量子物性工学2001年前期期末テスト2000.7.13

問題1 自由電子の電子分極による誘電率を次のような古典力学手続きに従って理論的に求めよう。(30)

質量m,電荷-eをもつ電子(単位体積あたりN個)が電場Eを受けて1次元的に集団運動する系を考える。電界Eを加えると電子は平衡位置からuだけずれ、動かない原子核の正電荷との間に、電気双極子モーメント-euが生じる。電子分極P, P=-Neuで表される。電場中の電子が受ける力は-eEで表される。次の問に答えよ。

(1)      摩擦力を考慮してこの系の運動方程式をたてよ。ただし、摩擦力はに比例するとし、比例係数をとせよ。ここにmは電子質量、はダンピングの時定数である。(5)

(2)      角振動数wの周期的な電界Eが加わったときの電荷の相対変位umweEの関数として表せ。ただし、電界EE=E0exp(iw t)と表せるものとし、変位uについてもu=u0exp(iw t) と表せるものとせよ。(5)

(3)      この粒子の運動によって生じた分極PmweEの関数として表せ。(5)

(4)      P=e0c Eを用いて、電気感受率cを計算し、er=1+cを用いて比誘電率erの分散式を書け。(5)

(5)      比誘電率の実数部e'rと虚数部e"rを図示せよ。(5)

(6)      e'rが0を横切る角周波数をプラズマ角周波数といい、wpで表す。が無限大(ダンピングがない)場合についてwpN, e, e0によって表せ。(5),

 

問題2 誘電率について次の問に答えよ。(20点)

(1)     金属では誘電率が負になることがある。負の誘電率というのは物理的にどう解釈すればよいか (5)

(2)     誘電率が負の実数値をとるとすると、光強度の反射率は何%になるか。その根拠も示せ (5)

(3)     シリコンの直流(周波数0)での比誘電率erは約11.9、屈折率nは約3.45であり、ぴったりer =n2である。これに対してNaClの直流での比誘電率er5.9、可視光線における屈折率nは約1.55であってer =n2の関係が成り立たないのはなぜか (5)

(4)     比誘電率の虚数部e"rはどのような働きをするか (5)

 

問題3 平坦な物体の面による光の反射について次の質問に答えよ。(20点)

(1)        屈折率n、消光係数κをもつ物質の面に垂直に光が入射した場合の(光強度についての)反射の公式を書け。ただし、空気の屈折率を1とせよ。 (5)

(2)        ガラスの屈折率を1.5、消光係数κ=0として、垂直入射の場合の反射率を求めよ。(3点)

(3)        ガラスに斜め入射した場合の反射光は偏光している。ある入射角ではp偏光が消滅しs偏光のみとなる。p偏光、s偏光とはどのような偏光かを入射面との関係で説明せよ。(5)

(4)        反射光がs偏光のみとなる入射角のことを何と呼ぶか。(2)

(5)        ガラスの屈折率を1.5としたとき反射光がs偏光のみとなる入射角を求めよ(5点)

 

問題4 結晶中の電子はエネルギー帯(バンド)を形成する。バンドについて答えよ。(30点)

(1)      電子のエネルギーは横軸を波数kに対して示される。kを横軸にとる意味を述べよ。(5)

(2)      波数kをもつ電子の運動量はいくらか(2)

(3)      バンドの底付近では、電子のエネルギーはで表される。このm*は何と呼ぶか。(5)

(4)      シリコンの伝導電子のm*は自由電子の質量m0よりも小さくなっている。その理由を考えよ。(5)

(5)      バンドの底付近の電子エネルギーがで表されるとき、状態密度曲線N(E)は、どのような関数で表されるか。(5)

 

問題5 物質の電気伝導率の導出について次の質問に答えよ(20点)

(1)       物質に電場Eが加わったときに電子の速度がvとなったとする。電子密度がNであるとして、電流密度Jvを使って表せ。ただし電子の電荷をeとする。(5)

(2)       物質の移動度をμとすると、vはμとEによってどう書けるか。(5)

(3)       電流密度Jと電場Eの関係を電気伝導率σを使って表すとJ=σEとなる。σをμやNを使って記述せよ。(5)

(4)       金属と半導体の電気伝導率の温度変化の違いを(3)で導いた式によって説明せよ。(5)

 

問題6 量子物性工学で印象に残った講義内容、教官の雑談、試験勉強をしての感想などを書いてください。


量子物性工学標準解答

問題1

30

(1) 自由電子の運動方程式

(教科書を丸写しして-eを使わずqを使った場合は減点。)

(2) umweEの関数として表した式

(3) 分極Pm,w,e,Eの関数として表した式

(4) 比誘電率erの分散式

(5) 比誘電率の実数部e'rと虚数部e"rを図示

(省略:教科書の図4.6)

 

(6) ダンピングがない場合のwp (注:wp2ではない)

問題2

20

(1) 負の誘電率の物理的解釈

 であるから、eが負なら電場Eと逆方向の電束Dが生じ、電場を遮蔽してしまう様を表している。

(2) 誘電率が負の実数値のときの光強度の反射率、そう考える理由

 反射率は100%である。

理由は、(a>0)とすると、振幅反射率はとなる。

従って光強度の反射率は、となる。

(3) NaClの直流での比誘電率erと屈折率nの間にer =n2の関係が成り立たない理由

 NaClはイオン結晶なので直流での誘電率には、イオン分極による誘電率と、電子分極による誘電率とが重畳している。しかし、光の周波数においては、電子分極の部分だけが寄与するので、直流の比誘電率と屈折率の間にはer =n2の関係が成立しない。

(4)       比誘電率の虚数部e"rの働き

 一般に、誘電率の虚数部はエネルギーの損失が起きることを意味する。光の周波数においては光吸収の程度を表す。

問題3

(20)

(1) 反射の公式

(2) ガラスの垂直入射の反射率

従って4%

 

(3) p偏光、s偏光とはどのような偏光か

p偏光:電界の振動方向が入射面内にある直線偏光

s偏光:電界の振動方向が入射面に垂直な直線偏光

 

(4)反射光がs偏光のみとなる入射角の呼び名

ブリュースター角

(5)       ガラスの反射光がs偏光のみとなる入射角

56°

問題4

30

(1)    kを横軸にとる意味

 固体中の電子状態は、ブロッホ関数という波動関数で表される。kはブロッホ関数の状態を表すよいラベル(量子数)となっている。

(2)    波数kをもつ電子の運動量

(3)m*の呼び名:有効質量

(4)シリコンのm*m0よりも小さいわけ

 伝導帯の底や価電子帯の頂では、電子波と周期ポテンシャルとの相互作用によってE(k)の分散曲線のk空間での曲率が自由電子の場合より大きくなっている。有効質量はE(k)曲線の曲率の逆数に比例するので自由電子より小さくなる。

(5) 状態密度曲線N(E)の関数形

に比例する。

問題5

20

(1) 電流密度Jvを使って表せ

(2)vをμとEで表せ

(3)       σをμやNを使って記述

(4)       金属と半導体のσの温度変化の違い

μの温度変化は金属・半導体ともあまり違わず高温で減少するが、キャリア数Nについては、金属ではほぼ一定なのに対し、半導体では指数関数的に大きく変化し温度上昇とともに増加するので、σは金属では高温で減少するのに対し半導体では増大する。