このページは大昔作ったもので、参考までに残してあるものです。
インストールに関する新しい情報については、Macintosh OS X に関するものではありますが、 こちらに書きましたので、見てください。
なお、Linux による構造解析のマシンの構築方法は他にも多くのサイトがあるので、最新の情報はそれらを参考にしてください。

殿塚隆史のマニュアル一覧のページ


目次

結晶構造解析用 Linux マシンのインストール

Mosflm および DPS のインストール

CNS 1.0 のインストール


結晶構造解析用 Linux マシンのインストール


マシンおよびLinux の種類について

 Linux は Windows にくらべ、新しい規格の機器(特に USB や IEEE1394 につなげる機器)に対してサポートされるのが遅く、あまり新しいパソコンはうまく動かないことがあります。特に問題なのが CPU よりもグラフィックカードに関することです。CPU は Intel のでも AMD のでも、x86 互換 CPU であれば問題ないです。ですから、理想的には CPU はなるべく最新のものでグラフィフィックカードは多少古め(定番)のものということになります。

 また、Linux のインストールは、かなり分かりやすくはなってきましたが、それでも全くの初心者には Linux のインストールは面倒でなかなか難しいものがあります。目的は構造解析であってパソコンのインストールではないので、最初から Linux がプレインストールしてあるパソコンのほうが、「これは Linux で動くのか?」など頭を悩ます必要もなく時間も節約できて、特に初心者にはお勧めです。

 CPU は速ければ速いに超したことはありませんが、最新 CPU は値段も高くなってしまいます。あまり古いのはさすがに遅いので考えものですが、500 MHz 程度のものでも問題なくできますので予算に応じて考えればよいでしょう。

 ハードディスクについては、構造解析という研究では1枚 10 MB 程度の回折イメージを 100 枚ぐらいはとるのが普通なので 30 GB から 40 GB ぐらいはあったほうがよいです。

 メモリも画像処理などに食うので最低 192 MB 以上必要な感じです。ですが、現在ではハードディスクは一般に売られているもので 30 GB から 40 GB は普通で、またメモリも安いですから、この程度のスペックはあまり問題ないと思います。

 モニタは普通の 17 インチモニタなら 1280 X 1024 の回像度が出るので、これで十分です。さすがに 15 インチは本格的にやるには狭すぎます。特に Mosflm のようなデータプロセスおよび XtalView や O のようなモデリングのソフトでは 1280 X 1024 ないとやりずらいです。

 Linux の種類について: アプリケーションは rpm 形式や バイナリを利用する方が早いでしょう。コンピュータが得意でない人はなおさらです。 そのようなソフトウェアをコンパイルしたバイナリ版が利用できる場合は、 Redhat Linux for Intel でテストされている場合がほとんどなので、Redhat か、Redhat ベースの Linux (Vine など)がよいと思われます。
 ただし各 Linux の開発された時期などによって、例えば Redhat だと画面がちらついてしまうが同じような時期に出ていても Vine とか Laser5 だとうまくいく場合もよくあります。X-Windows の設定の問題などは、いろいろ修正ファイルをさらにダウンロードして直すより、別の Linux をインストールする方が早いことがよくあり、また、Vine や Laser5 でうまく動かないソフトウェアは私が試した限り今のところないので、純正 Redhat に こだわる必要はなく、自分のマシンにあったものを使えばよろしいかと思います。

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アプリケーションのインストールの基本的なやり方

 Linux および Linux 用のソフトウェアのインストールに関しては、さまざまな優れた本やホームページなどがありますので、ここでは大まかに基本的なことを書きます。

 目的は、構造解析であってコンピュータのインストールではないので、基本的には rpm 形式やバイナリがあるのなら、そちらをまずダウンロードする方が早いでしょう。 多くのアプリケーションで Linux 用にコンパイルしたものを利用できます。 以下、Linux 用にコンパイルされたバイナリが利用できる場合の基本的なインストールの流れを以下示します。 Rasmol などはこの方法でインストールできると思います。

 例えば abc というソフトウェアがあった場合は Linux 用のバイナリ版をダウンロードしてきます

これが、
abc_linux.gz というファイルならば gzip -d abc_linux.gz
abc_linux.Z というファイルならば uncompress abc_linux.Z
abc_linux.tar.gz ファイルならば、tar xvzf abc_linux.tar.gz

