自由成形が可能な電解質素材の開発に成功

自由成形が可能な電解質素材の開発に成功

東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門の敷中一洋(しきなかかずひろ)助教と大学院生物システム応用科学府の富永洋一(とみながよういち)准教授は、イオン液体(注1)に円筒状粘土鉱物を添加したゲルを開発しました。このゲルは振とうで液体化し、逆に静かに置くことで固体化し、両方を行き来することが可能でかつイオン伝導性が高いこれまでにない性質をもつ電解質素材です。本成果は固体でありながら自由な成形が可能な電解質素材をもたらし、エネルギー分野・エレクトロニクス分野への応用が期待されます。本研究はJSPS 科研費 26870179,16H04199の助成を受けたものです。

本研究成果は、Chemical Communications(12月12日)に掲載されました。
http://pubs.rsc.org/en/content/articlehtml/2017/cc/c6cc07765j


<現状>

電解質素材は電池などに幅広く世の中に利用されています。現在主に用いられているのは液体系電解質ですが、密封が必要なため取扱いが煩雑になること、溶剤を使用した場合に発火などの危険性があることが課題となっていました。近年固体高分子電解質やゲル電解質など、液体系電解質の課題を解決できる新規素材の開発が進んでいますが、分子の運動性や界面の密着性によりイオン伝導性が低いことが課題となっています。

<研究成果>

円筒状粘土鉱物「イモゴライト」の水素結合性架橋によりイオン液体(注1)をゲル化し、高いイオン伝導性と擬塑性(注2)を有する電解質素材の開発を目指しました。実際に作成したゲルは、擬塑性に由来する流動に応じた可逆的固・液転移(チキソトロピー性)を示しながらも、イオン液体と同等の熱的安定性やイオン伝導性を有し、成形性に富んだ電解質素材としての利用が見込めます。

<今後の展開>

本研究成果を通じ、イオン伝導性や安全性に富みながらも成形性に優れた新規電解質素材が提案できます。今度はイオン液体の構成分の組成や他種イオンの導入を通じ電解質素材の性能向上や、電池・アクチュエータ用電解質への組み込みによるデバイス化に取り組んでいきます。

注1)イオン液体
100 ºC以下で液状である常温溶融塩。イオン伝導性・熱安定性・物質溶解性に富む。
特にイオン伝導性に優れ、電解質素材としての応用が期待される。

注2)擬塑性
流動・静置に応じて粘度が可逆的に低下・増加する性質。

図:イオン液体と円筒状粘土鉱物から成るゲル。振とうによる液体化と静置による固体化を繰り返す

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学研究院
応用化学部門 助教
敷中 一洋(しきなか かずひろ)
TEL/FAX:042-388-7406

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