Abstract

近年，トマト萎凋病菌Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici（FOL）レース 1から非病原力遺伝子SIX4が同定された（Houterman, 2008）．本遺伝子はFOL レース 1 菌株のみが保持するとされていた（Lievens, 2009）が，我々はキャベツ萎黄病菌 f. sp. conglutinans（FOC）Cong: 1-1 株もゲノム上にSIX4を持つことを発見した．複数のF. oxysporum菌株を用いてSIX4の分布をPCRにより調査したところ，キャベツ萎黄病菌は例外なくSIX4を保持していたが，ダイコン萎黄病菌f. sp. raphani，カブ等萎黄病菌f. sp. rapae，ストック萎凋病菌f. sp. matthioli等他のアブラナ科植物を宿主とする分化型，キャベツから分離された病原性を持たないF. oxysporum菌株はSIX4を持たなかった．rDNA-IGS領域塩基配列に基づいた系統解析の結果，SIX4を保持するFOC菌株はFOL レース1菌株とは異なるクラスターを形成し，SIX4が菌株間を水平伝搬していることが示唆された（図）．また，FOC感染時にキャベツ組織内でSIX4が発現しており，SIX4が病原性と関連することが示唆された．これは，SIX4の存在をFOL レース1菌株以外で明らかにした初の報告である

*長野野花試