研究内容の概要と研究テーマ
Modified March 29, 2011

 人間が病気に罹るのと同じように、植物も病気に罹ります。植物の病気としてよく目にするのは、庭のバラに発生する「うどんこ病」や、冷蔵庫のイチゴに灰色のかびが生える「灰色かび病」などですが、実は病気が農業用植物(穀物、野菜、花卉など)の栽培に与える被害はとても大きなものです。
 例えば、1845年〜46年には、アイルランドなどヨーロッパ各地でジャガイモ疫病が大発生し、当時主食であったジャガイモの収穫が激減、アイルランドでは、当時の人口約800万人のうち100万人が餓死、170万人が移民を余儀なくされ、アイルランド「ジャガイモ飢饉」と呼ばれています。

   現在では、植物の病気のかなりの部分は抵抗性の植物品種や殺菌剤などの利用で防げるようになってきていますが、もし防除対策をとらなかったら、あるいは防除対策が効果を発揮できなければ、収穫量が20%以上も減少すると言われています。現実に、我が国でも天候不順とそれに伴って発生したいもち病によるイネの不作で起こった「平成の米騒動(1993年)」はまだ記憶に新しいところです。

   植物の病気は、植物と病原の相互関係で起こります。病原になるものには、菌類・細菌・ウイルスなどがあります。また、植物の病原のなかには、いわゆる「毒素」を産生するものもいますので、病気に罹った植物を食べることで人間が被害を被る場合もあります。

   私どもの研究室では、農学に共通の「安全な食料を安定に供給する」という大きな目標をふまえ、「安全・安定な植物の病気の防除技術の確立」を目標に、その基礎となる研究を行っています。
 主な対象は、我が国で最重要病害の一つであるイネいもち病(イネ-いもち病菌)および、土壌の中に病原が潜んでいるため防除が困難な土壌病害(トマトなど-フザリウム病菌)で、「病気がなぜ起こるのか」という基本的な疑問について、病原と植物の両側面から、分子生物学的手法を利用して解析を進めています。病原が植物に病気を起こすための戦略、植物が病原の到来を察知して発動する防御戦略を明らかにし、これを利用することで、上手に病原をコントロールして病気の発生を抑えることを目指しています。


教員の研究内容と目的

寺岡 徹    有江 力


2011年度研究テーマ

 博士研究員
●トマト萎凋病菌の病原性関連遺伝子の起源に関する研究【稲見】

 博士課程
Fusarium moniliformeによる病害の発病機構と生物防除に関する研究【加藤】
●ニラ乾腐病菌の寄主特異性分化の解明と遺伝診断技術の開発【山崎】

 修士課程
●マンノース結合型イネレクチン(MRL)の感染時の発現変動と特性変化【青木】
●キャベツ萎黄病の発生生態と防除に関する研究【柏】
●トマト果実に付随する糸状菌相と病原性、マイコトキシン産生能の解析【中田】
●非病原性フザリウムを用いたイネばか苗病生物防除の研究【野中】
●【池田】
●イネいもち病菌の感染挙動の二相性についての検証【岡田】
●バリダマイシンAによるトマト萎凋病発病抑制効果に及ぼす光条件の影響について【金杉】
●超音波を利用したトマト萎凋病発病抑制に関する研究【金丸】
●'パフカル’システムを用いた野菜栽培で発生する障害への対処法の体系化について【高木】
●【西野】
●イネいもち病菌CBP1遺伝子の転写制御因子の探索【原島】

 学部4年生
●【佐藤】
●【千葉】
●【蛭田】
●【本田】
●【山本】

 その他の研究内容
●ガラパゴス諸島固有トマト属植物上の菌類フローラの解析と生物多様性の維持(ガラパゴス国立公園およびチャールズダーウィン研究所との共同研究提案中)
●植物病原菌を用いた未分解多糖類からのバイオエタノール生産の試み



2010年度課程論文タイトル

 博士課程
●マンノース結合型イネレクチン(MRL)導入形質転換体イネの創出と病害抵抗性【新城 亮】
●トマト萎凋病菌の病原性進化とレース特異識別技術に関する研究【稲見圭悟】

