キャビテーションの発生条件を解明

キャビテーションの発生条件を解明

 

国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院先端機械システム部門の田川義之准教授は、同大学院博士後期課程在籍の木山景仁氏、ユタ州立大学のTadd T. Truscott准教授らと共同で、キャビテーション(急減圧による気泡の発生・崩壊現象)の普遍的な発生条件を明らかにしました。キャビテーションは頭部打撲による脳損傷、血栓の発生や人工弁近傍における血管内部の急激な圧力変動、バルブの急開閉による水道管の破裂などの一因となるため、この成果は安全なヘルメットや人工弁などの医工学機器開発における有用な指針になると期待されます。

 

本研究成果は、Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America (IF=9.661)(7月25日付:日本時間7月24日)に掲載されました。
URL:http://www.pnas.org/content/early/2017/07/21/1702502114 (別ウィンドウで開きます)

 

現状
 液体を充填した容器に衝撃を加えると、液体が急減圧されることにより、キャビテーションと呼ばれる発泡現象が生じます。気泡は発泡直後に激しく潰れる(崩壊する)ため、その衝撃で容器の破壊が引き起こされてしまいます(図1)。このようなキャビテーションによる破壊は、水道管や血管の損傷などの原因の一つです。また身近な例では、中身の入ったガラス瓶の口を手で強く叩くことでも、この効果を実感することができます(図1)。このような破壊現象を防ぐためには、キャビテーションの発生条件を正確に予測することが不可欠です。しかし、その方程式はこれまで解明されていませんでした。東京農工大学では、10マイクロ秒(100万分の1秒)毎に鮮明な連続画像を取得できるハイスピードカメラを用いた実験を重ね、この課題に取り組んできました。 

研究体制
 本研究は、東京農工大学大学院 田川義之准教授(工学研究院先端機械システム部門)、木山景仁氏(工学府博士後期課程在籍)が、ユタ州立大学 Tadd T. Truscott准教授、Zhao Pan博士、Randy Hurd氏、ブリガムヤング大学 Scott L. Thomson准教授、Naval Undersea Warfare Center David J. Daily博士との共同研究として実施しました。本研究は、JSPS科研費26709007、16J08521、17H01246の支援を受けて行われました。
 

研究成果
 液体が入った容器に加わる衝撃力を、液体にかかる加速度と捉え直すことで、液体中の圧力低下量を理論的に導き、液体の状態(飽和蒸気圧)と比較することで、キャビテーション気泡の発生条件を記述する方程式を新たに提案しました。加えて、ハイスピードカメラを行い、キャビテーション気泡の発生条件を、日本と米国の研究グループがそれぞれ異なる条件で調べ、提案した方程式との比較検討を行いました。本研究で提案した方程式は、衝撃力(加速度)の大きさ・液体の種類・液体の充填量・容器の材質、に対して幅広く対応可能な、普遍的なものであることが実験によって明らかになりました。この発見は、ガラス容器の破壊という身近な現象への理解を深めるだけでなく、類似の原理によって引き起こされる、流体機械や人体の損傷事故を防ぐ助けになることが期待されます。
 
今後の展開
 本研究で提案した方程式は、液体以外のものにも適用可能だと期待されます。たとえばゲル材料は、ヒトの体のモデルとしてしばしば利用されます。頭部打撲による脳損傷、血栓の発生や人工弁近傍における血管内部の急激な圧力変動など、急加速度によるキャビテーション発生が密接に関連する事柄は、人体内部でも起こり得ます。本研究を発展させることで流体力学だけでなく、医工学分野にも貢献できると考えています。

図1;ハイスピードカメラによる撮影結果(ガラス瓶を上から叩いた場合)。容器に加えられた衝撃では、容器は破壊されない(左から1枚目)。液中にキャビテーション気泡が生じ(同2枚目)、崩壊すると同時に、容器壁面に亀裂が入り(同4枚目)、破壊される(同5枚目)。*掲載論文より引用。

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学研究院先端機械システム部門 准教授
田川 義之(たがわ よしゆき)
TEL/FAX:042-388-7407
E-mail:tagawayo(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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