製品開発において試作品の製作は,製品の概観や性能を知る上で非常に重要であります. かつては木,粘土(クレイモデル)などで試作品の作製を行ってきましたが,近年ではラピッドプロトタイピング(RP)と呼ばれる技術が広く普及しています.
RPとは3次元CADデータをもとに2次元スライスデータを作製し,立体を薄い層の積層体とみなして積層造形を行う手法で,複雑形状の迅速造形が可能,低コスト, 多品種少量生産に向くなどの特徴があります.近年ではこの技術の応用として, 試作品を作るだけでなく機械部品や金型を作るラピッドマニュファクチャリング(RM)の研究が進んでいます. しかしながら,既存のRP技術では適用できる材料が樹脂,粉末,紙などに限られているため,高温・高圧化での耐久性・耐熱性に問題があり, 装置も高価などの理由から広く利用されていません.
本研究では,溶接技術で用いられているアーク放電により金属を溶融する技術に着目し, 溶融させた金属を積層させることで三次元造形を行う溶融金属積層法を提案します. アーク溶接ではステンレス・チタンなどの高温・高圧化でも耐久性・耐熱性に優れた金属材料が使用可能であり, 溶接部分の強度はバルク材と同等以上であることから,溶融金属積層では高強度な造形物を作製するRPが可能となります.
これまでに,電流・電圧,溶接トーチの送り速度,造形物の冷却方法を変えた実験を行い,各条件の影響を検証しました.現在は造形物の組織観察,強度評価を行い, 溶融金属積層特有の現象の解明を進めています.今後は4軸マシンを用いて,実際の機械部品や金型に近い形状の造形を目指していきます.

エンジンの中心部品であるのが,シリンダとピストンである. シリンダの精度はとても重要でどのレベルまで希望の形状に近づけるかがポイントになる. そこで行われているのがファインボーリングという加工である.
切削加工では図1に示すように切削エネルギの大部分は切削熱に転じて,工作物へ流入する. そのため,この切削熱により切りくず,被削材,工具が加熱され,温度上昇が生じる.このような温度上昇は, シリンダなどの材料である被削材の熱軟化による切削抵抗の減少など切削加工に有利な点もあるが, 被削材が熱膨張することによる加工精度の低下などの問題を生じさせる.そのため, 数μmの加工精度を満足させるためには,熱膨張の予測と制御が不可欠となる.
笹原研究室では,ファインボーリングの最適な加工条件設定を行うために,実験計画法と応答曲面法という統計的な手法と, FEM有限要素解析より得られる解析値を用いて,加工条件の変化による加工精度への影響を把握できるシステムを構築することを目的とする. また,この切削シミュレーションからファインボーリング加工時に発生した切削熱の流入状況を解析し, この熱流入割合を用いてFEMによるシリンダボアの熱伝導変形解析を行うことで, ファインボーリング加工後のシリンダボアの形状精度を予測する手法を確立することを目的とする.

現在,航空機産業では燃料費の削減や環境問題の観点から,軽量化・高強度化が求められており, これらの要求を満足させる素材としてチタン合金やCFRP(炭素繊維複合材料)などの需要が高まっている. また,次世代の自動車や産業用機械にも軽量化,高強度・高剛性化,熱寸法安定性, 高い振動減衰性能の理由からCFRPの使用が検討されており,これからの需要は更に高くなると予想されている.
しかし,これらの素材の加工には素材の長所である耐熱性,高強度というものにより加工が困難である. チタン合金の切削加工時,チタン合金の耐熱性から工具と被削材の熱が非常に高くなり工具寿命を短くしている. CFRPの加工では,目的とする形状へ成型するのが望ましいが,締結用のリベット穴の加工や細部のトリム加工をする必要がある. しかし,現在のCFRPの加工にはウォータージェットによる加工やダイヤモンド工具を用いた加工が行われており,非常にコストがかかってしまう. これからのCFRPの汎用化のためには,ウォータージェット加工ではできない三次元の加工をする必要がありマシニングセンタでの切削加工が強く求められている.
本研究では,これらの難削材にたいして工具へ振動を与える, 液体窒素による冷却などを行い最適な加工条件を探求することを目的としている. これらの加工技術により,低コストでの加工が可能となれば一般にCFRP,チタン合金を使用することができ, 環境問題に貢献し新しい乗り物の形を実現することが可能となる.