 修士課程
●イネ馬鹿苗病用生物防除資材の探索【岩崎昌美】
●トマトの萎凋病菌への感受性・抵抗性決定メカニズムの解析【岡本陽子】
●イチゴ萎黄病の発生生態と防除に関する研究【北澤 雅】
●マンノース結合型イネレクチンのイネ内分布、発現量、存在形式およびマンノース結合型イネレクチン類似遺伝子の発現とレクチン活性【坂本怜子】
●子嚢菌の交配メカニズムの解析【波田野未由来】
●イネいもち病菌付着器形成時発現遺伝子の遺伝子破壊ならびに遺伝子増幅による機能解析【松下 環】
●日本産Magnaporthe griseaの交配不全性の原因解析【村上勇介】

 学部4年生
●イネいもち病菌の感染挙動の二相性についての検証【岡田尚也】
●バリダマイシンAによるトマト萎凋病発病抑制効果に及ぼす光条件の影響について【金杉あすみ】
●超音波を利用したトマト萎凋病発病抑制に関する研究【金丸雄太郎】
●'パフカル’システムを用いた野菜栽培で発生する障害への対処法の体系化について【高木奈由美】
●イネいもち病菌CBP1遺伝子の転写制御因子の探索【原島聡子】


2009年度課程論文タイトル

 博士課程
●病原性喪失変異株の前処理によるキャベツ萎黄病の発病抑制に関する研究【吉田隆延(社会人課程)】

 修士課程
●バリダマイシンAによる萎凋病抵抗性誘導メカニズムの解析【大寺宇織】
●非病原性フザリウム菌による病害抵抗性誘導メカニズムの解析【小川友美】
●イネいもち病菌胞子発芽液の感染特異性誘導能について【角入明日美】
●イネいもち病菌付着器形成時特異的発現遺伝子の発現制御領域と相互作用するタンパク質の探索【楠 慧三】
Fusarium oxysporumのbud cell形成関連機構の解析【金野亜紀】
Fusarium oxysporumの交配不全性の原因解析【椎葉岳彦】
●イネいもち病菌の付着器形成時に発現している遺伝子A5の遺伝子破壊による機能解析【長澤 剛】
●プラントアクチベーターに及ぼす光環境の影響【山口洋平】

 学部4年生
●マンノース結合型イネレクチン(MRL)の感染時の発現変動と特性変化【青木 歩】
●キャベツ萎黄病の発生生態と防除に関する研究【柏  毅】
●トマト果実に付随する糸状菌相と病原性、マイコトキシン産生能の解析【中田勇平】
●栽培様式によるトマトに付随する糸状菌相の差の解析【中村政裕】
●イネ馬鹿苗病菌の水平・垂直伝搬メカニズムの解析【藤原博之】


2008年度課程論文タイトル

 修士課程
●キャベツ萎黄病菌の推定ペルオキシレドキシン遺伝子hyr1について【有本 聖】
●イネいもち病菌胞子発芽液中に分泌されるConcanavalin A結合型糖タンパク質の解析【岡本泰樹】
●生物防除資材Talaromyces sp. KNB-422株とイネ馬鹿苗病菌Gibberella fujikuroiの相互作用の解析【加藤亮宏】
●マンノース結合型イネレクチンのイソ体解析【小泉武士】
●市販トマト果実に付随する糸状菌の検出と分離されたPenicillium spp.のパツリン産生能の調査【日野愛子】
●多様な土壌微生物中のトマト萎凋病菌および萎凋病菌レースの特異識別に関する研究【吉岡千津】
 学部4年生
●イネ馬鹿苗病の生物防除資材の探索【岩崎昌美】
●マンノース結合型イネレクチンの組織局在性【坂本怜子】
●蛍光タンパク質を用いた植物病原性子嚢菌Gibberella fujikuroiの交配の観察【波田野未由来】
●イネいもち病菌付着器形成時発現遺伝子の遺伝子破壊による機能解析【松下 環】
●日本産Magnaporthe oryzaeの交配不全性の原因解析【村上勇介】


