令和4年度大学院連合農学研究科修了式告辞

令和4年度大学院連合農学研究科修了式告辞です。

学長告辞

　本日、東京農工大学大学院連合農学研究科を修了され、博士学位を授与された皆様、誠におめでとうございます。ことに皆様は、この3年以上にも及ぶ、今まで誰も経験したことのないコロナ禍によって、大きな不自由を強いられる中研究活動を推進するためには、とてつもなく大きな困難を乗り越えなければならなかったはずです。それに屈することなく日々の研究に全力で取り組み、その成果として学術の新しい世界の一端を切り拓かれたことは誠に素晴らしいことだと思います。

　皆様がこれからますます研鑽を重ね、新たな道を拓いて行く上で、この学位の取得は大きな礎であることは間違いありません。それに加え、いま世の中が抱える様々な問題、あるいはまだ誰も気づいていない自然現象や社会を動かす本質について、自らの洞察力でそれらをしっかり見つめることも欠くことのできない大切な部分です。これからの世の中はどうあるべきか、そこに自分はどのような役割を果たせるのだろうかといったことに対し、はっきりと答えを示せる構想力と実践力を持ち、それを実現していくことこそ博士に求められる重要な部分です。このような活動を通じ、思いを実現することは、実際には決して簡単なことではなく、おそらく次々と予想もできないような困難にもぶつかるものだと思います。しかし皆様は学位取得の過程で、思い通りにならないこと、なかなかうまく行かないことについても数多くの経験をされてきたことと思います。それは、たとえ大きな壁であっても必ず乗り越えられるという強い信念に支えられた、目標を実現する力となって自らを奮起させることができるはずです。

　そして、同時に忘れてはならないことは、皆様を常に支える身近な人たち、さらには広く社会に対する感謝の気持ちです。博士となるためには、指導教員を始めとする研究室や学会関係者、家族や友人の支えもかけがえのないものであったはずです。さらには研究活動に没頭できる貴重な機会を与えられたことは、目には見えない多くの人たちの支えがあってこそのことです。このことを忘れないことが、様々な困難に直面している人の気持ちを理解し、できる限り手を差し伸べようという行動にも繋がります。その結果、きっと皆様は人を惹きつけ、多くの人を巻き込んで行く強い推進力をもって、本当になすべき大切な事に、勇気をもって向かって行けるはずです。これこそ、本当に力のある博士の姿であり、皆様自身の今日からの姿であって欲しいと思います。博士とは、これまでの世界、これからの世界をしっかり見極め、世の中が必要とする大事なことに対し、信念と責任を持ち、自分の役割をしっかり果たすことができる人のことだと私は考えています。

　いま目の前にある学位記を手にされ博士となられた皆様が、これからさらに、自分自身でもまだ気づかぬより大きな力を発揮し、未来に向けて無くてはならない人として活躍されることを心より願っております。

　皆様への大いなる期待を込めて、心からのお祝いの言葉と致します。
　本日は誠におめでとうございます。

令和5年3月15日
東京農工大学　学長　千葉一裕