プラスチック摂食により、海鳥は化学添加剤に汚染される

プラスチック摂食により、海鳥は化学添加剤に汚染される

 国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院の高田秀重教授と国立大学法人北海道大学大学院獣医学研究院毒性学教室の田中厚資博士、同大学院水産科学院の綿貫豊教授をはじめとする国際研究グループは、化学添加剤を含むプラスチックの摂食が海鳥の組織での添加剤の蓄積につながることを立証し、海鳥にとって摂取したプラスチックが化学汚染の直接の原因になることを明らかにしました。プラスチックの添加剤には内分泌攪乱物質が含まれ、海鳥の繁殖と発達に悪影響が考えられます。したがって、海洋プラスチックは、海鳥個体群、特にすでに減少している個体群の保全状況に重大な影響を与えている可能性があります。

本研究成果は、Current Biology(1月30日付)に掲載されます。
報道解禁日:2020年1月31日(金) 午前1時00分(日本時間)
タイトル:In vivo accumulation of plastics-derived chemicals into seabird tissues.
URL:https://www.cell.com/current-biology/home

海洋に存在するプラスチックには様々な化学物質が含まれ、そのなかには海鳥の繁殖や発達に悪影響を与える可能性のある内分泌攪乱化学物質が含まれます。しかしながら、これまでの研究では「プラスチックに含まれる化学物質が、プラスチックを摂食した生物へ移行、蓄積するのか」について間接的な証拠しかなく、明確にはなっていませんでした。本研究では、プラスチック由来の化学物質の蓄積について、直接的な証拠を得ることを目的として、環境中で起こりうる条件下での海鳥への投与実験を行いました。

本研究では、5種類の化学添加剤(1種類の難燃剤と4種類の紫外線吸収剤)を添加したプラスチック粒5個(合計0.4g)を、国内の島に生息するオオミズナギドリ(学名:Calonectris leucomelas)の雛に投与しました。プラスチックに添加した化学物質の濃度は野生の海鳥の胃から見つかるプラスチックに含まれている濃度と同程度に調整し、自然界で起きていることを再現しました。そして、5種類の化学添加剤を含んだプラスチック粒を与えた雛の肝臓、脂肪、および尾腺ワックス(鳥のしっぽの付け根にある脂分泌腺から分泌される脂)を分析したところ、これらの組織にプラスチック由来の化学添加剤が含まれていることがわかりました。

プラスチックを投与した海鳥の組織における化学添加剤の蓄積は、プラスチックを摂食しない場合に餌由来などで起こる蓄積に比べ、91倍から120,000倍にも達しました。この実験により、プラスチックを摂食することで化学添加剤が海鳥の体内に移行、蓄積することの直接的な証拠が得られ、海洋プラスチックが海鳥における重要な化学汚染の原因になっている可能性が明らかとなりました。

さらに本研究では、環境中の海鳥での実態を掴むため、ハワイ諸島の野生の海鳥6種類の尾腺ワックスを採取し、分析しました。その結果、これらの種の中で最もプラスチック摂取量の多いアホウドリ2種では尾腺ワックス中に化学添加剤が検出された一方、プラスチック摂食がほとんどない他の4種では検出されませんでした。これらのことは、実際の環境中ですでに海洋プラスチックによる海鳥の化学汚染が進行していることを示すと考えられます。

海洋プラスチックには、この実験で使用した5種類の化学添加剤以外にも多くの種類の有害な化合物が含まれています。海洋プラスチックによって生じる複合的な化学物質の汚染と、その毒性や生態系への影響に関して、今後調査を進めていく必要があります。

プラスチックは、海洋の表層から深海まで、世界のあらゆる海域で発見されています。海鳥は、食物と間違えてプラスチックを摂取します。プラスチック摂食による影響として、ひとつは腸閉塞を引き起こしたり消化管を狭めたりという物理的な影響が考えられますが、本研究により、さらに海洋プラスチックに含まれる化学物質による毒性影響の懸念があることが明らかとなりました。

現在までに、すべての海鳥種の78%でプラスチックの摂食が確認されており、これは2050年までに99%に達するとも予想されています。現在、海鳥の個体数は世界的に減少していっており、28%は地球規模の絶滅危惧種と考えられています。海洋プラスチックの長期的な影響は、これらの危機をさらに悪化させる可能性があります。

本研究は、東京農工大学、北海道大学、ハワイ・パシフィック大学等による国際共同研究チームで実施し、JSPS科研費(No.16H01768)、特別研究員奨励費(No.17J05875)と環境省環境研究総合推進費(SII-2-2)の助成を受けたものです。また、本研究で用いた実験手順は北海道大学の動物実験委員会によって承認されたものです。

◆研究に関する問い合わせ◆

東京農工大学大学院農学研究院
物質循環環境科学部門 教授
高田 秀重(たかだ ひでしげ)
E-mail:shige(ここに@をいれてください)cc.tuat.ac.jp

北海道大学大学院獣医学研究院
獣医学部門 教授
石塚 真由美(いしづか まゆみ)
E-mail:ishizum(ここに@をいれてください)vetmed.hokudai.ac.jp

北海道大学大学院獣医学研究院
毒性学教室 博士研究員
田中 厚資(たなか こうすけ)
E-mail:kosuke.t0423(ここに@をいれてください)gmail.com

北海道大学大学院水産科学院
海洋生物資源科学部門 資源生物学分野 教授
綿貫 豊(わたぬき ゆたか)
E-mail:ywata(ここに@をいれてください)fish.hokudai.ac.jp

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