2013年8月12日光の電場の向きと波形を自在に制御することに成功

光の電場の向きと波形を自在に制御することに成功
~光による物質操作の新しい可能性に道を開く~


JST 課題達成型基礎研究の一環として、東京大学 大学院理学系研究科 五神 真 教授および 東京農工大学 大学院工学研究院 三沢 和彦 教授 らは、光を用いて物質を分子原子レベルで操作するために重要な、光の持つ電場の向きと大きさの時間変化を自在に制御できる手法を、世界で初めて実現しました。

光は電場と磁場の振動が空中を伝わる波です。一方、物質はイオンや電子からできています。光が物質に当たると、物質中のイオンや電子は光の電場に沿った方向に動かされます。この電場の向きや大きさを自由に変化させられれば、イオンや電子の運動を自在に操作できると考えられています。このような光を当てることで物質の組成や構造を精密に分析したり、物質を光で変化させたりすることが可能となります。ところが、光の電場の向きと大きさの時間変化を完全に自在に制御するのは、技術の進歩が目覚ましい可視光の周波数領域においてすら前例がありませんでした。
今回、目で見える可視光よりも100分の1ほど低い周波数を持つテラヘルツ光の自在な制御に成功し、光の電場の向きや波形を完全に制御できることを示しました。今回研究グループは、テラヘルツ光を発生させるために結晶に照射する可視光レーザーの振動方向と振幅の時間変化を制御することで、テラヘルツ光の電場の向きと時間波形を自在に制御することに成功しました。また、目的のテラヘルツ波を得るために可視光レーザーパルスに必要な条件を求める逆問題を解くアルゴリズムも新たに考案しました。今回の成果は、光を自在に制御する手法を開拓するという基礎的意義にとどまらず、テラヘルツ光の応用の可能性を大きく広げるものです。

本研究は、 東京農工大学の佐藤 正明 氏 、東京大学の樋口 卓也 氏、神田 夏輝 氏の3名の博士課程大学院生(当時)が中心に連携協力のもとで研究を進めたものです。

印刷版では、当研究が、表紙に取り上げられました。
Nature Photonicsのホームページ(別リンクで開きます)


同ホームページのNEWS&VIEWSという紹介記事。
Nature Photonicsの紹介ページ(別リンクで開きます)

CONTACT