2007年度課程論文タイトル

 博士課程
●植物生育促進効果と病害発病抑制効果を併せ持つ植物内生細菌に関する研究【奈良吉主(社会人課程)】
 修士課程
●いもち病感染イネにおけるマンノース結合型イネレクチンの役割とその局在性【荒木佑子】
●トマト属植物Lycopersicon spp.組織および根圏から分離されるFusarium oxysporumの分子系統解析【稲見圭悟】
●交配不全性子嚢菌Fusarium oxysporumの交配不全性解決へのアプローチ【今井峻介】
Gibberella fujikuroiフェロモンレセプターの機能解析【關波直子】
Fusarium oxysporumのアルコール発酵能と病原性に関する研究【本山愛】
●Rice blast fungus behavior in planta in the compatible and incompatible interactions and blast-resistance and associate genes in Afganistan's typical rice varietes【Abdul Khalid Madadi】
 学部4年生
●バリダマイシンA茎葉散布によるトマトへの萎凋病抵抗性誘導メカニズムの解析【大寺宇織】
●非病原性フザリウム菌による病害抵抗性誘導メカニズムの解析【小川友美】
●イネいもち病菌胞子発芽液の感染特異性誘導能について【角入明日美】
●イネいもち病菌付着器形成時特異的発現遺伝子の発現制御領域と相互作用するタンパク質の探索【楠 彗三】
●イネいもち病菌の付着器形成時に発現している遺伝子A5の遺伝子破壊による機能解析【長澤 剛】


2006年度課程論文タイトル

 博士課程
●東京都で確認された園芸作物の初発生糸状菌病害【竹内 純(社会人課程)】
 修士課程
●キャベツ萎黄病菌と病原性欠損株のタンパク質発現パターンの比較解析【岡部明子】
●植物ホルモン等の茎葉散布がトマト萎凋病発病程度に及ぼす影響【菊地麻里】
●【新城 亮】
●トマトにおける抵抗性誘導メカニズムの解析【福島すみれ】
●イネいもち病菌の感染初期過程に発現するMGH61A遺伝子の構造、機能及び発現の解析【三田地貴史】
 学部4年生
●イネいもち病菌胞子発芽液中に分泌されるConA結合型糖タンパク質の解析【岡本泰樹】
●イネばか苗病の種子伝染−発病過程の動態とPenicillium sp.による生物防除機作の解析【加藤亮宏】
●マンノース結合型イネレクチンの分離と精製【小泉武士】
●市販野菜類に付随する菌類の検索とその病原性に関する研究【日野愛子】
●土壌中の植物病原菌の特異的検出に関する研究【吉岡千津】


2005年度課程論文タイトル

 修士課程
●【富樫加奈】
●【筒井隆介】
●【Le Minh Tuong】
 学部4年生
●【荒木佑子】
●【今井峻介】
Fusarium属菌の交配関連遺伝子の探索及び解析【關波直子】
Fusarium oxysporumにおけるピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のクローニング【本山 愛】


2004年度課程論文タイトル

 博士課程
●イネいもち病菌の病原性関連遺伝子の探索と交配型遺伝子の発現解析【金森正樹】
 修士課程
●トマト萎凋病菌レース1の非病原性決定ゲノム領域の解析【中村亘宏】
●GFP導入スイカつる割病菌の種子伝染経路の解析と種子消毒法の検討【西形裕行】
●Screening of methods for controlling Fusarium wilt disease on Banana (Musa acuminata cv. cavendish) with minimum emvironmental impact【Rosmalawati】
 学部4年生
●チリ産トマト属野生種由来の糸状菌の同定およびFusarium oxysporum菌株の系統解析【岡部明子】
●植物病理学分野における次世代モデル植物としてのマイクロトムの可能性【菊地麻里】
NahGトマトを利用したプラントアクチベーターによる萎凋病防除メカニズムの解析【福島すみれ】
●GFP形質導入イネいもち病菌を用いた宿主イネ葉における感染動態の解析【三田地貴史】
●マンノース結合型イネレクチンのイネ植物体における局在性に関する研究【宮川和司】