既存の金属の性質を生かしながら,表面により優れた性質を与える技術に表面改質がある. これにより,表面の摩擦を少なくしたり,内部のしなやかさを残しながら表面に強さを加えたりすることが出来る.
本研究で行っている摩擦攪拌形バニシングとは,先端部が半球状の工具を高速で回転させながら金属表面に擦り付けるというものであり, このとき金属表面に与えられる大きなひずみと摩擦熱により表面改質が行われる. 炭素鋼S45Cにこの加工を施したところ,800HVを超える非常に硬い層が,厚さ200μmにわたって生成されることが明らかになった. この表面改質機構としては,大きなひずみが与えられたことによって金属の結晶粒が微細化されたことや,摩擦熱によって熱変態が起きたことが考えられる.
この手法の大きな特徴は,マシニングセンタを用いた表面改質であるということである. マシニングセンタとは,金属などを切削し,所望の形状に加工する機械であり,表面改質を行うには他の装置を必要とするのが一般的である. 切削加工から表面改質までを一つの機械で行うことができるため,専用の表面改質装置が不要になるほか, 段取り時間の削減や加工工程の短縮が期待でき,非常に効率的であるといえる.
本研究では,加工条件と生成される改質層の特徴との関係を定量的に明らかにし, 摩擦攪拌形バニシングを新たな表面改質技術として確立し,実用化することを目指す.
形成と特性評価
一般にボールエンドミル加工時には,工具切れ刃の削り残しによって 加工面に形成される様々な凹凸模様を考慮する必要がある.一方向送りの走査線加工においては, 工具移動時間を管理し工具切れ刃の位相差を制御,さらに工具偏心量を考慮することで, この削り残しを任意の凹凸模様に制御することが可能であり,これを積極的に利用しようという試みがなされてきた.
加工面にできる凹凸模様の配列を制御できれば,製品に対して装飾性の高い模様の付加や,摺動性,光路補正, 撥水性の向上,流動抵抗の低減などの効果の付加が期待できる.また,平面だけでなく円筒面,球面,自由曲面に任意の凹凸模様を創成することができれば, 多くの製品に適用範囲を拡張することができ非常に有用である.
そこで本研究では,図1の様に加工面全体を多角形パッチで分割し,個々のパッチ内をらせん状の一筆書きの工具経路でクロスフィード分ずつ内側にずらしながら加工する パッチ分割切削法を考案し,円筒面,球面,自由曲面に適用することで曲面加工時の加工面にできる凹凸模様の配列の制御を行う. さらに,凹凸模様を厳密に制御するため,非正三角形パッチの工具切れ刃の位相差制御,コーナー部の加減速の影響, 各パラメータが模様に与える影響などについて検討する.また,凹凸模様を力学的,光学的特性などの観点からを評価し,実用性を検討することを目的とする.

加工戦略
切削加工中に消費されるエネルギの大部分は切削熱に転じ,切りくず,被削材,工具へと流入するので温度上昇が生じ,熱膨張を起こす. 熱膨張は加工後に材料内部に蓄積される残留応力の原因となり,最終的な製品の加工精度に大きく影響する. 近年,先端技術や新素材・複合素材の発達に伴い,切削加工に対する要求は高まる一方で, sub-μm,μmの精度が要求されることが多くなっているため,残留応力の抑制が不可欠となる.
本研究では、加工精度と加工能率を両立できる加工法としてシーケンシャル切削法を提案する. シーケンシャル切削法とは,荒加工の切れ刃が切削を行った直後を仕上げの切れ刃が切削を行う加工法である。 荒加工で発生した熱が被削材の広い領域に熱伝導する前に仕上げ加工を行い,残留応力による加工精度低下を軽減できると予想される. 本研究では解析的にシーケンシャル切削時のワーク温度分布を求め,加工精度を向上させる手法を開発することを目的とする.

LSIの高性能化に伴い,高速伝送が可能なフリップチップ実装を用いたチップオンチップと呼ばれる実装において, ウエハ上の金属バンプと半硬化性樹脂をダイヤモンド切削により一括平坦化する試みがなされている. しかし、LSIに実装されるウエハ上の金属バンプを接着剤で覆い一括して平坦化する際に, ダイヤモンドバイトが激しく磨耗し,チッピングするなどの問題が生じている.
高密度実装を実現するために、本研究では樹脂-金属の複合材料の加工面にはたらく切削力,温度分布などの物理現象, 加工後の表面形状を解析的に検討できるシミュレータを開発することを目的とする。


