「タンパク質を固定化できる高分子」の精密合成に成功 ~病気を自分で早期に発見できる社会の実現へ~

「タンパク質を固定化できる高分子」の精密合成に成功 
~病気を自分で早期に発見できる社会の実現へ~

 東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門の村上義彦准教授と同大学院博士後期課程在籍の木ノ下恵太大学院生の研究グループは、「タンパク質を固定化できる高分子」の精密な合成と材料化に成功しました。この技術によって特定の分子と結合するタンパク質(例えば抗体など)を固定化した高分子は、高感度な病気診断を可能にする次世代バイオセンサーの実現に貢献することができます。バイオセンサーの素材として利用可能なこのような機能性高分子の開発は、「自宅に備わった簡便なバイオセンサーによって、誰でも簡単に自己診断できる社会(=病気を自分で早期に発見できる社会)」の実現につながると期待されます。

本研究成果は、高分子化学の専門誌Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry電子版に2017年2月10日に掲載されました。
http://dx.doi.org/10.1002/pola.28504

<現状>

現在、さまざまな機能性材料を作るための構成要素として、両末端にヒドロキシ基(-OH)を有する高分子「両末端OH型テレケリック高分子」が利用されています(図1)。特定の分子を認識・結合するタンパク質をこの高分子に固定化し、材料(ゲル)に加工することによって、バイオセンサーを作製することが可能です。両末端OH型テレケリック高分子は、高分子の両端の活性を維持したまま精密な合成が可能なリビングラジカル重合によって合成することができます。代表的なリビングラジカル重合であるRAFT重合(可逆的付加-開裂連鎖移動重合)は、(1) 分子量の分布が狭い高分子を合成可能である、 (2) 適切なRAFT剤(RAFT重合に必須の連鎖移動剤)を選択することによって、幅広いモノマー(原料)の重合を制御することが可能である、(3) 水やイオン性物質の影響を受けにくいため、水系における重合や官能基を有するモノマーの重合に対しても適用することができる、(4) 反応系にハロゲンや重金属を含まないため環境負荷が非常に低い、などの利点があります。しかし、「両末端OH型テレケリック高分子」の合成に必要な「両末端OH型RAFT剤」に関しては、(1) RAFT剤の両末端から伸長させることしかできない(特定の構造しか作ることができない)、(2) 適用可能なモノマーの種類が少ない、(3) 得られた高分子が分解しやすい、などの問題点がありました(図2)。

<研究成果>

本研究グループでは、「ジチオベンゾエート構造」を有する両末端OH型RAFT剤(HECPHD)を新たに合成し、数多くのモノマーを用いたRAFT重合に成功しました(図2)。さらに、「反応性が高い活性エステル」を分子構造内に有する両末端OH型テレケリック高分子(=タンパク質を固定化できる高分子)を合成し、その両末端に重合性反応基を導入して架橋剤として用いることによって、「タンパク質を固定化したゲル」の調製にも成功しました(図3)。

<今後の展開>

今回の研究成果によって、「さまざまな分子を固定化した高分子(および、その高分子を用いて形成したゲル)」を容易に得ることが可能になります。例えば、特定の分子と結合する性質をもった分子(抗体やDNAなど)を固定化した高分子をゲル化することによって、さまざまなバイオセンサーを作製することができます。このようなバイオセンサーを簡便かつ安価に作製し、家庭に普及することで、「誰でも簡単に自己診断できる社会(=病気を自分で早期に発見できる社会)」の実現が期待されます。

図1 両末端OH型テレケリック高分子の応用例(さまざまな材料の構成要素として利用可能)
図2 従来のRAFT剤と本研究で開発したRAFT剤(HECPHD)
図3 タンパク質を固定化したゲルの作製

◆ 研究に関する問い合わせ ◆
 東京農工大学 大学院工学研究院 応用化学部門
 准教授 村上 義彦(むらかみ よしひこ)
      TEL/FAX:042-388-7387
      E-mail:muray(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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