遺伝子破壊によるキャベツ萎黄病菌SIX4の機能解析
○柏 毅稲見圭悟・藤永真史*・小木曽秀紀*・寺岡 徹有江 力
Kashiwa T, Inami K, Fujinaga M, Ogiso H, Teraoka, T., Arie, T.

Abstract

Six4はトマト萎凋病菌Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici(FOL)に感染したトマトの木部抽出液から見出された(Houterman 2007)タンパク質であり,これをコードする遺伝子として,SIX4がクローニングされている(Houterman 2008).FOL レース1においてSIX4を破壊すると,レース1抵抗性トマト品種(I)に感染できるようになったことから,SIX4が非病原力遺伝子として機能していることが明らかにされた(Houterman 2008).Lievensら(2009)は,F. oxysporumの中で,FOL レース1のみがSIX4を保持していると報告していたが,柏ら(2010)は,キャベツ萎黄病菌F. oxysporum f. sp. conglutinans(FOC)もSIX4のホモログを持つこと,さらに,FOC Cong: 1-1株に感染したキャベツ組織内でSIX4ホモログが発現していることを発見,2010年度大会において報告した.本研究では,キャベツ萎黄病菌が持つSIX4ホモログの機能を明らかにすることを目的に,FOC Cong: 1-1株のSIX4ホモログを二回相同組換え法によって破壊した.SIX4ホモログ破壊株は萎黄病抵抗性(YR)キャベツ品種(秋徳SPおよび恋風)が持つ萎黄病抵抗性を打破することなく,逆に,親株であるFOC Cong: 1-1株に比べて,YR品種および感受性品種(四季穫)に対する病原性が低下した.これらのことから,キャベツ萎黄病菌において,SIX4ホモログは非病原力遺伝子でなく,病原力関連遺伝子として機能していることが明らかになった.SIX4ホモログの感染挙動における役割を明らかにすることを目的に,緑色蛍光タンパク質遺伝子を導入したFOC Cong: 1-1株およびSIX4ホモログ破壊株を作出,感染挙動観察に供する準備を完了した.

*長野野花試


日本土壌微生物学会2012年度大会(2012年6月、神戸市)ポスター発表。*最優秀ポスター賞受賞*