JST 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)

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2022年 1月 13日   炭素循環型社会実現のためのバイオエコノミーイノベーション共創拠点
          Kick Offシンポジウム を3月10日(木)に開催します。
          詳しくは、近日公開いたします。

2021年 9月 6日 共創の場形成支援プログラム 共創分野育成型に採択されました。
                         拠点名:炭素循環型社会実現のためのバイオエコノミーイノベーション共創拠点

 

拠点長挨拶

拠点プロジェクトリーダー 養王田 正文(東京農工大学 卓越教授)

 私たち人類は、食料、エネルギー及び材料のほとんどを光合成により固定化された炭素に依存しています。人類は、農業を発明することで狩猟社会から耕作社会への変革に成功し、大量の食料を獲得することを可能にしました。しかし、現代社会は、エネルギーと物質生産は化石資源に依存した狩猟型炭素社会となっています。その結果、燃焼により発生した二酸化炭素が地球温暖化の原因となり、大量のプラスチックが地球上を汚染し、地球規模の環境問題の原因となっています。このため、エネルギーと物質生産でも、耕作型社会への進化が求められています。 2020年に日本政府が公表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に基づき2050年の日本社会におけるエネルギーと物質循環を考えると、太陽光、風力、水力発電などの炭素を介さないエネルギー耕作が期待されています。しかし、航空機や船舶など輸送機械の燃料やプラスチックなどの材料は炭素に依存し続けることになるので、バイオマスを用いた炭素耕作による炭素循環が不可欠です。また、大気中に放出された大量の二酸化炭素を回収する唯一の方法が炭素耕作です。炭素耕作に基づく炭素循環型社会実現のためには、バイオマス生産・変換技術、さらに廃棄物の利用までを総合的に取り組んだバイオエコノミー研究開発が必要です。

 本拠点は、まず、炭素耕作によるエネルギー生産と材料としての炭素の貯蔵によりゼロエミッションへ貢献します。また、海洋は広大な面積があり、炭素耕作のフロンティアであるため、藻類を用いた炭素耕作を行います。さらに、バイオマス由来の材料開発を進めることで、海洋を汚染から守ります。バイオマス耕作は多くの場合、耕作地の拡大や土壌への影響による環境破壊を伴う。また、食糧生産との競合も大きな問題です。農業作物は人類の食糧として最適な形で進化している。すなわち、動物に必要な栄養素を含有し、一定期間保存できるものです。しかし、これらの作物が炭素耕作に適したものであるとはいえません。持続可能な炭素耕作に適した作物を開発・実用化し、エネルギーや材料生産の残渣の効果的な利用により、これらの課題を克服します。さらに、利用が困難なバイオマス資源の回収利用も重要な課題として取り組みます。

 バイオマスを原料としたエネルギーや材料は経済性だけでは化石資源由来のものと競合することが困難であることも事実です。経済性だけで評価しない地域の持続性、社会の持続性という観点から捉えなおし、社会の受容性に根ざした新しい炭素循環型社会の価値体系を提案し、東南アジア諸国との同意形成や、技術移転を構想します。炭素耕作社会は日本だけでなく、東南アジア諸国にも受容される新たな価値の創造を目指します。

 東京農工大学は、農工連携を軸として設立された大学であり、バイオエコノミーに関する産学官共同研究に関して多くの実績を有しています。全学一体となり内外の大学、研究機関、企業と協力して、本拠点の目的を達成します。

VISION~拠点がめざすもの~

本拠点は、これまでのバイオエコノミーの“限界を超える”技術を開発し、社会実装することで、炭素耕作による炭素循環型社会の実現を目的としています。農学と工学の研究者が一体となって技術開発を行い、企業や海外の研究者と協力することで社会実装まで発展させる真の意味での共創の場を実現し、従来の経済主導による炭素収奪型から、人と環境、社会の新たな価値の創造が介在する炭素耕作型への社会の進化の基礎を築いていきます。さらに、東南アジア諸国と連携することにより、日本発の炭素耕作技術による炭素循環型社会の実現を目指しています。
<具体的目標>
・炭素耕作によるエネルギー生産と材料としての炭素の貯蔵によりゼロエミッションへ貢献する。
・海洋は広大な面積があり、炭素耕作のフロンティアであるため、藻類を用いた炭素耕作を行う。
・バイオマス由来の材料開発を進めることで、海洋を汚染から守る。
・持続可能な炭素耕作に適した作物を開発・実用化し、エネルギーや材料生産の残渣の効果的な利用により
 バイオマス耕作の拡大・土壌への影響による環境破壊、食料生産との競合といった課題を克服する。
・日本だけでなく、東南アジア諸国にも受容される新たな価値を創造する。

