中温排熱を高効率蓄熱可能な潜熱蓄熱材(h-MEPCM)を流動化 ―高速蓄熱・放熱時の熱挙動と粒子状態を解明―
中温排熱を高効率蓄熱可能な潜熱蓄熱材(h-MEPCM)を流動化
―高速蓄熱・放熱時の熱挙動と粒子状態を解明―
国立大学法人東京農工大学大学院生物システム応用科学府 青木将大氏(一貫性博士課程)、同大学院工学府 青木琢登氏(博士前期課程)、城田尚也氏(博士前期課程修了)、同大学院工学研究院応用化学部門 伏見千尋教授と北海道大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター 中村友一学術研究員、Melbert Jeem特任助教、能村貴宏教授のグループは、約100-300℃の中温領域で潜熱蓄熱粒子を流動化したときの高速蓄熱・放熱の挙動を明らかにするとともにその際の粒子状態の変化を実験的に明らかにしました。本研究により、100-300℃程度の中温排熱を従来よりも高速に蓄熱・放熱することが可能になり、今後、さらなる中温排熱の有効利用や発電所の需要・供給変動の緩和につながることが期待されます。
本研究成果は、アメリカ化学会 Energy & Fuels誌(2025年12月4日付)に掲載されました。
論文表題:Thermal and Physical Properties of Sn@α-Al2O3 Microencapsulated Phase Change Material (MEPCM) in a Fluidized Bed
著者:Masahiro I. Aoki, Takuto Aoki, Naoya Shirota, Tomokazu Nakamura, Melbert Jeem, Takahiro Nomura, Chihiro Fushimi
URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.energyfuels.5c03913
DOI:10.1021/acs.energyfuels.5c03913
背景
世界で消費される約半分のエネルギーが排熱として失われており、そのうち89%以上が100–300℃に集中しています。そのため、排熱回収のための熱エネルギー貯蔵が注目されています。熱エネルギー貯蔵の中で、物質の相変化(注1)時に吸収・放出エネルギーを利用する潜熱蓄熱は、一定温度での放熱が可能であり、かつ高いエネルギー密度を持つ点から注目されています。これまで北海道大学では室温~800℃で作動温度をチューンアップ可能かつ、セラミックス粒子としてハンドリング可能な潜熱蓄熱マイクロカプセルh-MEPCM(Hokkaido univ. Micro-Encapsulated Phase Change Material)を開発し、高い熱伝導率と操作性を有することが示されていました。しかし、これまでの研究では、(1)固定層という方式で熱の出入りの速度が遅かったことが課題でした。また、(2) 高速な熱の出入りが可能な流動層(注2)の研究については、有機物を用いた100℃未満での実験にとどまっており、100℃を超える流動層潜熱蓄熱技術がないことが実用化に向けての課題となっていました。
研究体制
本研究は、東京農工大学大学院生物応用システム科学府食料エネルギーシステム科学専攻の青木将大氏、同大学院工学府化学物理工学専攻博士前期課程学生の青木琢登氏、城田尚也氏(当時)、同大学院工学研究院応用化学部門の伏見千尋教授、北海道大学大学院工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センターの中村友一学術研究員、Melbert Jeem特任助教、能村貴宏教授の共同研究チームで実施しました。研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS) 科学研究費補助金 基盤研究 C(JP22K04815)、谷川熱技術振興基金 令和6年度助成、令和環境財団 令和6年度助成、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) 次世代研究者挑戦的研究プログラム(Spring) FLOuRISHフェローシップ(JPMJSP2116)の支援を受けました。
研究成果
北海道大学で開発した、相変化物質としてスズを内部に用い、カプセル材としてα-アルミナ粒子を用いて液体時に溶けだすのを防ぐために保護したMEPCM粒子層(Sn@α-Al2O3、平均粒子径31 μm, 融点239 ℃)を、東京農工大学で流動化し、約100-300℃において安定して迅速な蓄熱・放熱が可能であることを実験的に明らかにしました。また、40時間まで流動化したときの粒子の様子と蓄熱性能について詳細を明らかにしました。
今後の展開
100-300℃程度の中温排熱を従来よりも高速に蓄熱・放熱することが可能になり、今後、さらなる中温排熱の有効利用拡大が期待されます。また、バイオマス発電所・地熱発電所・火力発電所などと統合することにより、排熱や余剰電力を蓄熱しておき電力不足時に放出することで、発電所の需要と供給変動の緩和につながることも期待されます。
用語解説
注1 )相変化
固体、液体、気体の間で変化すること。通常は大きな熱の出入りがあります。ここでは、固体↔液体間の変化に伴う、熱の出入りを有効利用しています。
注2 )流動層
容器内の固体粒子の下から気体や液体などの流体を吹き込むことで、粒子が液体のように浮遊・流動する状態やその装置を指します。固体粒子を流動化しない固定層に比べて、装置内で固体粒子の混合が促進されることから、熱や物質の移動が大幅に速くなる利点がありますが、粒子の損傷を伴いやすいということがあります。
◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学大学院工学研究院
応用化学部門 教授
伏見 千尋(ふしみ ちひろ)
TEL:042-388-7062
E-mail:cfushimi(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
◆報道に関する問い合わせ◆
東京農工大学 総務課広報室
E-mail:koho2(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp
北海道大学 社会共創部広報課
E-mail:jp-press(ここに@を入れてください)general.hokudai.ac.jp