●背景
シカによる植生の食害は各地で深刻化しており、従来被害のなかった日本海側地域や高山帯でも近年は植生衰退が顕著になっている。過度のシカ食害は植生衰退から土壌流亡や生態系の崩壊にもつながる重大事態でもある。既に各種のシンポジウムや著作で植生へのシカ影響について地域的な報告がなされてはいるが、その影響の程度や広がりについて全国レベルでの統一的な把握はまだなされていない。シカによる植生への影響を全国的に統一した基準で把握し公表することは、一般社会や行政に対して問題の深刻さと対策の必要性をさらにアピールする上でも重要である。そのため、植生学会が組織的にシカによる植生への影響についてアンケート調査をおこない、全国的な実態を把握したい。
●目的・方法
本プロジェクトは、多くの学会員(と協力者)の協力によって、シカによる植生への影響の状況を、
(1)ある時間断面(2009-2010年)で、
(2)全国規模で可能な限りの多数の地点において、
(3)統一的な評価項目に基づいて記録し、
被害の現況と地理的広がりを明らかにすることを目的とする。
この結果を、将来の状況の変化を評価する上でのベースとする。また、結果を地図等によって効果的に表現し、シンポジウム開催や、学会誌・情報誌への掲載、植生学会会員をはじめとした協力者へのアンケートデータの配布、行政への提言、マスコミへの発表などを通じて社会に発信し、対策の進展への基礎とすることも究極の目的とする。
●要点
- 今後2-3年、シカによる植生への影響の状況を、全国多数の地点において網羅的に調べる
- 植生学会会員のネットワークを生かし調査用チェックシートを学会員(および協力者)に、配布し、学会ウェブサイト上での入力や記入シートの返信により、現状についての報告を収集する
- シカ害の実態報告および本調査の趣旨の普及のため2009年7月にシンポジウムを開催する
- 結果を核にシカ害の実態についてのシンポジウムの開催(2011年春)や、全国情報の植生情報への公開、解析結果の学会誌への掲載などで衆知する
- 結果に基づき環境省等などの行政への要望提起、マスコミへの発表などを学会としておこなう
● スケジュール
2009年4月 | :アンケート配布開始(植生情報誌の配布に準拠) |
2009年7月 | :各植生帯でのシカ害に関するシンポジウム開催 |
2009年12月 | :アンケート第1次集計 |
2010年3月 | :第1次集計結果公表(情報誌に掲載) |
2010年4〜12月 | :補足調査・補足アンケート調査 |
2011年1〜3月 | :アンケート結果を踏まえたシカ問題シンポジウム開催 |