. はじめに
今回のネタは、“ニューロコンピュータ”です。
さて、ニューロコンピュータといえば、機動警察パトレイバーにおいて第一小隊
に配属される新型レイバー“ピースメイカー”や、新世紀GPXサイバーフォーミュ
ラSINにおいてブリード加賀の乗るマシンとして登場する“凰牙”などに搭載され
ているコンピュータが思い出されます。
これらの作品中に登場するニューロコンピュータは、学習することでより生物に
近い動作や判断ができるコンピュータとして表現されています。
では、現実にはどういったものに利用されているかというと、例えば、三菱自動
車が出しているランサーエヴォリューションVII GT−Aに搭載されています。
このランエボはランエボ史上初のオートマ仕様(アクティブマチック)ですが、
なんとこのランエボ、ドライバーのシフトタイミングなどを学習して自動で
シフトチェンジを行い、快適なドライビングのサポートをしてくれます。
このように架空の物語中や現実においても、ニューロコンピュータといえば“学
習 ”が、重要な要素となっています。
そこで今回は“ニューロコンピュータ”の基礎ということで、ニューラルネット
ワークの仕組みと多層ニューラルネットワークで使われているバックプロパゲーシ
ョン学習法について説明します。
.神経細胞について
ニューラルネットワークについて語るには、まず、元となったニューロン、つま
り神経細胞(neuron)について知る必要があります。
神経細胞は、細胞体(soma),樹状突起(dendrite),軸索(axon)の3つの部
分から構成されています。(図1)
図 1
・ 細胞体:細胞の中央部分に当たり、細胞核はこの中に含まれる。
つまり、細胞本体。
・ 樹状突起:細胞体の表面から突き出た枝のような突起で、
神経細胞の入力端子に当たる部分。
・ 軸索:細胞体からほぼ一定の太さで長く伸びた一本の突起で、
一般に神経線維と呼ばれている。
神経細胞の出力端子にあたる部分。
軸索の終末端は、他の神経細胞の樹状突起や細胞体に付着しており、
この付着部分をシナプスといいます。
神経細胞間の信号伝達は、このシナプスを通して行われます。
次に、神経細胞がどのように信号を伝達しているか説明します。
神経細胞も細胞の一種なので細胞膜の内外では電位差があり、
これを膜電位と呼びます。
内部電位は細胞外部を基準として、通常−70mV程度で、
これを静止電位と呼びます。
神経細胞の外部からシナプス結合を通して入力信号があると、
内部電位は徐々に上昇していきます。
そして、あるしきい値を超えると内部電位は瞬間的に0Vを超えて、
再びもとの電位に戻るという現象が発生します。
このような現象を“興奮”または“発火”といいます。
発火によって得られた電位の変化は、軸索に沿って伝達していき、
これを“インパルス”と呼びます。
このインパルスが軸索終末端にあるシナプス結合を通して出力信号となり、
次の神経細胞に信号を伝達します。
.神経細胞のモデル化
ここでは、先に述べた神経細胞の機能のモデル化について説明します。
神経細胞のモデル化では、神経細胞の機能のすべてを精密にモデル化するのでは
なく、明らかにしようとしている機能に応じてモデル化を行います。
今回は、もっとも単純な神経細胞モデルである線形しきい値モデルについて
説明します。
線形しきい値モデルは、図で表すと以下のようになります。(図2)
図 2
xはシナプス前細胞からの入力を、wはシナプス結合の強さを表すとします。
各細胞からの影響wxを加算したものをニューロンへの入力とします。
そして、この入力の和が、しきい値θを超えたときニューロンが発火するとします。
これを式で表すと以下のようになります。
(1)式で表されるuを膜電位、または内部ポテンシャルと呼びます。
(2)式は膜電位がインパルスに変化することを表しており、
f()を出力関数と呼びます。
出力関数は一般には単調増加関数が用いられます。
例えば、出力関数として、しきい値を超えていれば「1」を、超えていなければ
「0」を返す関数を考えると、(3)式で表されるような階段関数となります。
また、出力関数にはほかにもシグモイド関数などがあります。
・ シグモイド関数
.ネットワーク構造のモデル化
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