植物ホルモン「オーキシン」をリサイクル・分解する経路を解明-植物ホルモンをリサイクルして利用するしくみが明らかに!農作物やバイオマスなどの増収に向けて大きな一歩-

2021年11月25日

植物ホルモン「オーキシン」をリサイクル・分解する経路を解明
-植物ホルモンをリサイクルして利用するしくみが明らかに!
農作物やバイオマスなどの増収に向けて大きな一歩-

【研究のポイント】

  • 植物ホルモン・オーキシンは、アミノ酸と結合して、不活性なオーキシン-アミノ酸結合体となり一時的に貯蔵される。この酸結合体から、アミノ酸が除去されてオーキシンへと再生されるリサイクル経路を明らかにした。
  • 植物はオーキシン-アミノ酸結合体を酸化して分解経路に導くことで、オーキシンがリサイクルされる量を調節する。
  • オーキシンによる植物の成長制御機構の解明へとつながる研究。

【要旨】
 岡山理科大学・林謙一郎教授、東京農工大学・笠原博幸教授、 カルフォルニア大学サンディエゴ校・Yunde Zhao教授からなる国際共同研究グループ(岡山理科大学、東京農工大学、カルフォルニア大学サンディエゴ校、理化学研究所環境資源科学研究センター)※は、植物ホルモンの1種「オーキシン」を不活性化する主要な経路の解明に成功しました。本研究成果は、Nature Communications誌に掲載されました。
 オーキシンは植物の成長調節に中心的な役割を担う成長制御物質です。オーキシンの研究は、ダーウィン親子が行った19世紀後半の茎の屈曲研究から始まり、1930年代中頃にオーキシンとしてインドール-3-酢酸(IAA)が同定されました。IAA(オーキシン)のようなごく微量で作用する植物ホルモンは、適切な量のホルモンが、必要な場所で必要なときに働くことが大切です。植物はオーキシンの量を適切に維持するために、余分なオーキシンを速やかに不活性化していることはわかっていました。しかし、植物がどのようにオーキシンを不活性化・分解して、必要なオーキシンの量を調節するのかは長年にわたる謎でした。今回の研究から、オーキシンは最初にリサイクル可能なオーキシン-アミノ酸結合体に変換されて一時的に貯蔵された後、分解されていくことがわかりました。植物ではGH3という酵素が、IAAをアミノ酸(アスパラギン酸やグルタミン酸)と結合させて不活性な結合体に変換し、一時的に貯蔵します。さらにILR1という酵素が、それらの結合を切断することでIAAを再生していること(リサイクル)を明らかにしました。また、リサイクルされなかったオーキシン-アミノ酸結合体は、DAOという酵素が酸化し、分解へと導くことを示しました。オーキシンは、これまでに植物の成長や病害抵抗性・追熟・発根など様々な作用をもつことが知られており、オーキシンの不活性化経路をコントロールできれば、農作物やバイオマスなどの増収に向けて大きな一歩となる発見といえます。

  詳細は、以下をご参照ください。

※本国際共同研究グループには、本学連合農学研究科の青井勇輝さん(現在、フランス国立農業・食糧・環境研究所(INRAE)所属)、本学農学府農学専攻生物制御科学プログラム2年の比良隼さんが、共同研究者として含まれます。

関連リンク(別ウィンドウで開きます)

•東京農工大学 笠原博幸教授 研究者プロフィール
•東京農工大学 笠原博幸教授 研究室WEBサイト
•笠原博幸教授が所属する 東京農工大学農学部応用生物科学科

 

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