国産自動繰糸機の設計思想と技能を記録・継承 -東京農工大学科学博物館、専用ウェブサイトの公開とパネル展示の開催-
国産自動繰糸機の設計思想と技能を記録・継承
東京農工大学科学博物館、専用ウェブサイトの公開とパネル展示の開催-
東京農工大学科学博物館は、1964年に日本で開発されたHR-2型自動繰糸機を対象に、設計者への聞き取り、設計図に基づく3Dデジタル再構成、メンテナンス作業の動画記録、専用ウェブサイトの整備を進めました。
本取り組みでは、機械そのものだけでなく、設計思想や操作・調整・保守に関わる「無形の技術知」を記録し、次世代へ継承することを目指しています。同館では、支援団体の技術者らの協力により毎週火曜日に繊維機械の動態展示を行っており、そこで受け継がれてきた知識や技能も記録の対象としました。
研究成果を紹介する専用ウェブサイトを2026年9月1日(火)に公開するとともに、同日から2027年1月30日(土)まで館内でパネル展示を行います。
図1 専用ウェブサイト
【公開・展示情報】
専用ウェブサイト公開日:2026年9月1日(火)
専用ウェブサイトURL:
https://silk-reeling-machine.tuat-museum.org/wp_/
パネル展示期間:2026年9月1日(火)
~2027年1月30日(土)
会場:東京農工大学科学博物館 2階展示室
〒184-8588 東京都小金井市中町 2-24-16
(東京農工大学 小金井キャンパス内)
入館料:無料
開館時間:10:00~17:00(入館は16:00まで)
休館日:日曜・月曜・祝日
※臨時休館・開館日は公式サイトをご確認ください。
背景
世界遺産・富岡製糸場は、器械製糸の普及と技術者育成の拠点として、日本の製糸技術の発展に大きな役割を果たしました。その後、製糸技術は機械化・自動化が進み、戦後には自動繰糸機が日本の蚕糸業を支える重要な技術となりました。富岡製糸場には、こうした製糸技術の歩みを伝えるHR型自動繰糸機が機械資料として現在も残されています。
東京農工大学工学部は、1874年(明治7年)に設置された蚕業試験掛をルーツに、蚕糸・繊維分野の教育・研究を発展させてきました。1949年の大学発足時には繊維学部に製糸学科が置かれ、製糸機械についても研究が行われました。東京農工大学科学博物館には、こうした歴史を伝える製糸機械や関連資料が受け継がれており、HR-2型自動繰糸機もその一つです。
現在、同館では、HR-2型自動繰糸機の設計・開発に携わった技術者も所属する繊維技術研究会などの協力を得て、毎週火曜日に繊維機械の動態展示を行っています。機械の運転・保守や来館者への解説には、長年培われてきた経験と技能が生かされています。一方、機械を動かすための操作・調整・保守の知識には、図面や文書だけでは残しにくい暗黙知が多く含まれます。こうした知識や技能を、現物を動かしながら経験者から直接学べる機会が限られるなか、その技術知を記録し、次世代へ継承することが重要な課題となっています。
取り組みの内容
HR-2型自動繰糸機の設計者への聞き取りを行い、開発当時の課題や機械の設計思想、設計時の判断を記録しました。また、設計図をもとに3Dデジタル再構成を行い、機械の構造や動作原理を視覚的に確認できるようにしました。
さらに、繊維技術研究会などの協力を得て、メンテナンスや調整作業を動画で記録し、実物や図面だけでは残しにくい操作・調整・保守に関わる技術知の保存を進めました。これらの成果は専用ウェブサイトに集約し、研究・教育や技術継承に活用できる基盤として整備しています。
この取り組みは、動態展示を単に「動かして見せる」場とするのではなく、機械を動かすことで明らかになる設計上の工夫や調整の要点、経験に基づく技能を記録し、継承する場として捉え直す試みでもあります。
本取り組みの意義
本取り組みの特徴は、国産自動繰糸機という「モノ」の保存に加え、その背景にある設計思想や操作・保守技能まで記録の対象とした点にあります。
科学技術資料を単体のモノとしてではなく、それが使われ、維持され、受け継がれてきたプロセスや人との関係を含めて捉えることは、科学技術資料の保存・継承を考えるうえで重要です。
実物資料の保存と動態展示、設計者への聞き取り、3Dデジタル再構成、動画記録を組み合わせることで、科学技術の有形・無形の両面を将来へ残す大学博物館の実践例となることを目指しています。
今後の展開
今回蓄積した記録は、HR-2型自動繰糸機を保存するための資料であるとともに、設計者が何を課題とし、どのような発想で機械をつくり上げたのかを次世代へ伝えるための参照基盤となります。
歴史的な機械に込められた設計思想や技術的工夫を共有可能な形で残すことで、次世代のエンジニアが過去の技術的挑戦から学び、新たな技術課題に向き合う契機となることを目指します。
謝辞
協力(敬称略)
東京農工大学科学博物館支援団体繊維技術研究会
サナフェイズ 佐波 晶
新増澤工業株式会社 星野 伸男
株式会社草間商会 草間 健一
元日産自動車株式会社繊維機械事業部 木村 一紀、高橋 隆雄
岡谷蚕糸博物館 高林 千幸
元蚕糸科学研究所 清水 重人
協力施設
碓氷製糸株式会社
岡谷蚕糸博物館・株式会社宮坂製糸所
駒ヶ根シルクミュージアム
蚕糸科学技術研究所
富岡製糸場
松岡株式会社(松岡製糸所)
松澤製糸所
本研究は、JSPS科研費 JP21K01000の助成を受け実施されました。
◆本件に関する問い合わせ先◆
東京農工大学科学博物館
特任助教 齊藤 有里加
TEL:042-388-7163 E-mail:kahaku@cc.tuat.ac.jp
184-8588 東京都小金井市中町2-24-16
東京農工大学科学博物館ホームページ http://www.tuat-museum.org/
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