拠点の構成・運営体制

1.拠点・プロジェクト構成図

2.運営体制

3.参画機関一覧 ※令和3年12月時点 ※参画大学等、参画企業等はアイウエオ順

幹事機関  東京農工大学
参画大学等  産業技術総合研究所
地球環境産業技術研究機構
長岡技術科学大学
日本工学アカデミー
弘前大学
早稲田大学
 参画企業等 太平洋セメント株式会社
東京都
三菱ケミカル株式会社

研究開発課題の紹介

研究開発課題1  :持続可能なバイオマス材料開発
関連ターゲット1 :持続可能なバイオマス耕作技術の確立
研究開発リーダー:大川泰一郎(東京農工大学大学院農学研究院 教授)


イネ科植物は草本系バイオマス作物のほとんどを占め、食料、飼料、バイオ燃料等に生産・利用されています。イネは、米を主食とする東南アジアでは最も栽培面積が多く、生産されるバイオマス量も最大である一方、籾殻、稲わらのカスケード利用、バイオマスプラスチックなどバイオマス資源利用、家畜飼料などの利用は十分に進んでいません。
つまり、食料や飼料の他、水素などのエネルギー、バイオマテリアルなど多用途に利用可能な新しいタイプの次世代イネ品種の開発が求められています。
イネは、光合成・高バイオマス生産など重要形質に関わる遺伝子の同定と機能解明が最も進んだ作物です。
しかし、これまで、化学肥料多肥条件で収量、バイオマス生産の高い品種は育成されていますが、持続的農業生産システムに適した高バイオマス品種はほとんど開発されていないのが現状です。
日本は2021年に’緑の食料システム戦略’を策定し、脱炭素次世代農業への転換を目指していることからも、これをさらに発展させて、陸地のグリーンカーボンとしてのエネルギー・材料生産も対象としたイネの開発を行っていきます。
木質系バイオマスにおいてもカスケード利用の視点が重要です。
日本のCO2吸収量の84%が森林による吸収であることからも分かるように、多年生である樹木の森林は極めて大きく安定なCO2貯留能力持っています。しかし、東南アジアなどでは人工林の面積が増加傾向にありながら天然林の減少が続いています。違法伐採を抑制し、安定した木材利用を進めるためには、人工林の適切な管理とそこから出される木材の効率的なバイオマス利用が重要となります。
海洋のブルーカーボンでは、水圏環境に生息する単細胞性光合成生物である微細藻類は、CO2を吸収しながら、農業や環境浄化への寄与と燃料生産を行うことができます。また、陸生多細胞生物と比較して高いバイオマス生産性を示します。微細藻類に由来する脂質を原料としたバイオジェット燃料については、実用化研究が実施されています。また、微細藻類を用いたオメガ3脂肪酸生産技術は、天然魚由来オメガ3脂肪酸に依存しない持続可能な魚類養殖に必要となっています。
本研究課題では、陸地のグリーンカーボン、海洋のブルーカーボンのバイオマス生産、カスケード利用、全体の物質循環の構築による持続的なバイオマス材料耕作システムの開発に取り組んでいきます。   



研究開発課題2  :炭素耕作による材料開発技術の開発
関連ターゲット2 :炭素耕作による材料開発技術の確立
研究開発リーダー:吉田 誠(東京農工大学大学院農学研究院 教授)



様々な材料や化学品は化石資源に依存しているため、その使用量を低減させていくことは地球温暖化がますます懸念される将来に対する現代社会の責任です。植物バイオマスは地球上における最も豊富な生物資源の一つであることから、化石資源に由来する各種化学品を置き換えることのできる最も可能性の高い資源の一つであると考えられます。 植物バイオマスの乾燥重量の大部分はセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンで構成される細胞壁が占めることから、これらの主要成分の有効利用が植物バイオマス利用の本質ですが、さらに、植物種によっては植物油脂などの成分も多く含まれるため、それら全ての成分を材料や化学品に変換することで、バイオマスの価値を最大限に高めることができます。特に、イネおよび木質を主な対象とし、その中心的な構成成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンの変換技術開発に取り組むとともに、東南アジアに豊富に存在するオイルパーム、藻類などから抽出する植物油脂を原料とした変換技術開発も行います。バイオマス由来の材料や化学品開発においては、 化石資源由来のものと同等の性能を求めることはもちろん、さらなる高機能性付与もその用途拡大を実現する上で不可欠です。特に、未知なる感染症と向き合っていくことが予測されるポスト・ウィズコロナ時代において、対感染症に向けた材料・化学品開発、すなわち、ポスト・ウィズコロナ社会と調和した新たな視点での材料開発も重要です。これらのグリーンプロダクツの社会実装を見据え、産学連携による研究開発の加速化、対象とする未利用資源を豊富に有する海外新興国(特にASEAN)との協業展開も行います。