というコマンドで解凍されます。解凍されたファイルが abc_linux という名前の時は abc という名前に変更したほうがよいでしょう。

 ファイル abc があるディレクトリで ./abc とコマンドを打てばソフトウェアが起動すると思います。

 起動しない場合、いろいろ原因がありますが、属性が異なる場合がありますので chmod u+x abc というコマンドで属性を実行形式に変えましょう

 ここまでいったら、どこにアプリケーションをインストールするか決めて、そこに path を通します。xyz というアカウントの場合 /home/xyz/local/abc_linux というようなディレクトリを例えば作ってソフトを置きます。
 次に、ドットから始まるファイルは ls では通常見えないファイルなので、ls -a とタイプすると bash の場合 .bashrc が、csh や tcsh の場合 .cshrc というファイルがありますので、これに gedit などの適当なエディタで一行書き加えてやります。

 .bashrc の場合 export PATH=$PATH:/home/xyz/local/abc_linux
 .cshrc の場合 set path = ( $path /home/xyz/local/abc_linux )

という一行を書き加えてやります。

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Linux のインストールの大まかな手順

 ここでは、大雑把にインストールの実際の手順を以下示します。

まず Linux をインストール

 Linux のインストールは、とりあえずインストーラの標準の Gnome または KDE ワークステーションインストールで問題ないでしょう。不必要なサーバ機能までインストールしたりすると、思わぬ不正アクセスなどの問題が起きることも考えられますから、よくわからない人には標準のワークステーションインストールでよいと思います。

 ワークステーションインストールを行ったら、以下のように Linux の環境を整えて使えるようにする必要があります。

1. Fortran コンパイラ(g77)のインストール
 Fortran は C と並んでソフトウェアのコンパイル(インストール)に必要ですが、残念ながら、標準のワークステーションインストールだとインストールされません。しかし大抵はインストールの CD-ROM の中に入っていて、egcs-g77-○○.rpm とか gcc-g77-○○.rpm などというような名前の RPM となっています。これを GnoRPM などを使ってインストールするのが一番簡単です。

2. ログインシェルを tcsh に変更する
 ほとんどのX線構造解析用ソフトウェアは、まず C シェル用に作られているのでこのほうが分かりやすいと思います。変更の仕方は chsh というコマンドによります。

3. ネットワークのリモートログイン関係の設定
 ネットワークはデータをやりとりする際必要なものですが、ネットワークを外に開くということは不正アクセスの標的になるので、管理に注意しなければならないのはいうまでもありません。こちらでは、学内のみアクセスできるようなネットになっていまして、このように、ネット管理者の人にお願いして学内のみアクセスできるようしたのち、リモートログインできるようなやり方にするのが一番無難なやり方でしょう。FTP のソフトウェアとしては Wu-FTPD または ProFTPD が、暗号化リモートログインソフトウェアとしては OpenSSH があり、これらは CD-ROM に rpm がありますのでいずれかをインストールすることになります。

4. 必要ならば /etc/lilo.conf /etc/fstab などの修正
 /etc/lilo.conf は、Windows とデュアルブート環境にしていて普段は Windows をデフォルトで起動させたい場合とか、メモリがたくさんあるのに認識してくれない場合に書き換えます。書き換えたら /sbin/lilo -v などのコマンドを実行する必要があります。
 /etc/fstab は Windows とデュアルブート環境の時 Windows のパーティションを認識させたい時に書き換えます。

以上、このページは現在工事中ですので、詳しいことは巷にあふれている Linux の本を見てください。

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アプリケーションの種類とインストール

 X線結晶構造解析のソフトウェアにはいろいろなものがありますが、ここではこれだけあればという代表的なものを書きます。でもこれだけあればタンパク質のX線結晶構造解析に関するほとんど全てのことはできます。
 なお、この項に書く「無償」とは大学などの非営利研究機関で使用する場合、いわゆるアカデミックフリーということです。また、無料あってもユーザー登録をする必要があります。
 

1. 収集した生データの数値化(プロセス)

 まず、収集した回折データを数値化します。この段階はデータのプロセスと呼ばれます。この目的で使われるソフトウェアとしては、DENZO、MOSFLM、D*TREK などがありますが、ここでは MOSFLM が無償で広く使われているのでこれをインストールしましょう。なお、MOSFLM を使うにはまず後述する CCP4 をインストールしなければなりません。

