Mikio Murata Research

研究概要

主な研究対象は複素領域における微分方程式,差分方程式,特に可積分系の理 論である.現在は特にパンルヴェ微分方程式,離散パンルヴェ方程式,および ソリトン方程式の研究を行っている.今までに得られた結果は以下の通りで ある.
A0(1) 型曲面の8パラメータの離散パンルヴェ 方程式dP(A0(1)) は楕円関数を係数に持ち,他のすべての離散パンルヴェ方程式をその退化した 場合として発見することができるので,離散パンルヴェ方程式の中で最も包括 的である. ワイエルシュトラスの楕円関数の恒等式を用いて, dP(A0(1))の2種類の 解を発見した. 1種目はその解の形状が8個のブローアップする点のパラメータ付けから推測で きるので,自明解と呼ばれる. 2種目の解は方程式のパラメータが特定の制約条件を満たすときに存在し,線 型化可能な一階差分方程式を満たすので,リッカチ解と呼ばれる. 退化図式を適用して,方程式dP(A0(1)*), dP(A0(1)**) の自明解とリッカチ解の一階差分方程式を得た. また,E7(1)型対称性を持つ A1(1)曲面の方程式 dP(A0(1)) のリッカチ解の既知の一階差分方程式を得た.
楕円差分パンルヴェ方程式 dP(A0(1))の新しい表示を得た. その表示ではパラメータが対称的に現れることから,方程式の置換対称性が明 らかになる. 同様の手法で他の離散パンルヴェ方程式の表示を得た.
サインゴルドン方程式に対応する超離散系を提出した. 離散サインゴルドン方程式の新しい従属変数は超離散化の手続きを適用するた めに導入される. その超離散系は離散方程式のソリトン解と直接に関係する厳密解を持つ.
離散および超離散変形KdV方程式の新しい種類の解を提出した. これらは運搬車付き箱玉系の解と直接に対応する. 更に,拡張した箱玉系とその厳密解について論じた.
2成分KP階層の時間変数に依存するスペクトル変数を用いた拡張を提出した. 係数が2×2行列である線型系がその階層から簡約の手続きを通して得 られる. パンルヴェ6型方程式のラックス対がその線型系から得られた. また,他のパンルヴェ方程式を通常の2成分KP階層から扱う統一的な方法を提 出した.
離散変形KdV方程式は正と負の振幅を持つソリトンの相互作用を記述する不定 符号の厳密解を持つ. 双曲線正弦関数型の変換をこの方程式と解の超離散化のために提案した.
ミウラ変換の超離散類似を離散のKdV及び変形KdV方程式の双線型形式を用いて 構成した. この変換は「運搬車付き箱玉系」の解を「箱玉系」の解に写す. 解の具体例についても議論した.
双線形形式を用いた離散KdV方程式のベックルント変換を提出した. 重ね合わせ公式もその変換から導かれる. その変換の超離散類似を超離散化の手法により提出した. この変換は箱玉系のベックルント変換を与える. この系の超離散ソリトン解についても具体例で議論した.
qパンルヴェ(VI)型方程式から得られるすべてのqパンルヴェ方程式をラックス形式により記述した. それらは線形q差分方程式の情報で特徴付けられる. また,qパンルヴェ方程式のラックス形式の退化図式を示した.
差分方程式の解が定符号であることが必要のない新しい超離散化の手法を提出した. この手法を用いて特異点閉じ込め判定法の超離散類似を構成し,それによって超離散方程式の可積分性判定法を提案した.
微分系の離散類似を構成する系統的手法を提出する. その手法は1次の微分方程式に適用でき,形式的な線形化の後に,指数関数に対してパデ近似に似た有理関数への近似を行うものである. いわゆる'直感的な'手法による離散化の結果が存在するような系にこの手法を適用し,離散化を比較する. また、我々の手法とMickensの手法の比較を行う. 最後に微分系の可積分性の保存の観点に注目して結合型リッカチ方程式にこの手法を適用する.
我々が以前に提案した微分系の系統的な離散化の方法をパンルヴェ方程式の離散類似の構成のために適用する. 重要な点はパンルヴェ方程式の場合は可積分性を保存する必要があることである. 方程式のハミルトニアン表示に系統的な離散化の操作を適用することで,確かに可積分性を保存する離散化となっていることを示す.
元の従属変数の符号の情報を保存する符号変数付き超離散化をA6型のqパンルヴェII型方程式(q-PII)に適用する. 得られた超離散系のq-PIIの特殊関数解に対応する特殊解を構成する. qエアリー方程式の超離散類似とその特殊解についてもその過程で議論する.
第2パンルヴェ方程式のq差分類似であるA6(1)型のqパンルヴェ方程式に対応する超離散系を提出する. その超離散系の2パラメータを持つ厳密解を構成する.
パリティー変数をもつ超離散方程式の可積分判定法である超離散の特異性閉じ込めテストを様々な超離散方程式に適用する。 そのとき超離散方程式は対応する離散方程式と類似した特異性の構造を示す。 また線形化可能な超離散方程式の厳密解を特異性の構造について説明するために構成する。

