高密度ヘリコンプラズマ源開発と先進宇宙推進ロケット研究―高効率・長寿命化を目指して-

2018年11月21日

 国立大学法人 東京農工大学 大学院工学研究院 先端機械システム部門の篠原 俊二郎卓越教授(注1)らが執筆した「特徴ある高密度ヘリコン源開発と無電極・プラズマロケットへの応用」と題する研究論文が、英国物理学会(注2)の学術誌『Plasma Physics and Controlled Fusion』(11月14日付)に掲載されました。本研究は、篠原卓越教授と、同研究室の桑原大介助教(現 中部大学講師)、博士課程前期と後期の大学院生、学部4年の学生(全9人)で実施されたものです。
 篠原卓越教授は長年にわたり、高密度ヘリコンプラズマ(注3、4)科学研究分野において、世界最大や最小サイズなど世界記録を更新する多くの特徴あるプラズマ源の開拓と、それらの生成機構や高周波の波動励起・伝搬・吸収といった興味深い物理現象の解明を鋭意行ってきました。更に、それらの成果をベースに次世代の先進プラズマ推進ロケットを開発するなど、種々の応用研究でも世界を牽引してきました。

図1 欧州物理学会での篠原卓越教授の招待講演

 本論文では、これらの豊富な成果(注5)を基に、権威ある欧州物理学会(注2)の招待講演(図1)で発表した最新成果を紹介しています。開発した3台の装置と多くの先進診断技術を用い、種々のサイズの高密度・高効率プラズマ生成とその特性評価、及び長寿命となる宇宙推進ロケットに用いる新提案のプラズマ加速研究が紹介されています。また、高密度プラズマ生成・加速の過程で、電極やアンテナが高温のプラズマと直接接触するため損耗し、電極類の寿命が制限されることが大きな課題となっていました。本成果では、電極類がプラズマと直接接触しない「無電極」の概念を提唱・実証し、高効率・長寿命化を目指しています(図2、3が例)。

 この先進成果論文によって総括した知見と展望により、今後更にプラズマを用いた種々の分野や、マイクロ/ナノ衛星、長寿命運転が必要な深宇宙探査船などの開発分野への幅広い多角的展開が期待されます。

本研究成果は、Plasma Physics and Controlled Fusion(11月14日付)に掲載されました(注2)。
本論文は、下記のURLからご覧いただけます。

掲載:『Plasma Physics and Controlled Fusion』誌オンライン版
(URL http://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6587/aadd67/meta)(別ウィンドウで開きます)
論文タイトル:「Development of Featured High-Density Helicon Sources and Their Application to Electrodeless Plasma Thruster」
著者:Shunjiro Shinohara, Daisuke Kuwahara, Takeru Furukawa, Shuichi Nishimura, Tomoya Yamase, Yuichi Ishigami, Hirotaka Horita, Akihiko Igarashi and Shinichi Nishimoto

注1)  「卓越教授(ディスティングイッシュトプロフェッサー)」とは、優れた研究業績等を有する教授または准教授であると東京農工大学から認定を受けた教育職員のことです。詳細は、下記からご覧いただけます。http://www.tuat.ac.jp/research/distinguished_professor/ 

注2)  「欧州物理学会(European Physical Society)」は欧州の物理学と物理学者をサポートする学会で42の国の物理学会が加盟しています。その中の英国物理学会(Institute of Physics)の雑誌『Plasma Physics and Controlled Fusion』は権威ある学術雑誌として世界的に良く知られています。この学会は1873年に創立され会員数は約4万人です。

注3)   「プラズマ」は正負の荷電粒子からなり様々な所に存在します。宇宙では太陽が例で、プラズマからなる太陽風は地球に到達しオーロラとして光ります。地上では雷だけでなく、人工生成したプラズマは半導体製造やプラズマテレビ等になくてはならず、環境やバイオ・医療研究にも進展しています。高温プラズマの核融合(ミニ太陽)はエネルギー問題解決に向かって研究され、宇宙への応用例としてプラズマロケットがあります。小惑星からのサンプルリターンプロジェクトの「はやぶさ」は良く知られています。

注4)   「ヘリコンプラズマ」は、磁場のあるところでアンテナに高周波電流を流して生成するプラズマです。ヘリコンプラズマを使うことで、1ミリリットルあたり10兆個という非常に高い電子密度が得られます。このため、基礎科学だけでなく半導体製造やプラズマロケットなど、様々な分野への展開が期待され、注目を集めています。

注5) 篠原卓越教授の多くの先進成果は下記のURLに記載されています(本研究関連だけでも100編にも及ぶ査読論文)。例えば著名なNature Physicsにも2008年に掲載され、H22年度文部科学大臣表彰科学技術賞やH28年度プラズマ・核融合学会技術進歩賞などを受賞しています。これらの研究は日本学術振興会の科学研究費補助金である基盤研究(S) 2122609及び(B) 20340163、17H02295などの助成を受けたものです。また日経産業新聞2018年3月20日にも篠原教授の最新研究が紹介されています。
http://web.tuat.ac.jp/~sinohara/(別ウィンドウで開きます)

図2 高周波アンテナとガス導入法の開発例
図3 篠原卓越教授らが開発した高密度ヘリコンプラズマ装置を用いた、新提案のプラズマ加速法の概念図:(a)回転磁場加速、(b) 半周期加速

◆研究に関する問い合わせ◆
東京農工大学 大学院工学研究院
先端機械システム部門 卓越教授
 篠原 俊二郎(しのはら しゅんじろう)
  TEL/FAX:042-388-7097 

関連リンク(別ウィンドウで開きます)

 

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