量子物性工学 佐藤勝昭教授(量子機能工学研究室)

金曜日1限 13番講義室 テキスト「機能性材料のための量子工学」

E-mail: satokats@cc.tuat.ac.jp URL: http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/

 

1.        この講義で学ぶこと

現代はIT(information technology)の時代だといわれる。その中核をなすのが半導体電子デバイスや半導体光デバイスであるが、半導体の電子状態は量子力学に基づいて構築されたエネルギーバンドの考え方で理解される。さらに高性能のデバイスをめざして、人工的に電子を閉じ込める微細構造が作られている。また、高密度磁気記録、光磁気(MO)記録、磁気RAMなどにおいて、さらなるに高密度を目指すためには磁気現象を量子力学に基づいてきちんと理解している必要がある。スピントンネルデバイスなどスピンエレクトロニクスの実用化を目指した研究も進められている。この講義では、物質の物性の理解と次世代エレクトロニクスの発展に量子力学の考え方がいかに有用であるかを学ぶ。

2.        構成:章・節・項目

第1章      見渡せば量子の世界

この章では、身近なところで実際に使われている量子力学について学びます。具体的には、超伝導・レーザのように量子効果が巨視的に現れている物理現象や、電子や粒子の波動性を使った顕微鏡、電子のトンネル効果を用いたSTMという顕微鏡、量子井戸を用いた半導体レーザ、スピントンネル効果を用いた次世代のメモリMRAMなどについてご紹介します。

第2章      ワンポイント量子力学

量子力学の理解度テストの結果を踏まえながら、量子力学の最も大切な部分(歌でいえばサビのところ)をもう一度学びます。1年の「量子力学入門」のリバイバルです。特に、不確定性原理、存在確率、波動関数、球面調和関数、角運動量、スピンなどの概念をもう一度確認します。

第3章      半導体エレクトロニクスと量子力学

エネルギーバンドの考え方、周期ポテンシャル、逆格子、波数ベクトル、k空間などの考えがなぜ必要なのかを実例に基づいて話します。また、電子の波の干渉などの考えでバンドを説明します。

第4章      光エレクトロニクスと量子力学

光の吸収と発光という現象において、選択則が波動関数の対称性で決まることや、半導体レーザ、CCDカメラなど光エレクトロニクスに量子力学がいかに重要な役割を持つかを解説します。

第5章      磁気エレクトロニクスと量子力学

磁気記録、光磁気記録に用いられる磁性体の磁気は電子スピンが起源です。光磁気現象にはスピン軌道相互作用が関係しています。磁性は量子力学のデパートです。

第6章      21世紀をひらくスピンエレクトロニクス

スピン注入とスピン輸送など次世代エレクトロニクスの基礎となるスピンエレクトロニクスに触れます。

第7章      ナノテクノロジーと量子力学

微細加工技術が進み、半導体を電子のドブロイ波長と同程度に加工できるようになりました。この結果量子サイズ効果が起きます。どんな現象が現れるのでしょうか。

3.        前提:

前提とする科目:量子力学I, II

前提とする事項:シュレーディンガー方程式、粒子性・波動性、摂動論

数学的能力:複素数、微分方程式、球座標、球面調和関数

4.        発展:

つながる科目:量子素子工学、量子材料工学、光工学、レーザ光学、低温量子工学、超伝導工学

つながる事項:量子デバイス、超伝導、熱統計

応用:電子デバイス、量子井戸レーザ、巨大磁気抵抗素子

5.        実験・演習との関係

演習:量子力学演習

6.        教科書、参考書

教科書:佐藤勝昭他著:機能材料のための量子工学(講談社サイエンティフィク)

参考書:佐藤勝昭編著:応用物性(オーム社)