発表論文

  1. M. Murata: "Special Function Solutions of A0(1)-surface Painlevé Equations", Master's thesis, Univ.Tokyo (2002). [ PDF ]
     
  2. M. Murata, H. Sakai, and J. Yoneda: "Riccati solutions of discrete Painlevé equations with Weyl group symmetry of type E8(1)", J. Math. Phys., 44 (2003), 1396--1414. [ Abstract ]
     
  3. M. Murata: "New Expressions for Discrete Painlevé Equations", Funkcial. Ekvac., 47 (2004), 291--305. [ Abstract ]
     
  4. S. Isojima, M. Murata, A. Nobe and J. Satsuma: "An ultradiscretization of the sine-Gordon equation", Phys. Lett. A, 331 (2004) no.6 378-386. [ Abstract ]
     
  5. M. Murata, S. Isojima, A. Nobe and J. Satsuma: "Exact solutions for discrete and ultradiscrete modified KdV equations and their relation to box-ball systems", J. Phys. A: Math. Gen., 39 (2006), no.1 L27--L34. [ Abstract ]
     
  6. M. Murata: "Two-component soliton systems and the Painlevé equations", Doctoral thesis, Univ. Tokyo (2006). [ Abstract ] [ PDF ] [ 内容要旨 ] [ 審査要旨 ]
     
  7. S. Isojima, M. Murata, A. Nobe and J. Satsuma: "Soliton--anti-soliton collision in the ultradiscrete modified KdV equation", Phys. Lett. A, 357 (2006) no.1 31-35. [ Abstract ]
     
  8. S. Kubo, S. Isojima, M. Murata and J. Satsuma: "Ultradiscrete Miura transformation", Phys. Lett. A, 362 (2007) no.5-6 430-434. [ Abstract ]
     
  9. S. Isojima, S. Kubo, M. Murata and J. Satsuma: "Discrete and ultradiscrete Bäcklund transformation for KdV equation", J. Phys. A: Math. Theor., 41 (2008), no.2 025205 (8pp). [ Abstract ]
     
  10. M. Murata: "Two-component soliton systems and the Painlevé equations", J. Phys. A: Math. Theor., 41 (2008), no.36 365205 (17pp). [ Abstract ]
     
  11. M. Murata: "Lax forms of the q-Painlevé equations", J. Phys. A: Math. Theor., 42 (2009), no.11 115201 (17pp). [ Abstract ]
     
  12. N. Mimura, S. Isojima, M. Murata and J. Satsuma: "Singularity confinement test for ultradiscrete equations with parity variables", J. Phys. A: Math. Theor., 42 (2009), no.31 315206 (7pp). [ Abstract ]
     
  13. M. Murata, J. Satsuma, A. Ramani and B. Grammaticos: "How to discretize differential systems in a systematic way", J. Phys. A: Math. Theor., 43 (2010), no.31 315203 (15pp). [ Abstract ]
     
  14. M. Murata, J. Satsuma, A. Ramani and B. Grammaticos: "Discretising systematically the Painlevé equations", Phys. D, 240 (2011), Issue 3 305-309. [ Abstract ]
     
  15. S. Isojima, T. Konno, N. Mimura, M. Murata and J. Satsuma: "Ultradiscrete Painlevé II equation and a special function solution ", J. Phys. A: Math. Theor., 44 (2011), no.17 175201 (10pp). [ Abstract ]
     
  16. M. Murata: "Exact Solutions with Two Parameters for an Ultradiscrete Painlevé; Equation of Type A6(1)", SIGMA, 7 (2011), 059 (15pp). [ Abstract ]
     
