AI for Science × 機能性材料 -農工大 テラヘルツ波制御に向けた『鈴木の法則』の発見に乗り出す-

AI for Science × 機能性材料
-農工大 テラヘルツ波制御に向けた『鈴木の法則』の発見に乗り出す-

 国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の鈴木健仁准教授、同大学大学院工学府知能情報システム工学専攻 落合真海氏(修士課程2年)、田中悠太氏(修士課程1年)、同大学工学部知能情報システム工学科 鳥居璃公氏(4年)、塩原太陽氏(4年)は、次世代通信システム「6G(Beyond 5G)」で利用が期待されているテラヘルツ波を自由自在に制御するために開発した独自の機能性材料(注1)について、その材料特性と構造の関係を結びつける一般性を記述する『鈴木の法則(Suzuki’s Law)』の発見に乗り出しました。
 これまで同研究グループは、機能性材料に関する実験と解析を通じて膨大なデータ(ビッグデータ)を蓄積してきました。しかしながら、機能性材料の物理現象は完全には説明しきれていません。人間が新たな物理法則を発見するには、天才的な直観と膨大な時間を要します。そこで、本研究チームは人間とAIの協働によるAI for Scienceを活用しました。AI for Scienceは、人間が新たな物理法則の発見に要する時間よりも早く、隠れた法則にたどり着く可能性をもつ手法です。新しい物理法則の発見と応用、新たな学術領域の構築への貢献が大きく期待されます。

本研究成果は、第86回応用物理学会秋季学術講演会に2025年9月8日に発表しました。
発表タイトル:極限屈折率材料の屈折率の定式化の一検討
研究内容説明の動画のURL:https://youtu.be/a_X_pxA3c_k

研究背景
 次世代の高速無線通信では、現在普及が進んでいる5G通信よりも高い周波数帯であり、高速かつ大容量の通信を可能にするテラヘルツ波の利用が期待されています。本研究グループは、テラヘルツ波帯の電磁波の自由自在な制御に向けて、2017年に独自の機能性材料を発見しました。その後、現在までテラヘルツ波を制御する様々な機能性材料の実験と解析を通じて、膨大なデータ(ビッグデータ)を蓄積してきました。しかしながら、これらの機能性材料で起こる物理現象を完全に説明できる法則は、これまで見つかっていません。

研究体制
 本研究は、東京農工大学大学院工学研究院先端電気電子部門の鈴木健仁准教授、同大学大学院工学府知能情報システム工学専攻 落合真海氏(修士課程2年)、田中悠太氏(修士課程1年)、同大学工学部知能情報システム工学科 鳥居璃公氏(4年)、塩原太陽氏(4年)により行われました。また、本研究の一部は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金基盤(B)(24K01376)、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(JPMJFR222I)、挑戦的研究(萌芽)(24K21617)などの支援により行われました。

研究成果と今後の展開
 本研究グループは、独自に開発した機能性材料の構造と、「屈折率の実部」や「比インピーダンスの実部」といった電磁波の制御に重要な指標を結びつけることに挑戦した初期の『鈴木の法則(Suzuki’s Law)』を報告しました。機能性材料の実験結果や解析結果のビッグデータにAI for Scienceを活用し、簡潔な物理モデルで記述しています。引き続き、AI for Scienceと機能性材料による破壊的イノベーションに向けて、機能性材料の材料特性の一般解となる『鈴木の法則(Suzuki’s Law)』の完成を目指します。

用語説明
注1 機能性材料
薄い誘電体の両面に金属を周期的に配置した構造であり、誘電体や金属の構造により自然界に存在しない高屈折率で低反射な材料特性を有するメタサーフェス。日本特許第6596748号、米国特許第10686255号、他

 

◆研究に関する問い合わせ◆
 東京農工大学 大学院工学研究院
  先端電気電子部門 准教授
  鈴木 健仁 (すずき たけひと)
   TEL/FAX:042-388-7108
   E-mail:takehito(ここに@を入れてください)go.tuat.ac.jp

◆報道に関する問い合わせ◆
 東京農工大学 総務課広報室
   TEL:042-367-5930
   E-mail:koho2(ここに@を入れてください)cc.tuat.ac.jp

 

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