〔2015年4月10日リリース〕平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞記念「身心一体科学講座」

国立大学法人東京農工大学(学長:松永 是 本部:東京都府中市)大学院工学研究院応用化学部門の跡見順子客員教授と清水美穂客員准教授のグループは、平成27年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 理解増進部門受賞課題(添付参照)「いのちを知り生かす身心一体科学の普及啓発」(受賞者 跡見順子)で評価された授業デモンストレーションを、4月15日(水)に文部科学省で行われる授賞式に先立ち、一般の方々および報道関係者に公開します。どなたでもご参加いただけますので、ぜひ、お気軽にご参加ください。

◆概要◆
【開催日】 平成27年4月14日(火)13:30〜16:00
【参加費】 無料
【会場】 東京農工大学小金井キャンパス内 科学博物館3階講堂
【住所】 東京都小金井市中町2-24-16
【アクセス】 JR中央線東小金井駅より徒歩10分
【主催】 東京農工大学工学研究院応用化学部門
跡見・清水研究室 Cell to Body & Mind Dynamics Lab
URL: http://web.tuat.ac.jp/~yatomi/
【お問い合わせ】
E-mail: mshmz(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

【持ち物等】 ストレッチをしますので動きやすい服装できてください
【申込】 資料準備の都合上、できるだけ事前に問い合わせ先まで連絡ください。当日参加可。

【授業趣旨】

デモンストレーション授業
13:00 受付開始 講堂入口
13:30 以下の内容を体験していただく予定です(内容・順番は変更の可能性あり)

座学1:1)「自分がわかる細胞健康科学」~細胞・身体連携力学応答機構とスローエクササイズ効果
~DVD鑑賞
2)下記の授業の趣旨の説明:遺伝子だけじゃ人間が生きて活動し続けることを説明できない
~生命科学における古くて新しい原理・原則:セルツーボディ&マインドダイナミクスからの
身体脳適応健康科学、美と健康
実習1:つもりと実際
座学2:脳についての理解:視覚映像にだまされる、バランスや触覚の重要性
座学3:人体の多分節性とバランス制御、自重の制御原理
実習2:四足歩行と二足歩行の違い、電車トレーニングの原理、
体幹をつくる背と腹の協調ストレッチ/微細筋トレ
座学4:「身体運動と生命」DVD鑑賞
実習3:触診でなぜ心拍数が測れるか、拍動と時間と数学、マルチ感覚のモダリティー
実習4:拍動する心筋細胞観察、細胞からのDNA抽出
座学5:ノルウェーも注目!産業廃棄物の活用・機能性総合食品・生活の知恵としての卵殻膜と、
機能性ウェアが拓く産業につながる新しい健康科学
実習5:卵殻膜の顕微鏡観察

質疑応答
16:00 終了予定

みなさんがよくご存じなのは、考えるアタマの能力や、握力や背筋力、肺活量などの生理機能だとおもいます。それらの生理機能は、異なる組織、骨格筋、靱帯、腱、関節、骨などの身体運動を生み出し張力を伝える「運動器」とよばれる組織の細胞達,外部の環境の情報を取り入れ、状況に応じて、身体のバランスがとれるように骨格筋を収縮させる感覚系と運動系及び調節系を担う「脳神経系」をつくる細胞たち、外部にある酸素を取り入れる肺や横隔膜などの細胞たちや、酸素を運ぶ血液を送り出す心臓ポンプの細胞たち、体中の細胞たちに酸素や栄養物を届ける血管をつくる「呼吸—心循環系」の細胞達たち等々の生理学的な能力の一部を測っているのです。運動生理学は、このように働きや役割で体力や運動能力を分類してきました。

写真はいずれも、一般向け授業実施例/平成26年度東京農工大学農工大公開講座<眼からウロコサイエンス1:自分の「細胞」と「脳」を元気にする方法>の様子

しかし私たちの日常生活は、からだを部分に分けて使っていません。私たちが生きているのは、1Gの重力がいつもかかっている地球です。生理的機能を測るだけでは、このような細胞が刺激に応答して体や組織を作り替える日々の活動に目が届きません。高齢者で問題となる膝関節症やうつ病、アルツハイマー病などを予防するためには、膝も脳も細胞たちが創っていること、そして膝や脳を正しく活動させるためには、身体の一部だけをつかうゲームや部分的な筋力トレーニングよりも、自分の体の重さ(体重)を自分でバランス良くささえかつ移動させる正しい姿勢や運動が重要なのです。自分の姿勢を正しく保持し、体重を移動する動作や運動は、全身の細胞たちに協力しあう刺激となるのです。さらには、このような細胞と身体の関係を「知識」として知ることが、細胞一個がまさに自律して生きていること、その細胞たちの正しいコミュニケーションを促すのはまぎれもないあなたや私の日々の活動であることを納得できる科学的な理解を生み出すことになります。人間社会を、そのときの情緒的な流れに身を任せるのではなく、いのちを生きる意志で自分を生かす人間としての生き方を実践することにつながります。細胞たちがその活動をささえてくれます。勇気をからだからもらえるのです。その勇気こそ、アルツハイマー病やうつ病や膝関節症にならない、あるいは予防する、直す原動力となります。

私たち人間は、言葉を発明し、抽象的な世界や科学の世界をうみだしてきました。そのような高度な文化を担える「人間」として幸運にも生を授かりました。幸福を希求する基本的人権を支えるのは、自分自身です。その人類の究極の理想であり希望が、憲法九条です。自分の脳やいのちを育むのは、自分が生きていることに責任をもつことです。それは世界の人類が人間として生きる世界へ向けてのモデルになります。自分のいのちを大事にすることは、同じように「いのちの細胞達が生きる他の人のいのち」もともに大事にすることなのです。わたしたちCell to Body & Mind Dynamics研究室では、この背景の生命科学・脳科学・健康材料科学メカニズムを研究しています。適切なからだの動かし方を細胞の原理を包含する身体の動作原理を希求する理学療法と脳科学の視点から提案し、からだの中の細胞にはたらきかけて日々の生活を生き生きと豊かなものにするお手伝いをする商品開発につなげています。正しい行動をすれば、からだには細胞や身体をサポートするメカニズムが働くことを理解すると、健全な日本社会の創出にも役立ちます。

(参考2)
自分の右手を左手首にあて、シャーレの中の心筋細胞を顕微鏡で観察すると、自分のからだに宿る細胞に「いのち」の存在をイメージすることができる。(写真は、アクチンタンパク質を緑色蛍光タンパク質(GFP)で光らせた自律的に拍動する心筋細胞。矢印:心筋細胞が拍動するための横紋構造が見える。)

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