  17. N. Mimura, S. Isojima, M. Murata, J. Satsuma, A. Ramani and B. Grammaticos: "Do ultradiscrete systems with parity variables satisfy the singularity confinement criterion?", J. Math. Phys., 53 (2012), 023510 (24pp). [ Abstract ]
     
  18. M. Murata: "Tropical discretization: ultradiscrete Fisher-KPP equation and ultradiscrete Allen-Cahn equation", J. Difference Equ. Appl., 19 (2013), 1008-1021. [ Abstract ]
     
  19. M. Murata: "Discretization and ultradiscretization of non-integrable systems", RIMS Kôkyûroku Bessatsu, B41 (2013), 85-99. [ Abstract ]
     

口頭発表

  1. Elliptic-difference Painlevé Equation and Elliptic Hypergeometric Series, Infinite Analysis Seminar Tokyo, The University of Tokyo, May 2001.
     
  2. 超離散ソリトン方程式とその解, 短期共同研究「可積分系数理の展望と応用」, Kyoto University, August 2004.
     
  3. New expressions for discrete Painlevé equations, Kobe Seminar on Integrable Systems, Kobe University, May 2005.
     
  4. The sixth Painlevé equation as similarity reductions of two-component soliton system, Kobe Workshop on Integrable systems and Painlevé systems, Kobe University, November 2005.
     
  5. 2成分ソリトン系とパンルヴェ6型方程式, 日本数学会年会無限可積分系セッション, Chuo University, March 2006.
     
  6. Two-component soliton systems and the Painlevé equations, Kobe Seminar on Integrable Systems, Kobe University, May 2006.
     
  7. ホロノミック変形と等スペクトル変形, 日本数学会年会無限可積分系セッション, Saitama University, March 2007.
     
  8. ソリトン方程式とパンルヴェ方程式, 理工学部物理・数理学科コロキウム, Aoyama Gakuin University, October 2007.
     
  9. q差分パンルヴェ方程式のLax形式, 青山数理セミナー, Aoyama Gakuin University, July 2008.
     
  10. qパンルヴェ方程式のラックス形式, 大域解析セミナー, Kumamoto University, December 2008.
     
  11. qパンルヴェ方程式のラックス形式, 短期共同研究「微分方程式のモノドロミ─をめぐる諸問題」, Kyuto University, February 2009.
     
  12. qパンルヴェ方程式のラックス形式, 日本数学会年会無限可積分系セッション, The University of Tokyo, March 2009.
     
  13. 超離散パンルヴェ方程式の2パラメータ解, 日本数学会秋季総合分科会無限可積分系セッション, Nagoya University, September 2010.
     
  14. 微分方程式の系統立った離散化の方法, 研究集会「非線形波動研究の新たな展開 −現象とモデル化−」, Kyushu University, October 2010.
     
  15. 超離散Allen-Cahn方程式, 日本数学会秋季総合分科会函数方程式論分科会, Shinshu University, September 2011.
     
  16. 超離散Allen-Cahn方程式, 現象数理セミナー/九州可積分系セミナー, Kyushu University, October 2011.
     
  17. 超離散反応拡散系, 研究集会「非線形波動研究の進展−現象と数理の相互作用−」, Kyushu University, October 2011.
     
  18. 超離散Allen-Cahn方程式, 広島数理解析セミナー, Hiroshima University, November 2011.
     
  19. 超離散Allen-Cahn方程式, 研究集会 第8回「生物数学の理論とその応用」, Kyoto University, November 2011.
     
  20. 超離散Allen-Cahn方程式, RDSセミナー, Meiji University, December 2011.
     
  21. 非可積分系の離散化と超離散化, 研究集会「非線形離散可積分系の拡がり」, Kyoto University, August 2012.
     
  22. 放物型偏微分方程式のセル・オートマトン化法, 日本数学会年会応用数学分科会, Kyoto University, March 2013.
     
  23. 反応拡散系の超離散化, 数電機特別連携セミナー, Tokyo Metropolitan University, September 2013.
     
  24. 超離散反応拡散方程式の多次元進行波, 研究集会「非線形波動研究の拡がり」, Kyushu University, November 2013.
     

発表論文(講究録等)

発表論文(arXiv)

ポスター発表

口頭発表(共同研究)

ポスター発表(共同研究)

口頭発表(サマーセミナー)

要旨


メディア

Back to INDEX