平成28年度 入学式

平成28年度入学式の式辞です。

平成28年4月7日
東京農工大学長 松永 是

東京農工大学に入学された皆さん、おめでとうございます。教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。また、今まで支えてこられたご家族はじめ関係各位の方々にも謹んでお慶び申し上げます。今後も、一歩一歩成長していく彼らを温かく見守ってくださるようお願いいたします。

本年度の新入生は、学部では農学部が318名、工学部が610名で合計928名、大学院は工学府・農学府・生物システム応用科学府及び連合農学研究科の4つで構成されており、生物システム応用科学府内に設置されている早稲田大学との連携による共同先進健康科学専攻もすべてあわせますと、博士前期課程・修士課程・専門職学位課程642名、博士後期課程132名となります。アジア、アフリカ、南アメリカ、ヨーロッパなど世界各地からの留学生は合わせて69名で、すべて含めた学部・大学院全体の新入生の総計は1702名です。新入生の皆さん、これからこの大学で送る日々は、皆さんの将来に大きく係わってきます。どうぞ心して、一日一日をどう過ごすかを自分自身で決め、大切にしてください。

『蒔かぬ種は生えぬ』といいます。『春植えざれば秋実らず』や『打たぬ鐘は鳴らぬ』ともいいます。英語の『Harvest follows seed-sowing.』や『You cannot make an omelet without breaking eggs.』という言い回しも聞いたことがあるでしょう。また、『道は近くとも行かなければ到達せず』や『玉琢かざれば器を成さず』という中国の言葉もあります。いずれも意図するところは同じで、最初に行動し手をかけ努力しなければ、後に良い結果を棚から牡丹餅のごとくに得ることはできない、ということです。今日、皆さんは受験を終え、大学という新しい世界に足を踏み入れました。受験勉強という種を蒔いて育て、合格という実りを収穫したのです。しかしもちろん皆さんの人生においての実りはこれがすべてではありませんね。それぞれの夢や理想、収穫したい実りはまだまだ先に沢山あるはずです。そしてまさに今、それらを心に描き、未来への不安と期待、そして意欲で心がいっぱいに溢れていることでしょう。植物の種類によって種を植えるのに適した時期があるように、皆さんが自分の将来のために種を植えるのにも最適な時期があります。それが、これから送る大学生活です。まず自分で種を植えましょう。そして大切に育て、実らせましょう。

皆さんが過ごすこの東京農工大学もまた、豊かな実りを収穫するために日々種を植え、育てています。本学は創基以来140年を超える長い歴史を通して、産業の基幹である農学と工学の2分野に加えてその融合領域にもフィールドを発展させ、一貫して自然と調和し文化的・経済的・環境持続的に発展し続けることのできる社会の実現という命題のために全力で取り組んできました。そしてその命題のためには既成概念や枠組みに囚われず信念を持って柔軟且つ果敢に挑戦するという本学の特色を活かして、世界と競える先端研究力の強化、産業界との連携、高度なイノベーションリーダーの育成のために様々な新しい取り組みをスタートさせ、ひとつひとつ丁寧に推進しています。このほか、食料、エネルギー、ライフサイエンスなどの分野の世界一流の教授を招聘するグローバルイノベーション研究院の設置、五年一貫のリーディング大学院プログラム、ASEANや中南米諸国との世界展開力強化事業、高度人材育成、若手研究者・女性研究者支援等に対応する画期的なプログラムやコンソーシアムを数多く立ち上げました。さらに少し先の話にはなりますが、岩手大学とは共同獣医学科に続き、大学院共同獣医学専攻を設置する準備をしています。また大学自体の組織改革、国内外の他機関や他大学との連携も積極的に行い、大学の活動をより効率的かつ社会的に変化対応させております。

これらの取り組みはすべて種です。そして『持続発展可能な社会の構築』つまり健康で美しい未来に役立つ知を創造すること、そしてその担い手として活躍する研究者を世に輩出すること、つまり皆さんがのびのびと成長して素晴らしい花を咲かせることこそが、私たち教職員、そして皆さんを見守る家族や社会全体の望みであり、実りなのです。本学はそのために様々な取り組みを通して、大地を耕し、水や栄養分を与え、寒暑や嵐から守る環境を整えているということにほかなりません。そして皆さんは私たちの提供する環境の中で、それを十二分に享受しながら、自分たちの種を蒔き、自分たちの実りを育て、収穫してください。楽しむことも大切、息抜きも必要、でも自分の育てている種が何なのかだけは忘れずに、多様な経験を通して多様な栄養を吸収し、嵐にも倒れぬ強く太い茎幹をしっかりと育てていただきたい。そうすれば皆さんの努力でいくらでも大きく豊かで美しい実りを収穫することができます。そして決して大げさではなく、地球の未来を救う人材として活躍することができるのです。世の中には、この地球には、資源や環境など解き難い問題がまだまだ沢山あります。他人事ではありません。皆さんこそそれらを解決することのできる能力とどのようにでも変化できる将来性をもった人材なのです。もう一度言います。蒔かぬ種は生えません。私たちと共にそれぞれの種を蒔き、育て、収穫しましょう。皆さんの大きな大きな実りを期待しています。

そして最後にもうひとつ、あたり前のようですがとても大切なことを申し添えます。学術研究の道は、時に精神的にも身体的にも厳しいものになります。健康な心と体がなくては続けることができません。特に地方や海外から来られた方々は、慣れない土地でいろいろと不安なことも多いかと思います。健康に十分留意して、実り多い大学生活を送ってください。本学もさらに力強く皆さんのバックアップができるよう、あらゆる面で常に最大限の努力を続けてまいります。本日入学される皆さんが今日の気持ちを忘れずそれぞれの夢に向かって大きく成長されることを願い、また皆さんが本学の一員となることにあらためて歓迎の気持ちをお伝えして、式辞とさせていただきます。

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