萎黄病生物防除活性を持つ非病原性フザリウムREMI10株の キャベツ組織内での挙動
Behavior of a Pathogenicity Deficient Mutant REMI10 derived from Fusarium oxysporum f. sp. conglutinans in Cabbage Root
宮田雄一郎・吉田隆延*・川部眞登・寺岡 徹・有江 力
Miyata, Y., Yoshida, T., Kawabe, M., Teraoka, T. and Arie, T.

Abstract

【目的】重要土壌病原菌Fusarium oxysporumが引き起こす萎凋性病害に対して,非病原性株の前接種による生物防除の有効性が複数報告されており,すでに生物農薬として実用化されてもいる.非病原性株による生物防除の作用機構は,植物への病害抵抗性誘導であると考えられているが,必ずしも明確な根拠は示されていない.本研究では,作用機構に関する基礎的知見を得るため,緑色蛍光タンパク質(EGFP)を病原性および非病原性株にそれぞれ導入し,植物組織内での挙動を可視化した.
【方法】キャベツ萎黄病菌Fusarium oxysporum f. sp. conglutinans Cong:1-1株および非病原性REMI10株を供試した.REMI10株はREMI法による形質転換でCong:1-1株より誘導された病原性欠損変異株であり,ゲノムのアスパラギン酸プロテイナーゼ遺伝子fap1内部にベクターpCSN43が挿入されていることが判明している(日本農薬学会第24回大会).両株を,EGFP発現カセットを持つ形質転換用ベクターpHYG-EGFPおよびpNEO-EGFPでそれぞれ形質転換した.
【結果】 1.Cong:1-1株およびREMI10株よりEGFP導入株(それぞれ,EGFP-Cong:1-1株,EGFP-REMI10株とする)を取得した.両株とも,菌糸,小型分生子,厚膜胞子が蛍光顕微鏡の488 nm励起光下で緑色蛍光を発した.
2.素寒天上で催芽したキャベツ根部にEGFP-Cong:1-1株を接種し,蛍光顕微鏡下で経時的に観察すると,根表皮から侵入して,皮層の細胞間隙に沿って菌糸を伸長し,早いものでは接種3日目に内皮の内側の維管束道管部へ到達した.これに対して,GFP-REMI10株は根表皮への侵入が遅れるとともに,侵入した菌糸は接種2週間後でも内皮より内側への進展は認められなかった.
3.REMI10株をキャベツ「品種,四季穫」根部に予め灌注処理しておくと,3〜7日後に接種したCong:1-1株による萎黄病の発病が抑制され,生物防除効果が確認された.
4.REMI10株を予めキャベツ根部に処理し,処理後3〜7日目にEGFP-Cong:1-1株を接種した.接種2週間後でも,EGFP-Cong:1-1株はほとんど皮層に侵入していなかった.
*東北農研センター Natl. Agric. Res. Ctr. Tohoku


第26回日本農薬学会大会(2003年3月、名古屋市)口頭発表