非弾性解析学特論：シラバス

概要

　機械構造物の設計において，従来のような単なる強度解析の観点からだけではなく，製品のコストダウンや生産過程の最適化等を行なう目的で，応力・変形解析のコンピュータシミュレーションが重要視されるようになっている．また最近では機械構造物において金属材料だけでなく高分子材料に代表される様々な素材が利用されるようになり，非線形な力学モデルが必要となる場合も多くなっている．一方，コンピュータ技術の発展により以前では取り扱うことが難しかった大規模問題や非線形問題も計算可能になっている．このような現状に対応して，シミュレーション技術の基礎としての固体の力学はその重要性を増しているといえる．

　この講義では，学部の講義ではあまり触れられなかった固体力学の非線形問題（大変形，材料非線形など）を扱うための数学的，物理学的な基礎を学ぶ．固体力学でしばしば用いられるテンソルを用いた表現，添え字記法に習熟することが第一目標である．英文テキストを使用する．

授業計画

(1) はじめに (2) テンソル入門 (1) ベクトル 添え字記法 クロネッカーのデルタ 座標変換 （レポート　第1回） (3) テンソル入門 (2) 2階のテンソル 対称と反対称 直交テンソル テンソル積 (4) テンソル入門 (3) テンソルの成分 不変量 固有ベクトル，固有値 （レポート　第2回） (5) テンソル入門 (4) 方向微分 勾配，発散 発散定理，積分定理

(6) 運動学（Kinematics) (1) 運動 運動の記述方法 変位，変形勾配 ひずみ （レポート　第3回） (7) 運動学（Kinematics) (2) 極分解 体積変化，面積変化 線形化した運動学 (8) 運動学（Kinematics) (3) 速度と物質導関数 速度勾配と変形速度 ストレッチングとスピン （レポート　第4回） (9) 保存則と釣合い式 (1) 応力 運動量の保存：応力の釣合い式 角運動量の保存：応力の対称性 (10) 保存則と釣合い式 (2) 仮想仕事の原理 各種の応力 応力速度 （レポート　第5回） (11) 構成式論入門

成績評価，その他

• 実際には，各回に適当に演習をおりまぜるので， 11回分を用意しているが，最後までできない可能性がある．
• 成績は，5回のレポートの平均点とする．
• 教科書として，

  George E. Mase (著) "Continuum Mechanics (Schaum's Outline Series)"
  を用いる予定である．講義開始時に，受講希望者に販売する（1冊2000円前後）．