ハダニの糸の遺伝子を同定〜クモ牽引糸と大きく異なる性質をもつハダニ糸の遺伝子を解明、害虫ハダニの糸が人類に新しい産業応用分野を拓く可能性を与えてくれる〜

ハダニの糸の遺伝子を同定
〜クモ牽引糸と大きく異なる性質をもつハダニ糸の遺伝子を解明、害虫ハダニの糸が人類に新しい産業応用分野を拓く可能性を与えてくれる〜

 慶應義塾大学先端生命科学研究所の荒川和晴准教授、森大特任助教、河野暢明特任講師、東京農工大学大学院農学研究院の鈴木丈詞准教授、流通経済大学経済学部の後藤哲雄教授および法政大学自然科学センター/国際文化学部の島野智之教授の研究グループは、植物に寄生するハダニの糸を構成するシルクタンパク質(フィブロイン(※1))の遺伝子を同定しました。ハダニは農業害虫の代表格である一方、カイコやクモの糸よりも細いナノスケールかつ硬い糸を出す生物としても知られています。2011年に Nature 誌でハダニのゲノム論文が発表され、その全塩基配列から複数のフィブロイン様遺伝子が予測されていましたが、タンパク質レベルでの解析は進められていませんでした。本研究グループは、ゲノムが読まれた種と近縁 2種(カンザワハダニおよびミカンハダニ)を材料とし、トランスクリプトーム(※2)の配列決定と糸のプロテオミクス(※3)を組合せた比較ゲノミクスおよびマルチオミクス解析により、ダニ糸を構成する 2つのフィブロイン遺伝子を同定しました。驚くことに、これら遺伝子は、これまで予測されていたいずれのものとも異なりました。また、これらのアミノ酸組成とタンパク質の二次構造には同じく硬いクモの装飾糸や繭糸と類似する部分があり、これはダニ糸の機械特性を一部反映している可能性があります。本研究でダニ糸のフィブロイン遺伝子が同定され、その全長配列が入手可能になったことにより、節足動物が紡ぐ糸の進化生物学的研究への展開だけでなく、それを標的とした新規農薬の開発や、ダニ糸の大量生産による産業応用への展開も期待できます。

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