平成26年度卒業式・学位記授与式

平成26年度卒業式・学位記授与式の告辞です。

平成27年3月25日

東京農工大学長 松永 是


本日、東京農工大学を卒業される皆さん、そして大学院課程を修了される皆さん、おめでとうございます。本学教職員を代表し、心よりお祝い申し上げます。本年の学士の取得者は農学部315名、工学部611名、修士の学位取得者が工学府博士前期課程340名、工学府専門職学位課程37名、農学府修士課程170名、生物システム応用科学府博士前期課程70名、博士の学位取得者が工学府博士後期課程二十九名、生物システム応用科学府博士後期課程十六名、連合農学研究科博士課程26名、論文博士六名の計1620名となっています。今ここにいる一人一人の胸中は、「やり遂げた」という充実感と学生生活が終わってしまう寂しさ、そして四月からの新生活に対する期待や不安に満ちている事でしょう。しかしここでもう一度あらためて振り返ってみてください。こうして本日無事に卒業式・修了式を迎えることができたのは、ご家族やご友人、その他周囲の方々の有形無形の暖かいご支援があったからこそではないでしょうか。その方々への恩返しは、皆さんがそれぞれの進路でいきいきと活躍することにほかなりません。その気持ちを持ち続けて、今後の人生をしっかりと歩んで行ってください。また本日共に喜びを分かち合うこの1620名は、これからお互いの人生の良き仲間、共に困難に立ち向かうパートナーとなり、また切磋琢磨するライバルともなる人たちです。縁あってこの大学で培った関係を、今後も長くあたため大事にしていっていただきたいと思います。

卒業はよく『船出』に譬えられます。人生は何が起こるかわかりません。未知の大海に漕ぎ出すのに似て、将来の栄光を思い描いて意気揚々と出発するものの、航路は常に順風満帆なわけはなく、輝く朝日やこぼれ落ちそうな満天の星空が見られる日もあれば波の高い日も嵐の夜もあるからです。また、もちろん助けてくれる人はいても常に先導してくれる人はおらず、結局は一人で船を進めなくてはなりません。そして大学は港で、学生生活はその航海の準備をするための時間でした。予測のつかない航海を無事に乗り越えられるように、充分な燃料や水や食料を積み込み、風の向きや天候の変化を読み取って最適な進路を選ぶための知識や船を操る技術を習得し、皆さんも準備を整えてきたと思います。皆さんが過ごしたこの東京農工大学は、創基以来百四十年の長い歴史と伝統を引き継ぎながら、世界と競える先端研究力の強化と高度なイノベーションリーダーの養成に力を入れ常に進化し続きてきました。魅力的なカリキュラム編成や実力のある教授陣の布陣、産業界との連携や国際交流の推進など学生の皆さんにより良い環境を整え、多くのチャンスと、時に試練も与え、皆さんが世界という大海に漕ぎ出し、持続発展可能な社会の実現に向けて力を発揮するために必要な準備を整える手助けをしてきたつもりです。この大学で培われ磨かれた能力と受け継いだ精神は、皆さんの将来の様々な局面できっと大いに役に立つでしょう。どのような環境でもきっと存分に力を発揮し活躍できるはずです。そして忘れないでください。科学者として、研究者として、最も大切なのは真理の追究に対する情熱です。暗闇に迷い途方に暮れた時こそ、真理という灯を探し求めなければなりません。それこそあらゆる困難の中で唯一の救いとなるものです。 幻やまやかしの灯に惑わされないでください。 本物の灯を見分ける方法は、この学生生活を通して皆さんにもわかっているはずです。うつむいていては見つかりません。きっと見つかると信じて、恐れず慌てず熱心に目を凝らせば、小さくても必ず見えてきます。 そして一度見つけたら、決して目をそらさないように。そうすればきっと不安を乗り越え正しい航路を見出し、次の朝日を迎えることができるでしょう。自信を持って新しい世界に飛び込み、今の気持ちを忘れずに前へ進み続けて、もっともっと自分を高めていってください。そして皆さんの若い力で世界を動かしてください。

次に皆さんにお会いする時には、さらに成長した頼もしい姿を見ることができると期待しています。そして本学も皆さんの母校として誇れる心強い基柱となるよう、またいつでも皆さんのお手伝いが最高の形で出来るよう、色々な挑戦的取り組みやグローバルなイノベーションを推進して、世界に認知される実力ある大学づくりに一層の努力をしてまいります。これからも同窓会活動やそれぞれの仕事を通して互いの交流が有意義に深まることを願い、そして最後にもう一度皆さんの今後のご健闘・ご活躍を心よりお祈りし、告辞とさせていただきます。

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