材料系物理工学 第5回 2003.11.06(月曜振り替え)

物理システム工学科4年次、月曜2限(プレハブ第2講義室)第5回弱い磁性も使いよう

佐藤勝昭教員(4号館514号室、内線7120e-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp

[月曜振替日:11/311/6()10/10(学園祭片付け休講)11/2411/26()]

 

復習コーナー(第4回の問題)
磁性体において初磁化状態で磁化が0である理由と、磁場により飽和する理由を述べよ。

初磁化状態で磁化がないのは、静磁エネルギーを下げるため全体がさまざまな方向の磁化をもつ磁区に分かれ、全体の磁化が打ち消されているからである。(正解者:二村、山根、湯舟、堀越、石田、藤井宏、藤原、小山、山本)

磁界を印加すると、磁壁移動が起きて、磁界と平行な磁化をもつ磁区が広がる。ある程度磁壁移動が進むと、磁化回転が起きて、全体が単磁区になり、これ以上磁化は増大しない。これが飽和である。(正解者:二村、湯舟、石田、藤原、小山、山本)

まちがった回答・不十分な回答

初磁化状態で磁化が0である理由

磁化と逆向きの反磁界が生じているため(A,O,N,T):反磁界による静磁エネルギーを下げるために磁区に分かれていると書いて欲しかった

試料内部の反磁界が打ち消し合っている(Y4):磁区に分かれてという説明が必要

飽和する理由

N極からS極に向かって磁力線を生じるから(S):これは磁区が生じる理由

反磁界で打ち消しあって飽和する(Y1)

反磁界が消え安定する(A):反磁界は消えないが外部磁界がこれに打ち勝つため磁区に分かれない

物事にはなんでも限界があるから(Y2):間違いではないが非科学的

磁性体が有限の粒子でできているから(Y3)

 

本日の学習

弱い磁性

常磁性

ランジェバンの常磁性

パウリの常磁性

バンブレックの常磁性

反磁性

ランダウの反磁性

 

常磁性の説明

常磁性というのは英語のparamagnetismの和訳*である。

ランジェバンの常磁性
磁界を加えないと、原子磁気モーメントはバラバラな向きを向いているが、磁界を加えると、磁気モーメントの向きが磁界に平行(parallel)になろうとして回転し、全体として正味の磁化を生じる現象である。

パウリの常磁性
スピン常磁性は、非磁性金属においてスピンのバンドとスピンバンドが分裂することによって生じる磁性で、フェルミ縮退のある系では磁化率の温度変化がほとんどないような常磁性を示す。

ランジェバンの常磁性

パウリのスピン常磁性の説明図

液体酸素の常磁性

常磁性の応用

常磁性共鳴
ESR(電子スピン共鳴)
 メーザー(マイクロ波のレーザー)
NMR(核スピン共鳴)

断熱消磁による冷却

固体レーザ(常磁性イオンの光学現象)

 

磁気共鳴

スピン共鳴

1945年BlochのグループがNMRの理論と実験に成功(Stanford大)

1945年Purcellがスピン共鳴緩和の古典論を、Bloembergenがスピン緩和の量子論を確立(Harvard大)

1945年Zavoisky()が電子常磁性共鳴を発見

スピン共鳴の分類

ESRNMR

 

Larmor回転

dM/dt=g[M´H0]

H0//z とすると
 
 d2Mx/dt2=-g2H02Mx, d2My/dt2=-g2H02My

     固有振動数
w=|g|H0

電子スピンの場合

ge=( 電子磁気モーメント)/( 電子のスピン角運動量)=-geemBS/hS=-gee/2mc

 ゼーマン分裂

 

結晶のESR

ESR測定装置

遷移金属イオンの3d系の結晶場分裂

d軌道と結晶場分裂

8面体配位と4面体配位の比較

1電子準位と多電子準位

8面体配位 high spin: dn系を例に

ルビー(Al2O3)の結晶場遷移

多電子状態の基底状態のZeeman分裂とESR

クラマース2重項 と非クラマース2重項

微量遷移金属イオンの検出

ドナー・アクセプタのESR

単結晶のESRPL

超微細相互作用

超微細相互作用を用いた置換サイトの同定

超微細構造による真性欠陥の同定

ESRによる真性欠陥準位の同定

光誘起ESR信号の励起スペクトル

 

断熱消磁

低温で等温状態で強い磁界をかけてスピンを整列させると、P1P2のようにエントロピーが低下する。(このとき発生する磁化熱は液体ヘリウムなどで除去。)次に断熱的に磁化を取り除くと温度が低下(PP3)する。

 

反磁性と反強磁性とはどう違うのですか。

反磁性は、非磁性物質において、磁界によって電子軌道の螺旋運動が生じて、Landau準位に量子化されることによって磁界と逆向きの磁化が生じる効果である。

日本語では紛らわしいのですが英語では反磁性はdiamagnetism、反強磁性はantiferromagnetismでまったく違った現象である。

反磁性の応用

積算電力計:アルミ板の反磁性を利用

強磁場による磁気浮上:壁に触れずに融解などができる

 

問題

反磁性体は磁界の変化を妨げるように逆向きの磁化を生じる。それではなぜ強い静磁界のもとで反磁性体を浮かせることができるのか