2003年度課程論文タイトル

 博士課程
●トマト萎凋病菌Fusarium oxysporum f. sp. lycopersiciの病原性関連因子と系統に関する分子生物学的解析【川部眞登】
 修士課程
●イネいもち病菌の付着器形成過程において特異的に発現している遺伝子の探索とB19, B48遺伝子の機能解析および構造精査【石井ふみ】
Gibberella fujikuroiのGタンパク質betaサブユニット遺伝子・MAPキナーゼ破壊株の交配能および病原性【井山真琴】
●イネいもち病菌の感染初期特異的発現遺伝子A5, A12の構造解析および機能解析【栢森美如】
●イネいもち病菌胞子発芽液中に分泌されるConA結合型糖タンパク質の解析【小島伸典】
●マンノース結合型イネレクチンMRL4.85過剰発現型形質転換イネの作出【嶋崎 稔】
 学部4年生
●チリ産トマト属野生種および栽培種由来の糸状菌の同定とFusarium属菌の系統解析【石川暢子】
●DNAゲノムプローブとミクロサテライトマーカーによるイネいもち病菌レース判別と病原性関連遺伝子との相関【伊東 悟】
●非病原性フザリウムを接種したアブラナ科植物による土壌金属類の取り込みに関する研究【筒井隆介】
●蛍光タンパク質を利用したFusarium oxysporum菌糸融合の観察【富樫加奈】


2002年度課程論文タイトル

 博士課程
●イネいもち病菌の付着器形成に関与する遺伝子群の分子生物学的解析【齋藤憲一郎】
 修士課程
●変異株を利用したFusarium oxysporum病原性関連因子の遺伝子レベルでの解析【水谷浩平】
●土壌病害研究におけるモデル植物利用の可能性と緑色蛍光タンパク質GFPを用いたFusarium oxysporum
の植物組織内動態の観察【宮田雄一郎】
 学部4年生
●イネいもち病菌の交配可能株の探索と病原性分化、遺伝子マーカーの遺伝解析【新垣喬士】
●バリダマイシンAのフザリウム病に対する抵抗性誘導機構の解析と利用【大蔭礼子】
●中国・雲南産、ベトナム産イネいもち病菌の病原性分化(レース検定)とレース判別DNAプローブの解析【新城 亮】
●トマト萎凋病菌レース1の非病原性遺伝子の探索【中村亘宏】
●イネいもち病菌の感染初期に特異的発現の認められる遺伝子群の探索と解析【山下 毅】


2001年度課程論文タイトル

 修士論文
●イネいもち病菌交配型遺伝子のクローニングと交配可能株・交配不全株の比較【加藤ハナ】
Magnaporthe grisea
の付着器形成に関与するA26遺伝子の機能解析【金森正樹】
●マンノース結合型イネレクチンの単離とその構造解析【櫻井裕士】
●バリダマイシンAおよびバリドキシルアミンAの茎葉散布による土壌伝染性フザリウム病発病抑制効果【白水健太郎】
 卒業論文
Gibberella fujikuroiGタンパク質βサブユニット、MAPキナーゼ遺伝子破壊株の交配および病原性【井山真琴】
●イネいもち病菌胞子発芽液中に分泌されるConA結合型糖タンパク質の解析【小島伸典】
●アジア地域のイネいもち病菌野生株の病原性と交配型検定について【佐竹佳織】
●マンノース結合型イネレクチンの過剰発現型イネ形質転換体の作出【嶋崎 稔】


2000年度課程論文タイトル

 博士論文(課程)
●ライグラスモットルウイルス(RGMoV)の遺伝子構造と機能解析【張 飛雲】
 修士論文
●マンノース結合型イネレクチンの分子遺伝学的研究【新井彩水】
●TMV複製複合体の局在性の解析【荻野智和】
 卒業論文
●イネいもち病菌胞子の分泌性ConA結合型糖タンパク質の解析とその感染助長作用について【齋藤あずみ】
●変異株を利用したFusarium oxysporum
病原性関連因子の遺伝子レベルでの解析【水谷浩平】