トマト萎凋病菌新型レース3では非病原力遺伝子SIX4がトランスポゾンによって破壊されていた
Loss-of-avirulence by transposon-insertion into SIX4 in tomato wilt pathogen Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici
稲見圭悟・森田泰彰*・寺岡 徹有江 力
Inami, K., Morita Y.*, Teraoka T., Arie, T.

Abstract

SIX4は,萎凋病菌レース1に対するトマトの抵抗性遺伝子(I)に対応する非病原力遺伝子であり,従って,レース1菌株のみがSIX4を保持する.2008年,高知県で新型のレース3(KoChi-1)による萎凋病が発生した(森田ら,2010).興味深いことに, KoChi-1はレース1菌株しか持たないはずのSIX4を保持していた.そこでKoChi-1のSIX4を解析した結果,遺伝子の内部に759 bpのhATファミリーに属するトランスポゾンが挿入され,ORFが破壊されていることが明らかになった.トランスポゾンが挿入されていないレース1菌株(MAFF 305121)由来のSIX4をKoChi-1のゲノムに導入したところ,導入株はI遺伝子を保持するトマト品種への非病原力を獲得した.以上は,KoChi-1において,トランスポゾンの挿入がSIX4の機能喪失を引き起こしている事を示している.非病原力遺伝子がトランスポゾンによって破壊されている菌株はF. oxysporumにおいて初の報告である.


*高知農技セ Kochi Pref.


日本植物病理学会平成22年度大会(2010年4月、京都市)ポスター発表  *学生優秀発表賞受賞*