平成24年度 大学院連合農学研究科入学式

平成24年度大学院連合農学研究科入学式の式辞です。

平成24年4月13日
東京農工大学長 松永 是

東京農工大学連合農学研究科に入学された皆さん、おめでとうございます。教職員を代表してお祝い申し上げます。また、今まで陰になり日向になり支えてこられたご家族はじめ関係各位の方々にも心よりお慶び申し上げます。今後も、本学の学生として様々な経験をし成長していく彼らを温かく見守ってくださるようお願いいたします。

本年度の新入生は、生物生産科学専攻12名、応用生命科学専攻6名、環境資源共生科学専攻14名、農業環境工学専攻七7名、農林共生社会科学専攻5名の合計44名です。この中には、留学生8名が含まれており、出身国は6ヵ国になります。この44名の皆さんが、東京農工大学連合農学研究科の新しい芽として、葉を広げ、花を咲かせ、そして種となってまた自分自身の根を張り、成長していくことになります。これから本学で過ごす日々が、皆さん自身が将来どのような木になるかに大きく係わってきます。のびのびとご活躍いただきたいと、教職員一同心より願っております。

ご存知の通り、現代社会は科学技術の進歩とともに、環境、エネルギー、食糧、健康、安全・安心、災害等の問題をはじめ人類の存続に係わる地球規模の危機的問題を多く抱えるようになりました。その上、我が国には昨年の震災からの復興という喫緊の課題もあります。こうした諸問題への対応には、我々科学者が積極的に携わっていく、というよりむしろ先導していかなくてはなりません。殊に農学分野は、環境・資源・食糧のいずれの側面から見ても、人類の存続に最も直接的に係わる学問分野と言えます。本学の基本理念は、『世界の平和と社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献するとともに、課題解決とその実現を担う人材の育成と知の創造に邁進する』ことであり、1874年の創立以来、日本の近代化・国際化に様々な面で貢献する科学者を輩出すべく進化し続けてまいりました。そしてこの連合農学研究科は、茨城大学及び宇都宮大学と、大学という枠組みを超えて連携し、各々の研究の特性を活かし、また補いつつ、更に洗練されたより有用な最前線の農学研究へと発展させるために創設されたもので、持続発展可能な循環型社会の構築の牽引力となる人材を育成するのに最適な場となっています。皆さんが人類の共存と福祉に貢献する国際的オピニオンリーダーとなる手助けをする、それがこの研究科の役割です。そこで、今後皆さんにどのような心構えを持っていただきたいか、その一つとして今日は『失敗』という事についてお話ししたいと思います。

科学者という仕事には、失敗がつきものです。人は皆失敗したくはありません。特に最近は、失敗を隠したり、失敗を恐れ安全なことしか行わないという傾向にあるように思います。もちろん、我々も皆さんに失敗してほしいと思っているわけではありません。しかし、高い理想を持って研究を進める上では、一度も失敗をしないという事はありえないのです。実験がうまくいかない、望んでいる成果が得られない、どのように研究を進めればよいのかわからない、そのような時、是非トーマス・エジソンのこの言葉を思い出してほしいと思います。

『私は失敗はしていない。これではうまくいかないという発見を一万回したのだ。』
(I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.)

意欲的に生きている限り、無駄なことは何一つありません。失敗と思われることも、そこに意味を見出し次につなげることができます。信念を持って、計画を立て、失敗を恐れず、あきらめず、繰り返し挑戦し、着実に一つ一つ実験を進め、成果をあげ、それを社会の益として還元する、それが科学者なのです。皆さんは、これからその仲間入りをすることになります。この研究科での日々は、修了後に最前線で活躍するための準備段階です。大学という枠を超え、国籍を越え、地球的規模の視点を持つことができる、この連合農学研究科で研究をするからには、こうした特色をぜひ有効に活用し、幅広い経験をしていただきたいのです。柔軟な思考、吸収力、多角的視野、客観性、挑戦的姿勢、不撓不屈の強い心、高感度な感性、いずれもこの研究科にいる間に身に付けることができるものであり、皆さんの将来の宝となるはずです。そして、グローバルな問題解決に中心的役割を果たし、循環型社会・持続発展可能な社会の構築に向けて大きく寄与する、質の高い研究者になっていいただきたいと思います。

最後にもうひとつ、当たり前のようですがとても大切なことがあります。研究は、時に精神的にも身体的にも厳しいものになります。健全な心と体がなくては、学問の道も続けることができません。特に、地方や海外から来られた方々は慣れない地でいろいろと不安なこともあるかと思います。健康に十分留意して、実り多い大学生活を送ってください。もちろん我々も、まだまだ現状で満足しているわけではありません。さらに発展し、さらに力強く皆さんのバックアップができるよう、常に最大限の努力を続けていきます。本日ここに集まった皆さんが、今日の気持ちを忘れず、明日を担う社会人として大きく成長されんことを願い、また皆さんが本学の一員となることにあらためて歓迎の気持ちをお伝えして、式辞とさせていただきます。

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