東京農工大学植物工場の成果が社会実装される!日本初の果樹工場からブルーベリー果実の出荷が始まる!

2021年12月3日

東京農工大学植物工場の成果が社会実装される!
日本初の果樹工場からブルーベリー果実の出荷が始まる!

 国立大学法人東京農工大学(以下・東京農工大学)と日本ガスコム株式会社(以下・日本ガスコム)は、日本ガスコムの100%グループ会社・アグリガスコム株式会社(以下・アグリガスコム)の植物工場を使って、東京農工大学 荻原 勲名誉教授が開発したブルーベリーの通年生産システムの社会実装化の実験を行い、これまで生産が不可能とされた冬季のブルーベリー果実の出荷に成功しました。ブルーベリー果実が、2021年12月から、伊勢丹新宿店で販売されます。

現状
 ブルーベリーの収穫期間は1品種でみると3週間程度と短く、果実の成熟時期が異なる種、品種、栽培型を組み合わせても、日本では夏季の4ヶ月間が主な出荷期間です。そのため冬季を含めたオフシーズンは、海外からの輸入に頼っているのが現状です。

研究体制
 本研究は、東京農工大学大学院農学研究院生物制御科学部門の有江力教授、荻原勲名誉教授、車敬愛産官学連携研究員、堀内尚美産官学連携研究員、高橋さくら産官学連携研究員、日本ガスコム 西山暢一取締役経営企画室長によって実施されました。

研究成果
 東京農工大学の荻原 勲名誉教授らは、果樹生産のための革新的な技術を開発するため、2011年にキャンパス内に「先進植物工場研究施設」を建設しました。同施設は、太陽光を利用する地上1階部分の太陽光型植物工場と、人工光を利用する地下1階の人工光型植物工場による2階建構造となっています。果樹は、春夏秋冬を体験させることによって開花、結実し、休眠するため、同施設では、「春・夏・秋・冬」それぞれの環境を再現できる部屋を設置して、ブルーベリーをモデル植物として、果樹のライフサイクルの短縮化の研究を行ってきました(図1)。
 研究の結果、ブルーベリーの連続開花結実法を開発し、2012年に特許を取得しました(注1)。この技術では、オフシーズンを含む通年で果実の収穫が可能になり、また通常の自然栽培に比べて4~5倍の収量になりました。また、連続的に開花が行われ、結実するため、1本の木に花、未熟果、成熟果が混在するいわゆる四季なりの様相(図2)を示し、長期にわたって出荷が可能になります。そこで、本技術を社会実装するため、共同研究先の日本ガスコムが2021年6月に設立した6,000㎡の植物工場(図3)で、連続開花結実法を誘導する温度、日長等の制御を行って実験を重ねた結果、9月から開花が認められ、11月から果実が成熟しました。品種によって大きさ、糖度は異なりますが、大粒や高糖度の果実が収穫できたことから、伊勢丹新宿店で果実が12月から販売されることとなりました(図4)。

今後の展開
 日本ガスコムの植物工場は日本で初めて果樹であるブルーベリーを通年で栽培する大型の果樹工場です。ブルーベリー果実は、手軽に食べることができるので、年間を通じて、高品質な国産のブルーベリーを安定的に供給することで、果物の摂取量の向上への貢献が期待されます。なお、果樹工場は2021年6月に完成し、工場内に入れた苗も若いため、初年度の生産量は少ないことが予想されます。初年度は出荷量に制限もありますので、伊勢丹新宿店に商品が陳列されていないこともあります。

図1:ライフサイクルの短縮化と高収化のシナリオ
図2:連続開花結実状況
図3:アグリガスコムの植物工場
図4:販売されるブルーベリー果実

参考資料
注1)特許:荻原勲 他2名 ブルーベリーの生産方法、及び該方法により得られる連続開花性ブルーベリー 登録番号5717111号 WO2012/161351 号
Cho, H. Y., Kadowaki, M., Che, J., Takahashi, S., Horiuchi, N., & Ogiwara, I Influence of light quality on flowering characteristics, potential for year-round fruit production and fruit quality of blueberry in a plant factory Fruits 2019 74(1) 3-10
Thanda Aung, Yukinari Muramatsu, Naomi Horiuchi, Jingai Che, Yuya Mochizuki and Isao Ogiwara.Plant Growth and Fruit Quality of Blueberry in the Controlled Room under Artificial Light.  Journal of the Japanese Society for Horticultural Science. 83(4). 273-281.2014

◆研究に関する問い合わせ◆

東京農工大学大学院 名誉教授
荻原 勲(おぎわら いさお)
TEL:042-388-7756
E-mail:ogiwara(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

日本ガスコム株式会社 取締役経営企画室長
西山 暢一(にしやま のぶいち)
TEL:0532-33-3522
E-mail:n-nishiyama(ここに@を入れてください)n-gascom.co.jp

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