平成25年度 入学式

平成25年度入学式の式辞です。

平成25年4月5日
東京農工大学長 松永 是

東京農工大学に入学された皆さん、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。また、今まで陰になり日向になり支えてこられたご家族はじめ関係各位の方々にも謹んでお慶び申し上げます。本日こうして入学の日を迎え、一つまた人生の階段を上った姿をご覧になって、感慨もひとしおのことと存じます。今後も、本学の学生として様々な経験をして成長していく彼らを温かく見守ってくださるようお願いいたします。

本年度の新入生は、学部では、農学部が328名、工学部が613名で合計941名です。大学院は、工学府・農学府・生物システム応用科学府及び連合農学研究科の4つで構成されており、生物システム応用科学府内に設置されている早稲田大学との連携による共同先進健康科学専攻も全てあわせますと、博士前期課程・修士課程・専門職学位課程660名、博士後期課程109名となります。学部・大学院全体を合わせた新入生の総計は1710名で、この中には、アジア、アフリカ、南アメリカ、ヨーロッパ各地からの留学生72名が含まれております。この1710名の皆さんがこれから本学で各々の夢に向かって切磋琢磨していく、いわば同志となります。互いに良い影響となるよう精一杯努力し、数年後、更に大きく羽ばたいていってほしいと切に願っています。

それではまず、皆さんがこれから過ごすこの東京農工大学について少しお話させていただきたいと思います。自分たちの大学はどのような大学でどのような特色があるのかしっかり認識しておくと学生生活をより有意義に過ごすことができるので、聞いてください。本学は「世界の平和と社会や自然環境と調和した科学技術の進展に貢献するとともに、課題解決とその実現を担う人材の育成と知の創造に邁進する」という基本理念のもと、1874年の創基以来、日本の近代化・国際化に様々な面で貢献する科学者を輩出すべく、進化し続けてまいりました。すべての産業の基幹である農学と工学の2分野に加え、その2つを併せ持つからこそ可能な融合領域にもフィールドを発展させ、「持続発展可能な社会の実現」、「循環型社会の構築」を目標とした研究や人材育成に全力で取り組んでおります。目標・使命のためには既成概念や枠組みに囚われず柔軟に且つ信念を持って新しいことに挑戦するという姿勢は、本学の特色であると同時に強みでもあり、様々な取組みとしてあらわれています。例えばリーディング大学院プログラムというものがあります。これはグリーン・クリーン食料生産を支える実践科学の博士課程教育を農工融合・5年一貫で推進するという教育プログラムで、昨年全国に先駆けて本学に導入することを決定しました。また他機関や他大学との連携、民間企業との共同研究や海外との交流も積極的に行っており、一方でテニュアトラック制度や女性未来育成機構の機能充実に力を入れるなど、常に自分たちの研究・教育活動の多様性と公共性を意識して推進しています。こうした先進的な取組みを果敢に取り入れることによって、真に社会に貢献することのできる研究を進め、同時に皆さんが人類のより良い未来づくりの牽引力となるよう手助けをする、それが本学の役割です。

そこで、これから本学で学ぶ皆さんに、一言申し述べます。「学びて思わざれば則ち罔し。 思いて学ばざれば則ち殆し。」という孔子の言葉はご存知ですね。学部に入学された皆さん、大学での教育は高等学校までの教育と大きく異なります。今までのように答えを教えてもらうことを待っていてはいけません。自主的に考え、試行錯誤し工夫を重ね、挑戦し経験してそこから学びとり、更に探求を進めていかなくてはならないのです。教えを受けるばかりで何も自分で考えようとしなければ、真の知識を得てその道に明るい人間になることはできません。学生が主体であること、それが大学です。学生主体というのは学生が何もしないお客様でいいということではありません。大学は学生が成長する手助けをするものであり、成長する努力をするのは学生自身である、ということです。と同時に、自分ひとりで考えるばかりで学ぶことをしなければ、独り善がりになって危険です。広く学び、自分で考える。本学在学中にこの姿勢をしっかりと培うことによって、知識と行動力を兼ね備えた有用な人材となり、大学での4年間を終えた後の進学・就職、どの進路においても活躍することができるようになります。

大学院へ入学される皆さんは、この基本姿勢はしっかり身に付けたうえで、更に深く専門的な研究の道へと入ることになります。だからと言って、自分のやっている事だけに視野を限定して集中するあまりに外界を遮断するようなことになってはいけません。今まで以上に教員や仲間・先輩、周囲の助言に耳を傾けるのはもちろん、他分野の知識・考え方、歴史的背景や社会的要素、国際情勢、あらゆることを学び、勘案し取り入れながら進まなければ、今後みなさんの前に幾度となく立ちはだかるであろう壁を乗り越えることはできません。先程申し上げた本学の特色を思い出してください。柔軟な対応力と信念を持って挑戦する姿勢、これを本学で学ぶ皆さんにもぜひ身に付けてほしいと思います。

皆さんは、人類の未来を担う存在です。現在地球が置かれている状況は、決して健全で安泰なものではありません。人類の進化と科学技術や経済の発展に伴って起きてきた環境、資源、エネルギー、食糧、災害、健康等の多くの問題が複雑に作用しあい、人類や地球全体の存続を加速度的に危うくしています。そのベクトルを変え、問題を解決していくにはどうしたらよいのか。そのためには科学技術の力が、我々科学者の生み出す新しい知の創造、つまりイノベーションが必要不可欠なのです。もちろん一朝一夕に解決できるものではないでしょう。しかし我々は人類が自然環境と共存しながら他者への思いやりを持って美しく豊かに発展していくことのできる社会をつくるために全身全霊で貢献し、またその任を未来ある若い皆さんに引き継いでいただかなくてはなりません。本学に入学し科学の道に進むことを選んだ皆さんは、平和で持続発展可能な社会の実現に貢献する、つまり未来を創るという大きな役割を担っているのです。皆さんのこれからの努力が、皆さんひとりひとりの人生と人類全体の幸せにつながります。健闘を祈ります。

最後にもうひとつ、当たり前のようですがとても大切なことを申し添えます。学術研究の道は、時に精神的にも身体的にも厳しいものになります。健康な心と体がなくては続けることができません。特に地方や海外から来られた方々は、慣れない地でいろいろと不安なことも多いかと思います。健康に十分留意して、実り多い大学生活を送ってください。 本学も、さらに力強く皆さんのバックアップができるよう、あらゆる面で常に最大限の努力を続けてまいります。本日入学される皆さんが、今日の気持ちを忘れず夢に向かって大きく成長されることを願い、また、皆さんが本学の一員となることにあらためて歓迎の気持ちをお伝えして、式辞とさせていただきます。

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