2012年05月15日:細胞内のオルガネラを形作る仕組みを使うことで新たなナノチューブの合成に成功

細胞内のオルガネラを形作る仕組みを使うことで新たなナノチューブの合成に成功についてのご案内です。

2012年5月15日
国立大学法人東京農工大学

細胞内のオルガネラを形作る仕組みを使うことで
新たなナノチューブの合成に成功


東京農工大学(学長:松永是、本部:東京都府中市)では、大学院工学研究院生命機能科学部門の 田中祐圭特任助教が、英国リーズ大学のSarah Staniland講師(物理天文学部)らとの国際共同研究により、ヒトの細胞内小器官(オルガネラ)を形作る仕組みを利用して、様々な機能を持った粒子を含むことができる新たなナノチューブの合成に成功しました。
これまでに多様なナノサイズスケール(1mmの100万分の1)の粒子が研究・開発されていますが、これらのナノ粒子を利用・応用する際に(例えば小型装置の一部の経路にナノ粒子を組み込んで利用する場合)、それらの粒子をチューブなど特定の構造内に入れる必要があります。
今回の研究により、穏やかな条件で、様々な粒子に適用可能な、ナノ粒子が直線状に配列した脂質ナノチューブの合成が可能となりました。生物にとって害が少なく、内部の材料を自在に選択できる機能的な脂質ナノチューブの合成に成功した本研究成果は、今後医療応用・環境計測を含めて様々な分野で活用されることが期待されます。
なお、英国リーズ大学からは、2012年5月3日付けでプレスリリース(別紙参照(注))され、英国BBC Newsなどで取り上げられています。
(注)別紙については、英国リーズ大学ウェブサイト(別ウィンドウで開きます。)のプレスリリースをご覧ください。

◆概 要◆
ナノ粒子は、一般的な大きさの粒子とは異なる特有の性質を示すことから、様々な分野で研究・利用が進められています。しかしながら、多くのナノ粒子は容易に凝集してしまうことや生体に対して毒性を示すことなどの問題に加えて、その特性を保持したまま、より複雑な構造内に組み込むことが非常に困難でした。
一方ヒトなどの高等生物は、細胞の外から中へ様々な分子を取り込むために、細胞膜を陥入(エンドサイトーシス)し、細胞内小器官(オルガネラ)を形作る仕組みを持ちます。この細胞膜から膜を陥入・変形させるときに、Amphiphysin(アンフィファイジン)と呼ばれるたんぱく質が重要な役割を果たすことが知られています。一方で、細胞膜の主成分である脂質は、水の中で球形に集り、細胞膜に良く似た構造体(リポソーム)を形作ることが知られています。
これらをヒントに非常にシンプルな2ステップから成る新たな脂質ナノチューブの合成法を確立しました。具体的には、あらかじめ合成したナノ粒子を、球形のリポソームの中に入れます。次にアンフィファイジンたんぱく質と混合することで、リポソームを変形させます。これにより簡単で穏やかな条件で、蛍光を発するナノ粒子や金コロイド粒子を含んだ脂質ナノチューブの合成に成功しています。
今回確立した新たな脂質ナノチューブ合成法は、あらゆる機能性粒子を含むことが可能であり、今後、医療・診断・環境の計測装置内部における情報を伝達する回路や、目的の反応を触媒する部品として、様々な分野で応用されることが期待されます。

本研究の詳細は、2012年3月16日、Small誌(IF: 7.333)にオンライン版にて先行発表されました。
論文名:Fabrication of Lipid Tubules with Embedded Quantum Dots by Membrane Tubulation Protein(膜をチューブ状に変形するたんぱく質を用いた量子ドットを含んだ脂質チューブの創製) 雑誌名:Small, 著者:Masayoshi Tanaka, Kevin Critchley, Tadashi Matsunaga, Stephen D. Evans, Sarah S. Staniland

◆付 記◆
本研究は、英国Royal Society よりNewton international fellowshipsとして助成されたものです。

◆本件に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学研究院生命機能科学部門 特任助教 田中祐圭
TEL:042-388-7021 FAX:042-385-7713

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