JR東小金井駅から10分ほど歩いた閑静な住宅街に緑に囲まれた建物がある。
正面には『スタジオジブリ』の文字。今回取材をさせても らったところだ。

「社内の見学はお断りさせていただいております。」

というスタジオジブリ。しかし今回蛙新聞ではそのスタジオジブリの取材をすることが出来た。

 正面の扉を開けて訪れてまず目入ってきたのが

「猫になってもいいんじゃないッ?」

洋風建築の前でこちらを見つめる猫のポスター。この夏公開中の『猫の恩返し』のポスターだ。そして今回の映画で重要な役目を果たす バロンという猫人形を横にしながらスタジオジブリにおける、アニメーション制作行程についてお話を伺った。今回取材に対応してくださった 鵜飼由美子さんは『千と千尋の神隠し』までデジタルペイントという部分で実際に制作に加わっていた方である。 まずはここでアニメ制作の流れを見てみよう。制作の基本となるのが、原作、脚本、絵コンテの三つである。通常それぞれには原作者、脚本 家、監督と一人ずついるものなのだが、スタジオジブリの前作「千と千尋の神隠し」をはじめ、ほとんどの宮崎作品は全て監督が1人でこなしていたそうだ。その後、絵コンテを元に登場人物たちの怒ったり笑ったりした時の色々な表情を決めるキャラクター設計が行われる。絵コンテとは、場面の流れに合わせてカメラワーク、時間などをきめるものでいわばアニメーションを作る上での設計図といえるものだ。

 絵コンテを元にして背景やキャラクタの位置を決めるのがレイアウトという作業だ。そしてここからは背景作りの"美術"と"キャラ クターの動き"に関する仕事の二つに分かれることになる。

 美術では専門のスタッフがレイアウトを元に背景を仕上げていく。一方、動きに関する部分では作画部が担当する。作画部には原画担当者と動画担当者がいて、原画は、キャラクターのおおまかな動きをラフにとらえ、動画はそれをさらに滑らかな動きにする為に、中割をしてきれいな線で描く作業をする。ぱらぱら漫画をイメージするとわかりやすい。さらにキャラクターの色彩設計が行われ、動画をコンピュータに取り込み、デジタル処理によって一枚一枚色が塗られていく。この行程はデジタルペイント(仕上部)と呼ばれている。セル画が用いられていた頃は全て絵の具を用いた手作業で行われていたが、現在では完全にコンピュータ上で行われているそうだ。

 そして出来上がってきた背景をデジタルカメラで撮影し、コンピュータに取り込む。その背景と色の乗せられた動画がコンピューター 上で組み合わされ(撮影部)、画像処理(CG部)されて完成となる。これらのコンピュータからの作業をする部署を合わせて映像部と呼んでいるそうだ。


 アニメーション制作の流れを見た後、作業場に行く前にスタッフの憩いの場、屋上に案内してもらった。スタジオジブリの屋上は公園のようになっていて、中にはトリケラトプスの骨のレプリカがいたり不思議な空間が演出されていた。

今回の取材で見学したのは作画部と映像部であった。作画部では(写真参照)、それぞれのスタッフが自分の机を持ち黙々と作業に打ち込んでいた。次の映像部では作画部と同じくそれぞれが自分の作業スペースを持ち、パソコン上で静寂の中にペイント作業を行っていた。CG部では劇場のものだけでなくジブリ美術館で上映する短編「めいとこねこバス」の作業も行っていた。スタジオジブリでは出退勤はタイムカードが用いられていて、出勤時間はフレックス制が用いられている。このあたりは一般の会社と変わらないものであった。「猫の恩返し」「ギブリーズepisode2」の公開も段々と近づいていることもあってか、作業場はどこか緊張した空気が漂っていたように感じた。スタジオジブリの作る作品は内容の深さだけでなくクオリティーの高さでも素晴らしいものを持っていると思うけれども、その作品へのこだわりと言うものを肌で感じる。


実際に完成した作品ではコンピューターを導入しても、手作業のアニメーションのシーンと全く遜色ない高い仕上がりになっているということは大変なものだと思う。現在CG制作を担当しているスタッフの1人は、お話を伺っていて次のように話してくれた。

「クオリティーの高さはジブリの場合は絶対、ですね。」

 この言葉は、何もこのスタッフだけに限ったことではなく、全てのスタッフが共通して持っているもののようである。スタジオジブリというものつくり集団がこれほどまでの成功を収めた大きな理由は、皆の作品に込める思いにあるのだろう。それは監督だけではなく、スタッフ全員が持っているからこそ世代を超えて親しまれる作品が生まれるのだ。これは農学、工学系の私達にも言えることだ。自分達の作る製品へのこだわりを持つことで高いクオリティーの製品が生まれる。華やかな作品の陰にあるこういった地味なところでどれだけ良い仕事が出来るか。世に「製品」という作品を生み出していく私達にとっても見習うべきことだと痛感した。



Toru



※この記事は7月29日に発刊された小金井蛙新聞の記事を訂正して掲載しています。


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