになります。今まで順調で何事も上手く行った人生を送ってきた皆さんにとっては、とても苦しい修行のような期間になるでしょう。健康な心と体がなくては続けることができません。特に日本全国や海外から来られた皆さんは、慣れない環境でいろいろと不安なことも多いかと思います。一人で悩まず、友人や保健管理センターのスタッフ、先生方に相談して下さい。健康にも十分留意し、心身共に健康で、大いに学び、大いに遊び、実り多い大学生活を送ってください。苦しんだ先には輝く喜びが待っているでしょう。
 沢山のお願いを皆さんにお話ししましたが、東京農工大学の教職員もさらに力強く皆さんのバックアップができるよう、あらゆる面で常に最大限の努力を続けてまいります。
本日入学されたすべての皆さんが今日の気持ちを忘れず、それぞれの夢に向かって大きく成長することを願い、また皆さんが本学の一員となることにあらためて歓迎の気持ちをお伝えして、式辞といたします。

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