謎多きテングコウモリの食性を糞の顕微鏡分析により解明

謎多きテングコウモリの食性を糞の顕微鏡分析により解明

ポイント

  • これまで情報の乏しかった、左右に飛び出た鼻孔を持つ変わった見た目のテングコウモリの食性を糞の顕微鏡分析により調査しました。
  • 比較的大型の昼行性のコガネムシやバッタ、蛾の幼虫、クモを空中ではなく、地上や植生上でホバリングもしくは着地しながら採食していることが示唆されました。
  • 本種の保全のためにはこうした非飛翔性の節足動物の多様性や個体数を保全してく必要性が高いことが示されました。

本研究成果は、フランスの哺乳類学雑誌「Mammalia」オンライン版に(1月5日付)に掲載されました。
論文名:Food habits of Hilgendorf’s tube-nosed bats, Murina hilgendorfi (Vespertilionidae), in the cool temperate coniferous forest of Mount Fuji, central Japan
著者名:Hayato Takada*, Akiyoshi Sato, Setsuko Katsuta
URL:https://doi.org/10.1515/mammalia-2025-0064

概要
 テングコウモリは主に日本の森林環境に生息し、左右に飛び出た鼻孔という風変わりな見た目をした食虫性のコウモリです(図1)。本種は個体数の少なさから、多くの都道府県で絶滅危惧種に指定されています。また個体数が少ないことに加えて、単独で生活すること、日中の休み場所(ねぐら)を頻繁に移動する習性をもつことから、コウモリ類の中でも調査研究が難しく、食性(注1)など、本種の保全のため必要な基礎情報は非常に限られています。
 本研究では、国立大学法人東京農工大学 農学部附属野生動物管理教育研究センターの髙田隼人特任准教授(当時 山梨県富士山科学研究所)と有限会社アルマスの佐藤顕義氏、勝田節子氏らの共同研究チームが山梨県の富士北麓の針葉樹林に生息するテングコウモリを対象に糞の顕微鏡分析(注2)を実施し、その食性を解明しました。具体的には、テングコウモリは比較的大型の昼行性の甲虫類(シロテンハナムグリ)やバッタ類、蛾類の幼虫、クモ類など、夜間に飛翔しない節足動物を採食しました。日本産のコウモリ類の多くは夜間に飛翔する昆虫類を空中で捕食するのに対し、本研究結果はテングコウモリが地表や植生などにいる獲物をホバリングしながら、もしくは着地しながら捕食するという、珍しい習性をもつことを示唆しました。また、他の多くの日本産コウモリが捕食する甲虫類に比べて、大型の甲虫類(2~2.5㎝)を採食可能であることも初めて示されました。
 広葉樹林で実施された先行研究の結果と比較すると、富士山麓針葉樹林のテングコウモリはより甲虫類に偏った食性を持つことが示されました。針葉樹林は広葉樹林に比べて昆虫類の多様性や個体数が少ないことが知られるため、針葉樹林のテングコウモリはより一部の獲物(甲虫類)に偏って採食を行った可能性が考えられます。本研究により、テングコウモリが環境に応じて食べ物を変化させることや、本種の保全のためには主要な獲物である非飛翔性の昆虫類の多様性や個体数を保全してく必要性が高いことが示されました。

用語解説
注1)動物がどのような食物を食べるかの習性のこと。
注2)糞の内容物を顕微鏡を用いて観察して動物の食性を調べる方法のこと。

 

図1:富士北麓に生息するテングコウモリ

       

 

◆研究に関する問い合わせ◆
 東京農工大学 農学部附属野生動物管理教育研究センター
  特任准教授 
  髙田 隼人(たかだ はやと)
   TEL:042-367-5826
   E-mail:takadah(ここに@を入れてください)go.tuat.ac.jp



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