研究開発課題3    :バイオマス燃料技術開発
関連ターゲット3 :ゼロエミッションバイオマス燃料供給システムの確立
研究開発リーダー:乾 将行(公益財団法人地球環境産業技術研究機構
              バイオ研究グループ グループリーダー/
                                       主席研究員)



究極のクリーンエネルギーとして期待されている水素をコアターゲットとし、バイオマスを原料としたCO2フリー水素生産プロセスの開発を中長期的課題、これと共通の基盤技術を利用した液体燃料生産プロセスの開発を短中期的な課題として、研究開発を行います。東南アジアとの連携による技術実証データに基づき、経済性・環境性・社会受容性を定量的に評価し、社会実装の実現性が高いシステムを選抜します。

バイオマス燃料生産技術の社会実装には生産コストの低減が課題です。
また、バイオマス原料の成分は多様であり、その組成は原料の種類によって大きく異なるため、画一的な技術で広範な需要を満たすのは難しく、これらの課題解決には、多様な熱化学及び生物学的変換技術の比較検討に基づく技術の選抜・融合・革新が必要となります。
本研究開発では、そのような異分野の技術開発を一体的に進め、地域/原料に合わせた柔軟なバイオマス燃料供給システムの構築・拡張を可能にしていきます。

参考:地球環境産業技術研究機構 バイオ研究グループサイトはこちら


研究開発課題4  :メタン発酵を用いた廃棄物リサイクルシステムの開発
関連ターゲット4 :持続可能な廃棄物フリーバイオエコミーのための
         リサイクル技術の確立

研究開発リーダー:寺田昭彦(東京農工大学大学院工学研究院 教授)



バイオマス耕作において、各技術工程から排出される廃棄物を適切にリサイクルすることは、持続可能性や環境保全を鑑みると重要な課題といえます。また、廃棄物を有価物へ転換するアップサイクリング技術、炭素とともに循環される窒素化合物のマネジメントが望まれています。本研究開発課題では、研究開発課題1、2、3において再利用が困難な廃棄物を畜産業から排出される廃棄物と混合した共発酵技術の開発を行い、効率的なメタン回収技術の確立を目指します。次に、メタン発酵後の残渣を炭化し、緩効性肥料に変換する技術を開発します。発酵残渣由来の炭化物の農作物栽培への施肥を通し、緩効性肥料としての効果を評価します。これらの要素技術を組み合わせ、地域循環共生圏確立の加速化に貢献できるような、畜産業や農業をベースとした持続可能なシステム開発を行います。さらに本研究開発課題では、環境中の微生物資源の理解・探索を行い、有価物を産生可能な微生物群の獲得を目指します。未知の微生物群の機能を有効に利用する条件を明らかにし、廃棄物からより価値の高い有価物の産生を志向するアップサイクリング技術の基盤を構築します。上述した廃棄物が排出されないようなリサイクル技術確立には、様々なシナリオをベースにした実現可能性評価が必要であるため、LCAや環境リスク評価も併せて実施していきます。


研究開発課題5 :社会的受容性の評価手法開発
関連ターゲット5:炭素耕作を受容する社会の実現
研究開発リーダー:永井祐二(早稲田大学環境総合研究センター
                                         研究院准教授)




バイオマスは生産、加工、利用が地域から都市へ、国内から国外へ広範囲に資源が循環され、一部には備蓄できるものと、そうでないものを含むことから、よりその社会的プロセスが複雑になっています。
生物資源であるバイオマス特有の生産力という課題、物質投入/排出から廃棄、リサイクルなど、さまざまなカスケード利用が想定されます。しかも、その全てのプロセスが経済合理性を有さない場合もあります。そうした背景において、新たに開発される技術、システムが革新的技術として社会に受容されるか、環境、経済、社会への影響を最適化する手法(特にサプライチェーンを視野に入れた消費者を含む社会受容性)の開発、適用に向けた課題、連携を明らかにすることで、その受容性を高める必要があります。
本開発で構想される「炭素耕作社会」を地域社会の持続性という観点からバックキャスティングして、社会に受容される技術開発として評価する手法を開発します。
物質の移動はそれだけで輸送エネルギーを必要とすることから、狭域地域における持続性の枠組みを維持する資源循環を優先することになりますが、社会実装には、これを超えた広域での資源循環や国際的な資源循環も不可欠となり、この意義を明確にする価値体系が必要です。言い換えれば、社会実装の戦略として、我が国の技術が、バイオマス資源が豊富なアジア各国で受け入れられ、その上で、我が国を含めた広域での循環圏を構築することが求められます。
そこで本課題では、アジア各国の研究ネットワークを構築しつつ、それぞれの地域社会が抱える課題を明確にし、アジアでの炭素循環(食・エネルギーと人の循環)の必然性に係るロジックを構築します。

参考:早稲田大学 環境総合研究センターサイトはこちら

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