地球温室効果ガスである二酸化炭素を分離回収できる有用なハイブリッド分離膜材料を開発~分離性能におよぼす実ガスに含まれる不純物の影響を解明~

地球温室効果ガスである二酸化炭素を分離回収できる有用なハイブリッド分離膜材料を開発
~分離性能におよぼす実ガスに含まれる不純物の影響を解明~

国立大学法人東京農工大学大学院工学府応用化学専攻の兼橋真二(かねはししんじ)特任助教(生物システム応用科学府 荻野賢司研究室所属)とオーストラリア州立メルボルン大学化学工学科のSandra Kentish(サンドラ ケンティッシュ)教授は、世界的な環境問題である地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を選択的に分離回収できるハイブリッド分離膜材料を開発しました。開発にあたっては火力発電所から発生する燃焼排ガスや天然ガスに含まれる不純物成分がおよぼす材料性能への影響について詳細に研究し、その結果、不純物の影響の少ないハイブリッド分離膜材料を発見しました。本成果は、現在抜本的な地球温暖化対策として期待される二酸化炭素回収・貯留プロセスにおける高分子膜による二酸化炭素分離回収プロセスへの適用に大きく期待できます。本研究は、豪州メルボルン大学との国際共同研究成果であり、JSPS 科研費 26870179,16H04199、Scientific and Industry Endowment Fund (SIEF), Australiaの助成を受けたものです。兼橋真二特任助教はメルボルン大学のHonorary Fellowでもあります。

本研究成果は、Elsevierの科学誌「Journal of Membrane Science」(10月31日付)にオンライン掲載されました。
タイトル:Effects of industrial gas impurities on the performance of mixed matrix membranes(DOI: 10.1016/j.memsci.2017.10.056)また本研究成果の一部として、公益社団法人 高分子学会から高分子研究奨励賞(第66回 高分子学会年次大会(2017年5月29日-31日付)にて)が授与されました。

現状
世界的に深刻な環境問題である地球温暖化に対し、その原因とされる地球温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の削減と排出対策が急務とされています。これに対し、さらなる省エネルギー化やCO2が発生しない水素や自然エネルギーの有効利用が重要ですが、現在も排出されるCO2の抜本的対策が急がれます。現在、世界的に実証試験が進められている二酸化炭素回収・貯留プロセス(注1)は、大規模固定発生源から排出されるCO2を地中や海洋深くに貯留する抜本的な対策として注目されています。

研究成果
本研究では膜分離技術(注2)に着目し、多孔性ナノ粒子(注3)とポリマーからなるハイブリッド(複合)材料(注4)によるCO2分離材料を開発しました。これまで数多くの優れた分離膜材料が報告されていますが、実際の分離環境を想定した不純物を含む試験はほとんど行われておらず、今回初めて一連のハイブリッド分離膜におけるその影響を系統的に明らかにしました。一般に高分子分離膜材料は、水や酸性ガスなどの不純物存在下では、その膜分離性能を大きく低下することが知られています。今回、開発した多孔性有機高分子とのハイブリッド材料が金属有機構造体よりも不純物存在下での膜の分離性能低下が最も少ないことを見出しました。これにより、実際のガス分離プロセスでも有用なハイブリッド分離膜材料の設計指針を提供することが可能となり、分離材料開発に大きく貢献するものと考えられます。


今後の展開
今回開発した多孔性有機高分子を使用したハイブリッド分離材料が、実際の火力発電所から排出される不純物である水や窒素酸化物や硫化水素などの酸性ガス存在下でも、良好な分離性能を示すことが明らかになりました。これは現在抜本的な地球温暖化対策として期待される二酸化炭素貯留プロセスにおける高分子膜による二酸化炭素分離回収プロセスへの適用に大きく期待できるものです。今後、分離膜の薄膜化や実際の製品形態である分離膜モジュールの作製および現地での実証試験への展開が急がれます。本研究はCO2分離以外にも、クリーンエネルギーである水素精製、天然ガスやバイオガス精製にも応用展開できる技術です。

〈用語の解説〉
注1)二酸化炭素回収・貯留プロセス:
大規模固定発生源である火力発電所や製鉄所から発生するCO2を分離回収し、地中あるいは海洋に輸送し貯留するCO2の抜本的削減プロセス。
注2)膜分離技術:
分離の際に相変化や化学反応を伴わずに対象物を膜により分離する技術。他の分離技術に比べ設備の導入が容易であり、省スペースであることから、経済性の高いクリーンな分離技術として期待されている。
注3)多孔性ナノ粒子:
多数の微細な孔(あな)を有するナノサイズの粒子。その特徴から吸着、分離、センサーや触媒としての利用が期待されている。
注4)ハイブリッド材料:
ポリマーと異なる成分(例えばナノ粒子)からなる複合材料。コンポジット材料という場合もある。

図1 多孔性ナノ粒子とポリマーからなるハイブリッド分離膜材料を開発。膜分離法は他の分離技術に比べ経済性の高いクリーン分離技術である。今回開発した多孔性有機高分子とのハイブリッド分離膜材料は、実際の分離環境に含まれる水や酸性ガス存在下でも優れた耐性(膜分離性能低下の大幅な抑制)を示した。今後、実際の製品形態である分離膜の薄膜化や分離膜モジュールの作製および現地での実証試験へと展開していく。本研究はCO2分離以外にも、クリーンエネルギーである水素精製や天然ガス精製にも応用展開できる技術である。

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学府応用化学専攻 荻野賢司研究室
特任助教 兼橋 真二(かねはし しんじ)
TEL:042-388-7212 FAX:042-388-7404
E-mail:kanehasi(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

Sandra Kentish, Head of the School of Chemical and Biomedical Engineering, Professor,
University of Melbourne, Australia
TEL:+61-8344-6682
Email:sandraek(ここに@を入れてください)unimelb.edu.au

◆取材に関する問い合わせ◆
東京農工大学総務部総務課広報・基金室
TEL:042-367-5930
E-mail:koho2(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

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