溶液中で安定なビタミンD誘導体化試薬~25ヒドロキシ体の精確な定量が可能~

溶液中で安定なビタミンD誘導体化試薬~25ヒドロキシ体の精確な定量が可能~

 東京農工大学大学院工学研究院・黒田研究室、千葉大学附属病院・臨床マススペクトロメトリー診断学寄附研究部門、株式会社トクヤマ、及び日本電子株式会社のグループは、多くの疾病に関わるビタミンDを質量分析で定量化するために必要な、クックソン型試薬DAPTADの溶液安定性を高めることに成功しました。この成果は、臨床検査分野においてビタミンDの精確な定量法を提供し、自動化測定へ道を開くことが期待されます。

本研究成果は、Rapid Communications in Mass Spectrometry、11月3日受理(11月12日付:日本時間11月13日)に掲載されました。

現状 :ビタミンDは骨の健康維持のみならず、高血圧、歯周病、多発性硬化症など多くの疾患に関連すると考えられ、その体内動態は、現在、主にイムノアッセイ法で血清中総25ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]として測定されています。しかし、25(OH)Dは主成分である25(OH)D3とその異性体[25(OH)D2, 24,25(OH)2D3, 3-epi-25(OH)D3など]の混合物で、主成分以外の異性体については生理学的意義が十分解明されていません。従ってその精確な定量は、今後の研究および臨床検査を大きく前進させることが期待されています。

研究体制 :本研究は、東京農工大学(黒田裕教授)、千葉大学附属病院(野村文夫特任教授、佐藤守特任准教授)、株式会社トクヤマ及び日本電子株式会社の共同研究として行われました。

研究成果 :臨床検査において測定結果の再現性は極めて重要であり、これらは装置の性能、並びに試薬の安定性により担保されます。クックソン型試薬DAPTADはビタミンDに対する高い反応性を有し、かつそのイオン化効率を改善することが知られています。しかし溶液中での安定性が不十分で、質量分析を用いたビタミンDルーチン測定の障害となっていました。本研究ではクックソン型試薬DAPTADの9-フェニルアントラセン付加物(DAP-PA)を合成し、冷蔵状態で三ヶ月以上の高い溶液安定性を達成することに成功しました。さらに、イムノアッセイを用いた場合では識別不可能であった血清中の25ヒドロキシビタミンD 四成分(25(OH)D3, 25(OH)D2, 24,25(OH)2D3, 3-epi-25(OH)D3)をDAPTADにより誘導体化し、質量分析法(LC-MS/MS)でそれぞれ精確に定量できることを示しました。

今後の展開 :本手法はビタミンD自動誘導体化定量検出装置の開発につながることが期待されます。

用語解説 クックソン型試薬:クックソンらによって開発されたs-cisジエン選択的誘導化試薬。DAPTADは4-(4’-dimethylaminophenyl)-1,2,4-triazoline-3,5-dioneの略。


◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学研究院
 生命機能科学部門黒田研究室 客員共同研究員
  福沢 世傑(ふくざわ せけつ)
  TEL/FAX:042-388-7753
  E-mail:s-fukuzawa(ここに@を入れてください)m2.tuat.ac.jp

プレスリリース(PDF:199KB)

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