2. データの計算

 回折データから回折ビームの強度を数値化した後は、位相を決定したり、モデルを精密化したりなどの計算を行います。この用途で、最も基本的で世界中どの研究者でも使っているのは CCP4 でしょう。CCP4は、アカデミック用は無償でダウンロードでき、またこれがないとタンパクの構造解析は考えられないという必須なソフトなので、まずこれをインストールします。CCP4 だけで構造解析に関するほとんどすべての計算はできるのですが、ここでは、特にモデルの精密化では、その前のバージョンである X-PLOR のころから定評がある CNS をインストールしましょう。これも、ほとんどの研究者が用いていおり、しかも無償で入手できます。

3. モデルの構築

 位相を決定して電子密度がでたら、コンピュータ上でモデルを構築します。この用途でよく使われているのは O(オー、ゼロではない)または XtalView だと思います。こういうソフトウェアはいったんそのマウス操作などに手が慣れてしまうとなかなか他には変えにくいので、結局最初に使ったソフトをずっと使うことになったりします。O か XtalView をインストールしましょう。なお O は access.odb(ver.7 以前は access.o)というファイルをメールでお願いして入手する必要があります。

4. モデルをグラフィックスで表示

 グラフィックスのソフトウェアは Windows や Mac にもたくさんありますが、Linux 用のソフトウェアとしては、白黒でリボンモデルを描くのに標準的なソフトウェアといえる Molscript をインストールしましょう。Rasmol は Windows や Mac 版もあるお馴染みのソフトウェアですが Molscript を使うときも役に立ちますのでこれもインストールします。
 

 アプリケーションについては、
rpm 形式があれば rpm を(ccp4Mosflm など)、
Linux 用にコンパイルされたバイナリ版があればバイナリを(XtalViewRasmolO など)、ダウンロードしてインストールします。
 ソースファイルしかない場合はソースファイルをコンパイルします。この場合まず README ファイルなど付属の説明を十分読みましょう。通常は make install というようなコマンドでコンパイルします(MolscriptCNS など)

.cshrc を編集して path が通るよう編集するとできあがりです。

 日本語の情報では、 東海大の岡本先生のホームページに Linux マシンのインストールに関していろいろ詳しく書かれています。また、東大酵素研の伏信先生のホームページにも結晶構造解析に関するマニュアルやリンクなどの情報があります。以上、参考にするとよいと思います。

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Mosflm 6.0 のインストールの注意点


 Mosflm はメモリを大量に食うみたいで、最低 192 MBぐらいないとコアダンプして動かないみたいです。Mosflm 6.0 の FAQ にはスワップを最低 128 MB にすれば実メモリが 128 MB 以上あれば動くと書いてありますが、これは英語版の Linux の話で、日本語版だと Linux の種類にもよりますが、もっと実メモリが必要なようです。逆に実メモリを十分につんでいればスワップは 128 MB 以下でも動きます。最近はメモリは安いですからメモリを追加しましょう。
 Mosflm の中の problems というページに詳しく対処法が書いてあるので一読するとよいでしょう。

 さらに DPS を動かす場合、グラフィック表示用ソフトウェアをインストールする必要があります。LessTif などが利用できます。ただし Gnome とは相性が悪いみたいで、AdxvDisplay が開かないなどのトラブルが見られるようです。

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CNS 1.0 のインストールの注意点



 CNS はソースコードしか distribute してないのでコンパイルする必要があります。

 コンパイルの仕方は2種類あって、一つは make g77install というコマンドを入力してコンパイルする方法です。これは、g77 を最初にインストールしておく必要があります。デフォルトの Gnome ワークステーションインストールだとインストールされてなかったりするのですが、Redhat や Vine なら CD-ROM の rpm の中に入っているので、まずそれをインストールしたのち make g77install とタイプすればいきます。私のマシンだとこの方法でインストールしたものは、CNS の計算の最後に出てくる CPU Time がマイナスになって変な値を表示しますが、計算自体は今のところ何ら問題なくいってます。

 もう一つは make install コマンドで f2c と fort77 を使ってコンパイルする方法ですが、CNS の FAQ に書いてあるとおり、通常 distribute している rpm の f2c ではうまくいかないようで、Netlib の f2c をまずダウンロードしてコンパイルしてインストールし、これで CNS をコンパイルしないとうまくいかないようで、この方法は相当面倒です。CNS のコンパイルはこの方法のみサポートしており make g77install はアンサポートであるなんて書いてありますが、今のところ上記の CPU Time 以外問題はないので、手間を考えると make g77install をおすすめします。

 また、CNS はメモリを大量に消費するみたいで、特に2オングストローム以下の高分解能になると 192 MB のメモリでも途中で計算が止まることがありました。一番早い解決策は実メモリを増設することでしょう。
 

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